54 / 315
本編
No,53 【姫初め】 ※R18
一条さんの主張でエアコンをつけっ放しで外出したので、帰って来ても部屋の中は暖かだ。
「…ただいま…」
一条さんの家に来てこの挨拶は、正直、真唯にはかなり抵抗がある。
だが、これまた一条さんの強い主張によって『帰宅したのなら、当然の挨拶です』と押し切られた。
「…ただ今…そして、『お帰りなさい』」
背後から聞こえる優しい声に、真唯は振り返る事が出来ない。
ショルダーバッグを肩から外し、ダウンのハーフコートを脱ぎながらウォークインクローゼットに行こうとしたところだった。
……一条さんに後ろから抱き締められたのは。
「…何してるんですか…」落とされる接吻にあらがえば、
「お帰りなさいのキスをしています。」シラッと答える一条さん。
「…これをクローゼットに仕舞いたいんですが…」バッグとコートを示せば、「ああ、こちらに貸して下さい。」言われるままに一条さんに渡して、すぐに後悔した。一条さんは真唯のバッグとコート、そして自分のトレンチコートを床に落としてしまったのだ。ここまで堂々とやられると『なにするんですか!』と怒る気力も削がれる。 ……敵はそれも理解っているに違いない。
「……『仕舞う』と云えば…昨夜は【カパック・ライミ】などと云う高尚な単語を出されて言えませんでしたが…大晦日にするSEXを何と言うがご存じですか?」
「~~~~」
「ああ、ご存じなんですね…そう、【姫納め】とか…【姫仕舞い】などと言うんですよ。」
ここで一条さんの意図を見抜いた真唯はジタバタしてみたのだが、塗り壁に猫パンチ、敵には全然こたえた様子もなく、
「…それでは、これから【姫初め】と洒落込みましょう。
…お付き合い頂けますね、真唯さん。」
「…い、一条さん!
【姫始め】とは祭りの後に、姫飯を食べる事であって…!」
「…寿司屋に行く時にも言いましたが、時代の変化に付いて行くのは大切な事です。」
「…っ! …私、今夜はお風呂に入ってゆっくりしたいんですが…っ!」
「……………」
「…それに、ほらっ、…お正月ですから、禊の意味も込めてゆっくりと…」
「…了解りました…」
「…へ…っ?」
「ゆっくりお風呂に入りたいんですね。貴女の意思は尊重します。
どうぞ、ごゆっくり。」
一条さんは真唯を解放してくれ、真唯のバッグとコートを自分のコートを拾い、クローゼットに消えた。その後ろ姿を見て、(勝った!)と思った。S○X抜きを確約してくれた訳ではないが、お風呂にゆっくり入れるのは嬉しい事だった。その後の事は、またその時に考えれば良い。
途端に気が楽になった真唯は、着替えを取りに行くために自分もクローゼットに向かったが。
……敵が安易に引き下がった理由を、深く考えなかった事を直ぐ後に後悔する事になるのだった……
※ ※ ※
一条さんの家は俗に云う億ションだ。当然、湯船も広い。
(ジャグジーもサウナもあるが、真唯は使った事はない。)
真唯がゆったり身体を伸ばしても未だ余る。広い湯船にハーブの精油と岩塩を精製した天然の塩から生まれたバスソルトを使わせてもらって、真唯はご機嫌だった。
……一条さんぐらいの体格だったら、丁度良いのかも知れないな……
お風呂場から見える切り取られたウォーターフロントの夜景に、真唯の精神に切なさが忍び込む。
……今まで一体、何人の女性がこの湯船に入ってこの夜景を見つめたのだろう……
……過去に嫉妬しても仕方がないと、理性では理解っている。
けれども感情は、簡単に納得してくれない。
……一条さんのすべてが知りたい。
……だけど、しつこく問い質したりして、鬱陶しい女だと思われたくない。
―――……自分がこんなに独占欲の強いオンナだとは思わなかった……―――
「…何を泣いていらっしゃるのですか…?」
