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66.アーサー視点
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「マルス様、私に御用は何でしょうか?」
ノエルの凛とした声に驚く。先ほどまでのおどおどした姿ではなく、顔をあげ彼を見ていた。
「迎えにきたんだ」
意外な晴れやかな答えに頭が追いつかない。
この男、自分が何を言っているのかわかっているのか?婚約は解消しているのだろう?
「なにを仰っていますか?私は留学のために帝国に来ています。トルスター国に帰るのはまだ先の話ですし、ましてや、あなた様に迎えに来てもらう通りもありません」
「留学をやめて僕と結婚しよう。僕の態度がいけなかったのだろう。改めるよ。これからは君を護る。君がいなくなって、僕は気づいたんだ。ノエル愛してるって」
ノエルに愛を囁いた?
何様だ。理由はしらないが、何かがあったからこそ婚約が解消したのだろう?今更蒸し返すのか?
ノエルは・・・?ノエルはこの男を・・・。
いや、それなら怖がったりしない。現に今も、表情が固まっている。青くなっているくらいだ。
どういうことだ??
「お待たせしました」
店員が飲み物を持ってきた。何も喋れない僕たちに構いもせず、持ってきたものを並べる。
「以上になりますぅ」
「あ、ありがとう。持ち帰り用は・・・」
「今準備しておりまぁす」
軽い声。
しかしまだか・・・、衛兵。早くこい。
こいつはなんかやばい。
「では、何かありましたらお呼びください」
店員は外に待機してくれるか・・・。
「マルス様・・・、どんなことをいわれようと、あなた様との婚約はすでに解消しています」
ノエルがいい切った。いい顔をしている。
「だから何だ。僕は君が好きなんだ・・・。愛してる。だからこそ、君に会いたくてここまで来たんだよ。君に花を贈っていた。僕の気持ちに気づいて欲しくて・・・。なのになぜ・・・。なぜ、そんな姿で・・・そんな男と?どうして目を隠していないんだ。その傷は僕だけが知っていればいいのに・・・」
例の薔薇を贈ったのはこいつか!!
僕はこの男の表情が怖かった。
意味がわからない。ノエルを物のよう扱っているように感じて。
「なぜ?そんな片眼鏡をつけているんだい?ノエルには似合わない。髪で隠し、静かに僕の隣でいればいいんだよ。」
以前のノエルのことを言っている?
だんだん腹がたち、居ても立っても居られなくてつい口にしてしまう。
「それが君の知っているノエル嬢か?馬鹿馬鹿しい」
彼女の何を知っている!!
「ノエル嬢はまっすぐな女性だ。物事に真剣に向かい合い、信念がある。それでいて優しい。君は理想を押し付けているだけだろう。本当のノエルを知っているのか!」
「あなたには関係ないね。ノエルは僕のだ。その証拠に目の傷がそうだ。それがあるからこそ誰にからも相手にされない。醜いといわれ、傷つくノエルを僕が癒してあげる。それをノエルは求めているんだ」
ふざけるな。
彼女を侮辱するな!
「傷があるから君のもの?」
鼻で笑う。
「君は傷だけでノエルを見ているのか?」
知らないなら教えてやる。
「傷など個性にすぎない。見た目より中身が大切だろう。君はノエルの何を見ている、何を知っている!?」
「うるさい!ノエルは僕のだ。僕の所有物である証があるんだ!」
やつはアップルパイの皿にあったナイフを握りしめて立ち上がった。
「もう一度・・・傷をつければ・・・」
「やめろ!」
「ノエル!!」
ナイフを振りかざしてくる。
僕が彼を逆撫でしたからか。
ノエルを抱き寄せ、襲いかかってくるナイフを避ける。手が・・・腹が・・・。
「ああああっっっ!!」
マルス様の悲鳴。
「何やってんですかぁ?」
呑気な声が聞こえる。やっときたのか?
「遅い・・・。ノエル大丈夫か?」
あの男は床に転がっているのを確認して、ノエルを安心させるために笑う。
「だ、大丈夫・・・」
「よかった・・・」
良かった。傷はなさそうだ。
しかし・・・身体が重い。いうことをきかない・・・?
