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1、幼少期

11歳ー1

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 わたしはあれから魔術の先生がついた。

 セイカのことがあって、司祭様が両親に薦めたのだ。と言っても探してきてくれたのは祭司様だった。

 わたしより10歳だけ年上のアウスラー・バルゼルド先生。バルゼルド伯爵家の次男で、王立学園の魔術科を最短の3年で首席で卒業したあと、魔術騎士として所属している。
 どんなに実力があっても若いからと年上の同僚や上司から疎まれ、家庭教師という厄介事を押し付けられたみたいだ。

 初めて会った時、さすがと言うかセイカの存在に気づき先生はひれ伏した。

「ご尊顔を拝します」
 
 10歳の少女を侮っていていたようだが、わたしに魔術を教えに来る回数が週に1回だったのがすぐに4回に変わった。

 「君は素晴らしいよ」
 
 アウスラー先生は真剣にわたしに向き合ってくれた。勉強の方も、今までの家庭教師を解雇するように進言し、アウスラー先生自身が教えてくれる。

 先生の持つ知識は面白かった。
 セイカもアウスラー先生を気に入ったのかわたしのそばで見ていてくれる。

 今日もアウスラー先生から歴史を学んでいた。

 セイカはわたしといつも一緒にいてくれる。
 普通、精霊は呼ぶまで姿を見せない。現にアウスラー先生が使役する水の精霊ウェンディーネも姿を隠していた。
 でも、セイカはずっとわたしの傍でいた。初めに見せた姿ではなく、今は大人の手に収まるくらいのまん丸い姿になっている。青い一本の冠羽に3本突き出た尾が可愛らしい。

 わたしが勉強する時は窓際の日当たりの良いところでうたた寝をしていた。

 この日は、朝から屋敷中が騒がしかった。
 メイドたちがひっきりなしに行き来している。

 『今日は朝から騒がしいな』

 
 寝ていたはずのセイカがモゾモゾ身を震わせ片目だけでこちらに向けてきた。

「今日はカリナの精霊の儀の日だから」
「あぁ、もう、そんな時期ですか・・・。エルファ様の時もこんな感じでしたか?」

 アウスラー先生が聞いてきた。
 
 わたしは首を振る。
 私の時は静かだった。両親も祝ってくれなかった。

「わたしなら、自慢しますがね・・・」

 アウスラー先生は我が家の事情を知っている。
 以前の家庭教師を解雇する際、両親がわたしに対する扱いを目の当たりにしたので、歪な家族関係を理解している。

 両親は上位精霊のセイカをきちんと理解していないのか、カリナの『光』魔法ばかり注目しているようだった。
 カリナには英才教育を施しているらしい。 
 カリナが勉強をサボってわたしの部屋に逃げてきた時に話してくれた。

『ふーん・・・』
「どうしたの」 

 セイカが冠羽をピンと伸ばして外を伺っていたかと思うと、わたしに言ってきた。

『クラルテ、だと』
「クラルテ?」
「クラルテ、ですか?ルミネルに次ぐ光の上位精霊ですよ。まさか・・・」

 アウスラー先生が目を輝かせる。

 わたしは本棚から一冊の本を持ってくると机の上で開いた。
 絵と文で書かれた「クラルテ」の説明にはセ 滅多に出現しない精霊と書かれている。

「今日はお祝いになるわね・・・」

 両親の喜んでいる姿が思い浮かんだ。

「エルファ様・・・」
「ごめんなさい。先生、勉強の続きをお願いします」
「・・・、わかりました。では・・・」

  わたしは勉強に戻った。

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