第三者の声がして、慌てて涙を拭って顔を上げれば、そこにいるのは当然一条さんだ。しかも全裸。一応前は隠してくれているものの一瞬で眼に焼き付いたその逞しく美しい裸身に、自分の貧弱な身体が恥ずかしくなり真唯はザバリと立ち上がると消え入りたい気分でタオル一枚で何とか身体を隠しつつ、ソロリと湯船から出るとツツツ…と壁伝いに蟹歩きをしながら一条さんと距離を保ちつつドアを目指そうとする。
「……一条さんがお入りになるなら、私は出ますね…ごゆっくり~~」
「…あなたこそ、ゆっくり風呂に入りたいとおっしゃっていたではありませんか。どうぞ、ご遠慮なさらずに。」
「…っ」じゃあ、出て行って欲しいと云う言葉は家主には言い難い。うう~~~っと心の中で唸っていると、
「風呂に入って、ゆっくりシタいと誘って下さったのは貴女です。
何を今更恥ずかしがっていらっしゃるのですか?」
大きなストライドで数歩で距離を縮めて来た一条さんに、真唯はアッと云う間に捕まってしまう。そして『したい』と云う言葉を強調して誘ったなどと真唯に濡れ衣を着せる一条さんに、真唯は(ヤラレタ!)と云う悔しい想いが後悔の念と共に湧き上がるがそれは表面上だけで……彼への独占欲を自覚した今となっては、その彼の真唯に対する執着がただただ嬉しいだけだ。
「ご希望通り“禊”をしましょう。 ……ご一緒に。」
そう言って、シャワーの温度を確かめ高いフックに掛けると、降り注ぐ暖かい雨の中で、一条さんは真唯を抱き締めキスしてくれる。
真唯は一条さんの首に両腕をまわし必死で彼のキスに応えた。一条さんは運転があったので、お寿司屋さんでノンアルコールビールしか飲んでいない。でも一条さんの舌は、確かにあのほろ苦い麦酒の味がする……。彼が流し込んで来る唾液を素直にコクンと呑み込んで。彼の舌の促しに従って、真唯も自分の日本酒の味がするはずの唾液を一条さんに送った。
「……甘い……」
感嘆するような一条さんの言葉が恥ずかしい。
真唯に日本酒の味は理解らない。だから最初は固辞したのだが、『発泡性純米酒と言って、シャンパンのようなものですよ。』と一条さんに薦められて興味が湧いた。飲めない一条さんに申し訳ないと思ったのだが、『私に遠慮せずに。折角のお正月なのですから楽しんで下さい。』にっこり笑われて、それなら……とお言葉に甘えた。
「…あの日本酒、ホントに美味しかったですから…」
「…違いますよ。この甘さは、真唯さんご自身の甘さです。
…そうでなければ、こんなに私を酔わせるはずがない…」
「~~~~」
赤面ものの言葉を吐いて下さる一条さんに咄嗟に真唯は俯いてしまい、そしてバッチリたくましく勃ち上がった彼自身を目の当たりにしてしまった。
(…大きい…っ!)
真唯は父親とお風呂に入った経験がない。
だから、初めて目撃してしまった男性自身に大きな衝撃を受けた。
(…あ、あんなに大きなものがアタシの中に入ってたの!?
…アタシ、今までよく平気でいられたわね~…って言うか、あんなものを受け入れていたんだから、あの苦痛や疲労がパネェのも無理ないわ…)
「…そんなにマジマジと鑑賞されると、私も照れるんですが…」
頭の上から降ってきた声に、真唯はハッと我に返る。あまりに衝撃的なモノをつい凝視してしまった事に気付き、「ご、ごめんなさいっ!!」顔から火を噴きそうな心地で両手で眼を、と云うよりも顔全体を隠す。どんな表情をして一条さんに相対して良いのか理解らない。
「良いんですよ……で、ご感想は?」
「…へ…っ?」
抱き寄せられて今まで意識していなかったアレの存在をリアルに肌に感じて、心の中で悲鳴を上げていた真唯は、一条さんの問いについ、素っ頓狂な声をあげてしまった。
一条さんは真唯の妙な声に動じる事もなく再び問うてくる。
「……コレは、貴女が欲しくてこんなになっているのです。
もう、貴女以外に反応しない…ご感想は?」
「……本当です…か…?」
その言葉は真唯にとっては泣きたいほどに嬉しい台詞だった。
縋るような声になってしまったと思うが仕方がない。
「勿論、本当です。貴女以外、抱きたいと思える女性がいなくなってしまったのですから…責任とって下さいね。」
