【完結】ありのままのわたしを愛して

65.アーサー視点

　ノエルの顔は引き攣っていた。

　ノエルに近づけてはいけない。本能的思い、彼女の前に立つ。

「失礼だが、ノエル嬢の知り合いか？」
「誰だお前は？邪魔するな。僕はノエルに用があるんだ」

　いけすかない。ノエルに近づけなくない。

「ノエル嬢。彼は君の知り合いかい？」
「･･･元、婚約者です」

　彼女を見ればそう答えた。彼女の、元婚約者？元が今更何のようだ。
　しかし、ノエルが怯えている。この感じからだとあまりよくない。

　一歩、ノエルに近づいた。
　いつもの君がいいー。

「彼女は君とは話がないみたいだな」
「勝手なことを言う」

　彼の表情に苛立ちが見える。無作法にも手を伸ばしてくるのが見えてた瞬間、ノエルが僕の服の裾を掴んできた。
　護りたい。

「彼女が怖がっているのがわからないのか？」
「ノ･･･エル？」

　彼はノエルの反応を不思議がる。
　わからなかいのか？
　昔の自分みたいだ。

　しかし･･･、周りがこちらを見ているのに気づく。これ以上は流石に･･･しかたない･･･。

「流石にここではなんだな。近くに知り合いの店がある。そこで話を聞こう」
「アーサー様･･･？」
「人が集まり出した」

　二人とも周りがざわつき出したのに気づいき、僕の言葉に従った。

　行くのはエマの母、叔母の経営しているカフェ。エマが昨日言っていたはずだから話はいっている。
　不思議そうに見てくるノエルに言った。

「エマの母親･･･叔母さんが運営している店の一つだよ」

　そう言入り口を入ると店員が明るい声で挨拶してくる。叔母さんお気に入りの店員だ。

「いらっしゃいませ～。あら、アーサー様。だいぶご無沙汰してますぅ。お嬢様から連絡いただいてますよぉ」

　いつもここにはエマに引きずられてくるからか、ウザ絡みしてくる。
　だが、今はそれどころじゃない。

「悪い、今はお前の茶化しには対応する暇はない。それより2階の部屋は空いてるか？」
「2階、ですか･･･？今は空いておりますが･･･」

　もとより、空室なのはわかっている。でも、わざわざ言ったことで、状況をさ察してくれただろう。

「はぁい。ご案内いたします」

　彼女は2階の部屋を案内してくれた。

「ご注文はいかがしましょうか？」

　僕はノエルに聞く。
　ぜひとも、この店の名物を食べてもらいたいと思っていたが･･･。

「ノエル嬢は何がいい？」
「えっと･･･」
「ホットティーだろ」

　ノエルの解答の前に男が答える？
　何言ってるんだ！？
　僕はノエルに聞いたんだ。

「僕はノエル嬢に聞いているんだが？」

　イラっとする。
　そんな僕に遠慮がちに答えが返ってきた。

「･･･ホットミルクティー、をお願いします」

　だよね。
　集中したい時は確かにホットティーだが、一息つきたい時や癒しが欲しい時はミルク入りにするよね。

「僕はコーヒーを。あと、この季節はアップルパイがあったよな」　
「はい。当店のおすすめです」
「ノエル嬢。お腹の空きはありそうかい？」
「あ、･･･ごめんなさい」

　仕方ないよ。ノエルの表情は暗い。こんな状況で味わう物じゃないのだろう。では、後でエマと食べよう。

「じゃぁ、土産に3個･･･いやもう一人分お願いするよ。エマからも頼まれていたんだ。ここのアップルパイは絶品だから、ぜひノエル嬢にも食べてもらいたい。早めに用意をして頼む 」

　これでわかるだろう。

「かしこまりました。そちらの方はいかがしましょうか？」
「ホットティーとそのアップルパイを･･･」

　男は眉を寄せ、僕を睨んでいた。店員がいなくなると噛み付くように僕に吠える。

「何者だ！ノエルのなんだ！」
「僕はロマニズ公爵家の次男、アーサー。君こそ名乗ってくれるか？」

　僕の身分を聞いて顔を引き攣らせた。身分を使いたくはないが、この男には有効か？

「ぼ･･･わたしはトルスター国、マルス・ダーリス伯爵子息、ですっ」

　伯爵か。しかし、なぜノエルに固執している？
ノエルが嫌がっているのがわからないのか？

「ふ～ん。で、ノエル嬢に何の用があるわけ？元婚約者であって、もう関わり合いはない」
「あなたには関係ありません。ぼ･･･わたしとノエルの問題です」
「関係ない･･･か。確かにそうだな。だが、彼女とは同じ先生を支持しているから、兄弟子としては無関係ではない。しかも彼女の大の親友は僕の従妹。従妹にノエル嬢のことを任されている以上、彼女の問題は僕の問題になる」

　関係ないと言われてイライラした。
　どうどうと関係があると言いたいのを我慢して、回りくどい言い回しをしてしまう。　
　第一、婚約者だったのは以前の話であり今は全く関係ないのはこの男の方だろう。
　僕は、目の前の男を睨みつけた。