「アーサー様?」
「動かさないで!」
「えっ・・・?」
どこか遠くで声が聞こえた。
ノエルの凛とした声に驚く。先ほどまでのおどおどした姿ではなく、顔をあげ彼を見ていた。
「迎えにきたんだ」
意外な晴れやかな答えに頭が追いつかない。
この男、自分が何を言っているのかわかっているのか?婚約は解消しているのだろう?
「なにを仰っていますか?私は留学のために帝国に来ています。トルスター国に帰るのはまだ先の話ですし、ましてや、あなた様に迎えに来てもらう通りもありません」
「留学をやめて僕と結婚しよう。僕の態度がいけなかったのだろう。改めるよ。これからは君を護る。君がいなくなって、僕は気づいたんだ。ノエル愛してるって」
ノエルに愛を囁いた?
何様だ。理由はしらないが、何かがあったからこそ婚約が解消したのだろう?今更蒸し返すのか?
ノエルは・・・?ノエルはこの男を・・・。
いや、それなら怖がったりしない。現に今も、表情が固まっている。青くなっているくらいだ。
どういうことだ??
「お待たせしました」
店員が飲み物を持ってきた。何も喋れない僕たちに構いもせず、持ってきたものを並べる。
「以上になりますぅ」
「あ、ありがとう。持ち帰り用は・・・」
「今準備しておりまぁす」
軽い声。
しかしまだか・・・、衛兵。早くこい。
こいつはなんかやばい。
「では、何かありましたらお呼びください」
店員は外に待機してくれるか・・・。
「マルス様・・・、どんなことをいわれようと、あなた様との婚約はすでに解消しています」
ノエルがいい切った。いい顔をしている。
「だから何だ。僕は君が好きなんだ・・・。愛してる。だからこそ、君に会いたくてここまで来たんだよ。君に花を贈っていた。僕の気持ちに気づいて欲しくて・・・。なのになぜ・・・。なぜ、そんな姿で・・・そんな男と?どうして目を隠していないんだ。その傷は僕だけが知っていればいいのに・・・」
例の薔薇を贈ったのはこいつか!!
僕はこの男の表情が怖かった。
意味がわからない。ノエルを物のよう扱っているように感じて。
「なぜ?そんな片眼鏡をつけているんだい?ノエルには似合わない。髪で隠し、静かに僕の隣でいればいいんだよ。」
以前のノエルのことを言っている?
だんだん腹がたち、居ても立っても居られなくてつい口にしてしまう。
「それが君の知っているノエル嬢か?馬鹿馬鹿しい」
彼女の何を知っている!!
「ノエル嬢はまっすぐな女性だ。物事に真剣に向かい合い、信念がある。それでいて優しい。君は理想を押し付けているだけだろう。本当のノエルを知っているのか!」
「あなたには関係ないね。ノエルは僕のだ。その証拠に目の傷がそうだ。それがあるからこそ誰にからも相手にされない。醜いといわれ、傷つくノエルを僕が癒してあげる。それをノエルは求めているんだ」
ふざけるな。
彼女を侮辱するな!
「傷があるから君のもの?」
鼻で笑う。
「君は傷だけでノエルを見ているのか?」
知らないなら教えてやる。
「傷など個性にすぎない。見た目より中身が大切だろう。君はノエルの何を見ている、何を知っている!?」
「うるさい!ノエルは僕のだ。僕の所有物である証があるんだ!」
やつはアップルパイの皿にあったナイフを握りしめて立ち上がった。
「もう一度・・・傷をつければ・・・」
「やめろ!」
「ノエル!!」
ナイフを振りかざしてくる。
僕が彼を逆撫でしたからか。
ノエルを抱き寄せ、襲いかかってくるナイフを避ける。手が・・・腹が・・・。
「ああああっっっ!!」
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「何やってんですかぁ?」
呑気な声が聞こえる。やっときたのか?
「遅い・・・。ノエル大丈夫か?」
あの男は床に転がっているのを確認して、ノエルを安心させるために笑う。
「だ、大丈夫・・・」
「よかった・・・」
良かった。傷はなさそうだ。
しかし・・・身体が重い。いうことをきかない・・・?
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「動かさないで!」
「えっ・・・?」
どこか遠くで声が聞こえた。
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