「……責任…とります…とらせて下さい……」
―――躊躇いは……感じなかった―――
「…ま、真唯さんっ! ……私はそんな心算で言った訳では…っ!」
いつも余裕綽綽で真唯を翻弄する男が珍しく焦っている様子が逆に真唯を落ち着かせ、何やら楽しい気分にさえさせられる。
一条さんの前に膝をつき、太くて大きく赤黒いそれをなるだけ優しく両手で包む。初め真唯を驚愕させたそれは、もう愛しさの対象でしかなかった。
口唇に迎え入れ、しゃぶろうとしたそれは見る見るうちにもっと大きく太くなり、小さな真唯の口では先っぽしか入らない。仕方がないから、手で愛撫しつつ心を込めて舌を使った。方法は……知っていた。会社のオバサマ方のY談から仕入れた情報によって。ぎこちない動きや技巧のつたなさは、実践は初めてなのだから勘弁して欲しい。
最初は吃驚して真唯の頭を引き剥がそうとしていた一条さんの手が、諦めたように真唯の髪を優しく撫で「…っ、……ん…クゥ…ッ!」と喘ぎ声を漏らしてくれた瞬間は本当に嬉しかった。……少しでも一条さんに感じて欲しい……。その一心で瞳を閉じて、ひたすらに奉仕を続ける真唯には、男の表情の変化は分からなかった……
終わりは唐突にやって来た。
一条さんが無理矢理真唯の顔を引き剥がしたのだ。
……まだ、イってくれてない……
少し寂しく思い、怖ず怖ずと顔を上げて聞いてみる。
「……一条さん…あの…気持ち良くなかった…? ……ごめんなさい……」
すると、「…っ! …貴女と云う女性は…っ!!」なぜか一条さんの怒ったような声が聞こえ、そんなによくなかっただろうか…と軽く落ち込んでしまうと、「良くなかったかですって…!? …貴女の身体で直接確かめてみればいい…っ!」と真唯を無理矢理立たせシャワーを止めた一条さんは、真唯の両手をタイルの壁につかせて前戯もなにもなく慣らす事もせずに背後からいきなり真唯を貫いた。
「キャアァーーーッッん!!」
一条さんのいきなりの暴挙に思わずあげた真唯の悲鳴は、苦しげな呻き声に変わり……しかし、直ぐに始まった一条さんの律動と共に嬌声へと変わって行った。
「イヤア…ァッ、一条さんっ! ……そんな、いきなりっ……ハアあ…っ! ハウ…ッ!!」
「……だいじょう…ぶっ! …充分濡れています…私を舐めながら感じていたんですね…イヤラしい身体だ…っ」
「やあァ…ッ、…そん…な言い方しないで…っ! ……お湯ですっ、…お湯で濡れて…ひあアァ…ッン!」
「…白々しいっ、…それより、どうですか私は…っ! …貴女が育ててくれたものです…よっ」
「ヒウ…っ、……すごく…っ……おおきい…っ! ……ハア…ッ、…ハウァ…ッ!!」
「…っ、…それは最高の誉め言葉ですね…じっくり…味わって頂きたかったんですが…生憎、私にも余裕がない…っ、…クゥ…ッ、……ダメだ…っ、がまん、出来ない…っ!」
「アアッ…!! ひっ…! ひぁ……んっ!!」
「……くっ…んァ…っ!」
ほぼ同時に絶頂を迎えたようだが弛緩する意識の中で、一条さんの昇りつめた嬌声を聴いたのは初めてのような気がして、半ば無理矢理抱かれたのにそれを嬉しく思うなんて自分でも終わってると思った真唯だった。
その後、立っていられずに崩れ落ちた真唯をバスマットに寝かせ直ぐさま二回戦を開始した一条さんだが、真唯はそこで尋問を受けてしまった。曰く―――なぜ、あんなにフェラが上手いのかと。
『上手い』と言われて(ああ、一条さんを気持ち良く出来たんだ…!)と嬉しくなった真唯は、問われるままに正直に話した。一条さんの雰囲気がなんだか怖いと思いながら。真唯の答えに、一条さんの呆気にとられたような表情は段々ばつが悪そうなものへと変わって行く。
『…なんでそんな事を聞くんですか? …他にどんな理由があると思ったんですか?』
『……すみません、…その…あんまりお上手だったので……経験がおありなのかと……』
『…なっ! ……酷い、一条さん!! …私、他の男の人なんて…想像しただけで吐き気がして、鳥肌が立ちますっ!!』
