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50.エマ視点
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まだ、叔父様と母様は何かと話をしていたので、わたしとノエルは先に屋敷の中へと入る。
入り口で、またノエルはつまずきこけた。
「大丈夫、ノエル?」
「はじめて場所はどうしても段差を見落とすのよね・・・」
おっちょこちょいのノエルに手を差し伸べ、立ち上がらせる。強がっているのか、その手は僅かに震えていた。
「ありがとう、エマ」
「あら、大丈夫だった?」
アーサーの兄様の奥さんーリミア様がやってきた。
五歳と三歳の子供がいるとは思えないほど幼く見える。
「お久しぶりです。お義姉様」
「いらっしゃい。叔母さまがまたしでかしたみたいね」
「お騒がせしてすみません」
「いつものことよ。で、そちらは?紹介してくれるわよね?」
リミア様は気さくな方なので、わたしは好きだ。
「親友のノエルです。ノエル、こちはらアーサーのお兄様の奥方であるリミア様よ」
「ミリアよ」
「トルスター国の留学生のノエル・エルトニーです」
「あなたが、アルバート叔父様が推薦した方ね」
お姉様は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに微笑む。
「アーサーはどうなの?」
「寝てるわね。見に行く?」
「構いませんか?」
おずおずと聞くノエルにお姉様はにっこりと笑った。
「約束を守ってくれるなら」
「約束ですか?」
「部屋に入るときはマスクをすること。部屋からでたら、手洗いうがいをして服を消毒すること。一応、別館にいるけど、子供とお年寄りがいるからそれだけは注意してほしいの」
そういえば、甥っ子の姿が見えない。
いつもなら、いやでも近づいてくるのに・・・。
「お義姉様、チビたちは?」
「別館で待機中よ。いつもだったらアーサーによく絡んでるから、風邪が移るリスクが高かったんだけど、今回の冬休みはアルバート様が帰ってきたものだから、難しい話は嫌だと別館に逃げてたのよ。それが幸いして、濃厚接触にならなかったのよね。今は別館でお義母様とお祖母様から楽しくマナー講座を教わっているわ」
わたしでも理解し難い話は幼い子供も聞きたくなかっのだろう。叔父様を敬遠するチビたちはよく一緒に行動しているアーサーに近寄れなくて、別館にいるお祖母様のところに逃げ込んだのだろう。
アーサーの風邪で戻ることかなわず、この際だからとそのまま叔母さまも巻き込んでのマナーを叩き込まれているにちがいない。チビたちの泣き顔が思い浮かんだ。
「楽しそーですね」
「そうね。今頃泣いてるかしら?」
ふふふっと声を立てて笑った。
「さあ、この部屋にアーサーがいるわ」
扉を開けると、奥に寝台が見えた。
ふらりと行ことするノエルに、お姉さまが三角の布を差し出してくる。
「はい。マスク。しっかり、鼻と口元を隠してね」
「ありがとうございます」
ノエルは布を受け取ると鼻と口元を隠して部屋に入った。
瞬間また転けかける。
「ノエル!?」
「大丈夫」
こちらも見ずにアーサーの元に一直線に行った。
「あらあら。よほど心配なのね」
「あのノエルが・・・」
「このままはダメよね?」
「何がです?」
「婚約も何もしていない女の子を看病させるのは・・・。しかも、他国から預かっているのに・・・」
そういえば・・・、そうだった。
「トルスター国って、ちょっと問題もあるしね」
「問題、ですか?」
「国民の認識は低いのだけど、男尊女卑気味だったりするのよね。昔ながらの太陽信仰からか金髪碧眼の見た目を重視したりとかね」
「じゃぁ、こんな行動も・・・」
「知られたら厄介かもしれないわ・・・」
ノエルの銀色の髪を見た。
おどおどしているのは自分に肯定感が低いところがあるからと思っていたが、そういう理由もあったのか・・・。
「うちうちのことだから大丈夫だとは思うけど、念の為に箝口令は敷いておきましょう。あと、誰かは付き添うようにはしておくわ」
「ご迷惑をかけます」
お義姉様の配慮に感謝しかない。
こういう気遣いはきっと叔父様ではできないだろう。
だからこそ母様はロマニズ家のことになると真面目になってしまう叔父様を止めるために出張ってきたのだろうけど。
「それと、あの子を見ててちょっと気になることがあるのよね。エマ、あっちで話しましょう」
「?」
ノエルのことで?
