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1、幼少期

11歳ー2

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 カリナの精霊がわかってから二日後、王宮に赴いた。

 カリナの精霊が『クラルテ』であったことの報告である。

『そんなに光の魔力が珍しいのか?』

 王宮側からわたしも同行を求められたため両親の後について歩いていると、セイカから問われた。

『結界を張ることができたり、癒しの力もあるから、光の魔力は貴重なのよ』
『ほお、たいそうなことだな』

 セイカは珍しそうに言ってきた。

『そう?』
『我なら、両方できるぞ。瑞鳥だからな』

 わたしの肩にちょこんと乗るセイカは誇らしげに胸を張る。
 柔らかな胸元を膨らませるので、誰も見ていないならなぜまくりたくなるほど可愛く見えた。

 そんなことを思っていると、わたしの服が引っ張られる。
 引っ張る方を見るとカリナが顔を強張らせて震えてながら、わたしを見あげていた。

「カリナ?」
「お姉様。大丈夫かな?」

 小さな声。

「大丈夫よ。心配することはないわ」

 震える手を握った。

「うん・・・」

 国王陛下に拝謁できることに浮かれ、カリナが不安になっているのに気づかない両親に呆れる。

『こんな奴らと離れないのか?』

 軽蔑混じりのセイカに心うちだけで苦笑しながら言う。

『こんな人でも親だから・・・』
『ふ~ん。くだらいな。人間は・・・』

 それだけ言うと、セイカはじっと動かなくなった。

 
 初めて入った謁見の間は広く、圧巻の美しさがあった。
 カリナも驚きと好奇心でキョロキョロと見ていたが、突然わたしの手を一段とにぎりしめてくる。
 壁側にはずらりと並んだ諸侯たちの興味深々の顔や好奇の視線に、カリナは気づいて怯えたようだ。

 
 きっとみんな、カリナのクラルテを見にきたのだろう。

 両親の後ろをカリナと手を繋ぎ歩き、国王陛下の前まで行った。

 初めて見る国王陛下。
 くすんだ金の髪と翠の瞳が印象的に見えた。
 貫禄、威厳といったものだろうか、両親が頭を下げるのにならい、急いでわたしとカリナも頭を下げた。

 国王陛下が声をかけ、両親が返事をする。
 こんな場所に来るのは今までなかったので大人の難しい話など耳に入ってこず、自分の心音だけが耳に聞こえてきた。

「カリナ。お前の精霊を出しなさい」

 両親に言われたカリナの手がぎゅっとわたしの手を握りしめる。
 ガタガタと震えていた。
 まだ、精霊の扱いもままならない。もしもがあれば怖いのだろう。
 でも、このままでもいけない。

 わたしは手を握り返し、カリナを見た。

「大丈夫。姉様を信じなさい。何があってもわたしがいるから」
「・・・うん」

 カリナが顔を上げてわたしを見ると小さく頷いた。

 ふーっと息を吐くとカリナが呟く。

「クラルテ、出てきて」

 カリナの言葉に同調するようにカリナすぐ横に光が渦となる。あまりの眩しさに誰もが目を覆った。

 光がやめば、そこに一人の女性が立っていた。異国のような巫女のような白い衣装を見に纏っている彼女はいたずらっ子のような笑みを浮かべていた。
 
「あら~。わたくしを呼び出したかと思えば見せ物にするためだったのかしらぁ~」
 
 女性にしては少し低めの声に色艶が見え、幼いわたしたちでも「大人の女性」にどきどきする。

「確かに『クラルテ』様で、ございます」

 国王陛下の側にいた魔導士が口にした。

「へぇ~。わたくしを疑っていたの?」

 ふんっと、鼻で笑うクラルテはその美貌もあってか怖く感じた。

「すまない。この国の王として見極めなくてはならなかったのだ」

 国王陛下の周りに風が生まれ一人の白い青年が後ろに立った。

「久しいな。クラルテ」
「あら?シルヴィス。近頃見ないと思ったら、こんなところにいたの?」
 
 シルヴィスといえば風の精霊王だ。

「あぁ。そうそう、イフリートもいるぞ。レイドリック、やつを出せ」

 シルヴィスが国王陛下の後ろに隠れるようにしている少年に向けて言った。

 わたしは目を見張る。

ーあの時の?

 6年前、出会った男の子がそこにいた。


 
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