『すみません、真唯さん! …今、落ち着いて考えれば、確かに貴女の舌遣いはたどたどしかった。バカ正直とも言える貴女に、私を裏切るような真似が出来るはずがないと理解りますっ! …ですが、もう少しで貴女の口に出してしまいそうになるほど追い詰められた、私の気持ちも理解って下さいっ!!』
『……………』
それは明らかに真唯への賛辞で、気分が浮上した真唯は結局一条さんを許してしまった。
だが、もう一つの質問。これには答えられなかった。曰く―――
『私がバスルームに入って来た時に何故、泣いていたんですか?』
頑として答えない真唯に、片眉をヒョイと上げ…『浮気疑惑は簡単に晴れましたが、こちらは追及の必要がありそうですね。吐いて頂きますよ、どんな事をしても』宣言した一条さんは真唯を快感地獄に陥れ…身体を使っての尋問に屈してしまった真唯は、泣きながらすべてを白状させられてしまったのだった。
※ ※ ※
「おバカさんですね、真唯さんは」
「……どうせ、バカだもん……」
ここは湯船の中。一条さんに背後から抱き締められる形で、真唯はバスソルトから薫る微かなハーブの匂いを感じていた。
一条さんは説明してくれた。若い頃から確かにモテたが、女性は大概、財産目当てで一条さんを財布のように思っているか、連れて歩くと自慢出来るアクセサリーのような感覚でコナをかけてきた事。『そんな女性を恋人などと思えると思いますか?』逆に聞かれて、真唯は首を左右に振る。
『私も若かったですからね、正直に申し上げますが、後腐れのない女と適当に身体の関係を持ちました。ですが、短くて一晩。長くて一ヶ月くらいしか続きません。ハッキリ言って単なる性欲処理です…軽蔑しますか…?』
苦い物を飲み下すような一条さんの告白に、真唯はプルプルとまた首を左右に振る。
途端に微笑んだ声で言われた。
『…ありがとうございます…』
と。
「今までどんな女も、部屋に入れた事はありません。この部屋も同様です。
私は自分のテリトリーを他人に犯される事が何より嫌いですので。
寝室のベッドルームを使った事があるのも、この風呂に入ってこの夜景を見たのも貴女一人だけです。」
そして、最後に耳元に囁かれた一言に、真唯はKOされた。
―――だからね……真唯さんは……私の初恋の女性なんですよ―――
「…ただいま…」
一条さんの家に来てこの挨拶は、正直、真唯にはかなり抵抗がある。
だが、これまた一条さんの強い主張によって『帰宅したのなら、当然の挨拶です』と押し切られた。
「…ただ今…そして、『お帰りなさい』」
背後から聞こえる優しい声に、真唯は振り返る事が出来ない。
ショルダーバッグを肩から外し、ダウンのハーフコートを脱ぎながらウォークインクローゼットに行こうとしたところだった。
……一条さんに後ろから抱き締められたのは。
「…何してるんですか…」落とされる接吻にあらがえば、
「お帰りなさいのキスをしています。」シラッと答える一条さん。
「…これをクローゼットに仕舞いたいんですが…」バッグとコートを示せば、「ああ、こちらに貸して下さい。」言われるままに一条さんに渡して、すぐに後悔した。一条さんは真唯のバッグとコート、そして自分のトレンチコートを床に落としてしまったのだ。ここまで堂々とやられると『なにするんですか!』と怒る気力も削がれる。 ……敵はそれも理解っているに違いない。
「……『仕舞う』と云えば…昨夜は【カパック・ライミ】などと云う高尚な単語を出されて言えませんでしたが…大晦日にするSEXを何と言うがご存じですか?」
「~~~~」
「ああ、ご存じなんですね…そう、【姫納め】とか…【姫仕舞い】などと言うんですよ。」
ここで一条さんの意図を見抜いた真唯はジタバタしてみたのだが、塗り壁に猫パンチ、敵には全然こたえた様子もなく、
「…それでは、これから【姫初め】と洒落込みましょう。
…お付き合い頂けますね、真唯さん。」
「…い、一条さん!