真剣な顔のお姉様を見て、わたしは頷いた。
入り口で、またノエルはつまずきこけた。
「大丈夫、ノエル?」
「はじめて場所はどうしても段差を見落とすのよね・・・」
おっちょこちょいのノエルに手を差し伸べ、立ち上がらせる。強がっているのか、その手は僅かに震えていた。
「ありがとう、エマ」
「あら、大丈夫だった?」
アーサーの兄様の奥さんーリミア様がやってきた。
五歳と三歳の子供がいるとは思えないほど幼く見える。
「お久しぶりです。お義姉様」
「いらっしゃい。叔母さまがまたしでかしたみたいね」
「お騒がせしてすみません」
「いつものことよ。で、そちらは?紹介してくれるわよね?」
リミア様は気さくな方なので、わたしは好きだ。
「親友のノエルです。ノエル、こちはらアーサーのお兄様の奥方であるリミア様よ」
「ミリアよ」
「トルスター国の留学生のノエル・エルトニーです」
「あなたが、アルバート叔父様が推薦した方ね」
お姉様は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに微笑む。
「アーサーはどうなの?」
「寝てるわね。見に行く?」
「構いませんか?」
おずおずと聞くノエルにお姉様はにっこりと笑った。
「約束を守ってくれるなら」
「約束ですか?」
「部屋に入るときはマスクをすること。部屋からでたら、手洗いうがいをして服を消毒すること。一応、別館にいるけど、子供とお年寄りがいるからそれだけは注意してほしいの」
そういえば、甥っ子の姿が見えない。
いつもなら、いやでも近づいてくるのに・・・。
「お義姉様、チビたちは?」
「別館で待機中よ。いつもだったらアーサーによく絡んでるから、風邪が移るリスクが高かったんだけど、今回の冬休みはアルバート様が帰ってきたものだから、難しい話は嫌だと別館に逃げてたのよ。それが幸いして、濃厚接触にならなかったのよね。今は別館でお義母様とお祖母様から楽しくマナー講座を教わっているわ」
わたしでも理解し難い話は幼い子供も聞きたくなかっのだろう。叔父様を敬遠するチビたちはよく一緒に行動しているアーサーに近寄れなくて、別館にいるお祖母様のところに逃げ込んだのだろう。
アーサーの風邪で戻ることかなわず、この際だからとそのまま叔母さまも巻き込んでのマナーを叩き込まれているにちがいない。チビたちの泣き顔が思い浮かんだ。
「楽しそーですね」
「そうね。今頃泣いてるかしら?」
ふふふっと声を立てて笑った。
「さあ、この部屋にアーサーがいるわ」
扉を開けると、奥に寝台が見えた。
ふらりと行ことするノエルに、お姉さまが三角の布を差し出してくる。
「はい。マスク。しっかり、鼻と口元を隠してね」
「ありがとうございます」
ノエルは布を受け取ると鼻と口元を隠して部屋に入った。
瞬間また転けかける。
「ノエル!?」
「大丈夫」
こちらも見ずにアーサーの元に一直線に行った。
「あらあら。よほど心配なのね」
「あのノエルが・・・」
「このままはダメよね?」
「何がです?」
「婚約も何もしていない女の子を看病させるのは・・・。しかも、他国から預かっているのに・・・」
そういえば・・・、そうだった。
「トルスター国って、ちょっと問題もあるしね」
「問題、ですか?」
「国民の認識は低いのだけど、男尊女卑気味だったりするのよね。昔ながらの太陽信仰からか金髪碧眼の見た目を重視したりとかね」
「じゃぁ、こんな行動も・・・」
「知られたら厄介かもしれないわ・・・」
ノエルの銀色の髪を見た。
おどおどしているのは自分に肯定感が低いところがあるからと思っていたが、そういう理由もあったのか・・・。
「うちうちのことだから大丈夫だとは思うけど、念の為に箝口令は敷いておきましょう。あと、誰かは付き添うようにはしておくわ」
「ご迷惑をかけます」
お義姉様の配慮に感謝しかない。
こういう気遣いはきっと叔父様ではできないだろう。
だからこそ母様はロマニズ家のことになると真面目になってしまう叔父様を止めるために出張ってきたのだろうけど。
「それと、あの子を見ててちょっと気になることがあるのよね。エマ、あっちで話しましょう」
「?」
ノエルのことで?
真剣な顔のお姉様を見て、わたしは頷いた。
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