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39.二人のデート姿
しおりを挟む私は言葉通り部屋を出た。
セイネ様にどう言えば良いのだろうかと悩んでしまう。胸元のエプロンの中に隠した短剣が重く感じた。
東館に帰るため本館を通っていると、中庭で散歩デートをしているロイド殿下とソレイユ様の姿が見えた。
二人は見つめ合いながら談笑している。
手を絡めて歩く姿は恋人そのものだった。初々しいともいうのだろうか。
二人を見守る衛兵たちも直視できずにいるのがわかる。
自分には関係ないことなのに、どうしてかわからないが自分の心がザワザワとしていた。
「どうかしたのか?」
声がさして振り向くとアルフ様がいた。
「どうして、ここに?」
掠れた声が出る。
「城内とはいえ、警護だからな・・・。若い二人にあてられたから?」
ーあてられる?
仲睦まじいお二人をもう一度見た。
「いえ。そうではないですが・・・。あんな幸せそうお二人を見ていると、複雑な感情を持つ人もいるのかな・・・と思っただけです」
ー自分は何を言っているんだろう
なぜか最近よく見るあの人魚の女性を思い出していた。
「それは君のこと?」
「私・・・?私はそんな経験はありません。身を焦がすような恋は知りません」
そう、私は知らない。
恋に興味があるより、恋をしている人に興味があった。
「そんな恋をしてみたいとは思ったことはないのか?」
「わかりません」
なんで熱い眼差しで見ることができるのか?知りたいとは思うことはあったが、体験してみたいなんて考えたことはなかった。
「見ているだけで幸せだからかもしれません」
「見ているだけで幸せ・・・か」
「ぴえっ!!」
ーて、てててて、手が!
自分の手を見やると、アルフ様の手が触れていた。
「ア、ア、アルフ様???」
「へぇ・・・、こんなこともないのか?」
慌てる私に構わず、アルフ様は指を絡ませてきた。
私より大きく硬い手のひらの温もりが否応なく伝わってくる。
「小さい手だな」
ーな、なんでこんなことに??
「自分が幸せになりたいとは思わないのか?」
「あうっ。と、特には・・・」
手を離してもらいたくてもがいても、力が強いのか無理だった。
「寂しく思うことはないのか?」
なぜかその言葉にすっと、力が抜けた。
寂しい・・・。
忘れていた何かが溢れそうになる。
考えないようにしていたはずのことを追求されたように感じた。
「アルフ様には関係ないですよね?」
「そうかも、しれない。でも君のことをもっと知りたいという気持ちはある」
「私のことを・・・知ってもなんの価値はありませんよ」
「それを決めるのは私だ」
厄介な人だ。
なぜ、こうも私に深入りしようとするのか?そっとしてほしい。これ以上踏み込まれたくない。
だから、つい言ってしまう。
「想っている方がいるのでしょう。浮気は軽蔑しますが??」
「いや、そんなつもりは!?」
顔を真っ青にしてわかりやすく動揺して、慌てて手を離した。
「薄情は方には興味ありません」
「薄・・・」
撃沈というのだろうか。アンナ様との会話を思い出したのか、アルフ様はその場で頭を抱えてうずくまってしまった。
手が離れてほっとしたと同時にあの温もりが消えて変な感じがする。
「もう行きます」
まだ、撃沈しているアルフ様を放って、セイネ様の元に帰ることにした。
ロイド殿下とソレイユ様はまだ楽しそうに散歩デートをしていた。
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