【姫始め】とは祭りの後に、姫飯を食べる事であって…!」
「…寿司屋に行く時にも言いましたが、時代の変化に付いて行くのは大切な事です。」
「…っ! …私、今夜はお風呂に入ってゆっくりしたいんですが…っ!」
「……………」
「…それに、ほらっ、…お正月ですから、禊の意味も込めてゆっくりと…」
「…了解りました…」
「…へ…っ?」
「ゆっくりお風呂に入りたいんですね。貴女の意思は尊重します。
どうぞ、ごゆっくり。」
一条さんは真唯を解放してくれ、真唯のバッグとコートを自分のコートを拾い、クローゼットに消えた。その後ろ姿を見て、(勝った!)と思った。S○X抜きを確約してくれた訳ではないが、お風呂にゆっくり入れるのは嬉しい事だった。その後の事は、またその時に考えれば良い。
途端に気が楽になった真唯は、着替えを取りに行くために自分もクローゼットに向かったが。
……敵が安易に引き下がった理由を、深く考えなかった事を直ぐ後に後悔する事になるのだった……
※ ※ ※
一条さんの家は俗に云う億ションだ。当然、湯船も広い。
(ジャグジーもサウナもあるが、真唯は使った事はない。)
真唯がゆったり身体を伸ばしても未だ余る。広い湯船にハーブの精油と岩塩を精製した天然の塩から生まれたバスソルトを使わせてもらって、真唯はご機嫌だった。
……一条さんぐらいの体格だったら、丁度良いのかも知れないな……
お風呂場から見える切り取られたウォーターフロントの夜景に、真唯の精神に切なさが忍び込む。
……今まで一体、何人の女性がこの湯船に入ってこの夜景を見つめたのだろう……
……過去に嫉妬しても仕方がないと、理性では理解っている。
けれども感情は、簡単に納得してくれない。
……一条さんのすべてが知りたい。
……だけど、しつこく問い質したりして、鬱陶しい女だと思われたくない。
―――……自分がこんなに独占欲の強いオンナだとは思わなかった……―――
「…何を泣いていらっしゃるのですか…?」
第三者の声がして、慌てて涙を拭って顔を上げれば、そこにいるのは当然一条さんだ。しかも全裸。一応前は隠してくれているものの一瞬で眼に焼き付いたその逞しく美しい裸身に、自分の貧弱な身体が恥ずかしくなり真唯はザバリと立ち上がると消え入りたい気分でタオル一枚で何とか身体を隠しつつ、ソロリと湯船から出るとツツツ…と壁伝いに蟹歩きをしながら一条さんと距離を保ちつつドアを目指そうとする。
「……一条さんがお入りになるなら、私は出ますね…ごゆっくり~~」
「…あなたこそ、ゆっくり風呂に入りたいとおっしゃっていたではありませんか。どうぞ、ご遠慮なさらずに。」
「…っ」じゃあ、出て行って欲しいと云う言葉は家主には言い難い。うう~~~っと心の中で唸っていると、
「風呂に入って、ゆっくりシタいと誘って下さったのは貴女です。
何を今更恥ずかしがっていらっしゃるのですか?」
大きなストライドで数歩で距離を縮めて来た一条さんに、真唯はアッと云う間に捕まってしまう。そして『したい』と云う言葉を強調して誘ったなどと真唯に濡れ衣を着せる一条さんに、真唯は(ヤラレタ!)と云う悔しい想いが後悔の念と共に湧き上がるがそれは表面上だけで……彼への独占欲を自覚した今となっては、その彼の真唯に対する執着がただただ嬉しいだけだ。
「ご希望通り“禊”をしましょう。 ……ご一緒に。」
そう言って、シャワーの温度を確かめ高いフックに掛けると、降り注ぐ暖かい雨の中で、一条さんは真唯を抱き締めキスしてくれる。
真唯は一条さんの首に両腕をまわし必死で彼のキスに応えた。一条さんは運転があったので、お寿司屋さんでノンアルコールビールしか飲んでいない。でも一条さんの舌は、確かにあのほろ苦い麦酒の味がする……。彼が流し込んで来る唾液を素直にコクンと呑み込んで。彼の舌の促しに従って、真唯も自分の日本酒の味がするはずの唾液を一条さんに送った。
「……甘い……」
感嘆するような一条さんの言葉が恥ずかしい。
真唯に日本酒の味は理解らない。だから最初は固辞したのだが、『発泡性純米酒と言って、シャンパンのようなものですよ。』と一条さんに薦められて興味が湧いた。飲めない一条さんに申し訳ないと思ったのだが、『私に遠慮せずに。折角のお正月なのですから楽しんで下さい。』にっこり笑われて、それなら……とお言葉に甘えた。
「…あの日本酒、ホントに美味しかったですから…」
「…違いますよ。この甘さは、真唯さんご自身の甘さです。
…そうでなければ、こんなに私を酔わせるはずがない…」
「~~~~」
赤面ものの言葉を吐いて下さる一条さんに咄嗟に真唯は俯いてしまい、そしてバッチリたくましく勃ち上がった彼自身を目の当たりにしてしまった。
(…大きい…っ!)
真唯は父親とお風呂に入った経験がない。
だから、初めて目撃してしまった男性自身に大きな衝撃を受けた。
(…あ、あんなに大きなものがアタシの中に入ってたの!?
…アタシ、今までよく平気でいられたわね~…って言うか、あんなものを受け入れていたんだから、あの苦痛や疲労がパネェのも無理ないわ…)
「…そんなにマジマジと鑑賞されると、私も照れるんですが…」
頭の上から降ってきた声に、真唯はハッと我に返る。あまりに衝撃的なモノをつい凝視してしまった事に気付き、「ご、ごめんなさいっ!!」顔から火を噴きそうな心地で両手で眼を、と云うよりも顔全体を隠す。どんな表情をして一条さんに相対して良いのか理解らない。
「良いんですよ……で、ご感想は?」
「…へ…っ?」
抱き寄せられて今まで意識していなかったアレの存在をリアルに肌に感じて、心の中で悲鳴を上げていた真唯は、一条さんの問いについ、素っ頓狂な声をあげてしまった。
一条さんは真唯の妙な声に動じる事もなく再び問うてくる。
「……コレは、貴女が欲しくてこんなになっているのです。
もう、貴女以外に反応しない…ご感想は?」
「……本当です…か…?」
その言葉は真唯にとっては泣きたいほどに嬉しい台詞だった。
縋るような声になってしまったと思うが仕方がない。
「勿論、本当です。貴女以外、抱きたいと思える女性がいなくなってしまったのですから…責任とって下さいね。」
「……責任…とります…とらせて下さい……」
―――躊躇いは……感じなかった―――
「…ま、真唯さんっ! ……私はそんな心算で言った訳では…っ!」
いつも余裕綽綽で真唯を翻弄する男が珍しく焦っている様子が逆に真唯を落ち着かせ、何やら楽しい気分にさえさせられる。
一条さんの前に膝をつき、太くて大きく赤黒いそれをなるだけ優しく両手で包む。初め真唯を驚愕させたそれは、もう愛しさの対象でしかなかった。
口唇に迎え入れ、しゃぶろうとしたそれは見る見るうちにもっと大きく太くなり、小さな真唯の口では先っぽしか入らない。仕方がないから、手で愛撫しつつ心を込めて舌を使った。方法は……知っていた。会社のオバサマ方のY談から仕入れた情報によって。ぎこちない動きや技巧のつたなさは、実践は初めてなのだから勘弁して欲しい。
最初は吃驚して真唯の頭を引き剥がそうとしていた一条さんの手が、諦めたように真唯の髪を優しく撫で「…っ、……ん…クゥ…ッ!」と喘ぎ声を漏らしてくれた瞬間は本当に嬉しかった。……少しでも一条さんに感じて欲しい……。その一心で瞳を閉じて、ひたすらに奉仕を続ける真唯には、男の表情の変化は分からなかった……
終わりは唐突にやって来た。
一条さんが無理矢理真唯の顔を引き剥がしたのだ。
……まだ、イってくれてない……
少し寂しく思い、怖ず怖ずと顔を上げて聞いてみる。
「……一条さん…あの…気持ち良くなかった…? ……ごめんなさい……」
すると、「…っ! …貴女と云う女性は…っ!!」なぜか一条さんの怒ったような声が聞こえ、そんなによくなかっただろうか…と軽く落ち込んでしまうと、「良くなかったかですって…!? …貴女の身体で直接確かめてみればいい…っ!」と真唯を無理矢理立たせシャワーを止めた一条さんは、真唯の両手をタイルの壁につかせて前戯もなにもなく慣らす事もせずに背後からいきなり真唯を貫いた。
「キャアァーーーッッん!!」
一条さんのいきなりの暴挙に思わずあげた真唯の悲鳴は、苦しげな呻き声に変わり……しかし、直ぐに始まった一条さんの律動と共に嬌声へと変わって行った。
「イヤア…ァッ、一条さんっ! ……そんな、いきなりっ……ハアあ…っ! ハウ…ッ!!」
「……だいじょう…ぶっ! …充分濡れています…私を舐めながら感じていたんですね…イヤラしい身体だ…っ」
「やあァ…ッ、…そん…な言い方しないで…っ! ……お湯ですっ、…お湯で濡れて…ひあアァ…ッン!」
「…白々しいっ、…それより、どうですか私は…っ! …貴女が育ててくれたものです…よっ」
「ヒウ…っ、……すごく…っ……おおきい…っ! ……ハア…ッ、…ハウァ…ッ!!」
「…っ、…それは最高の誉め言葉ですね…じっくり…味わって頂きたかったんですが…生憎、私にも余裕がない…っ、…クゥ…ッ、……ダメだ…っ、がまん、出来ない…っ!」
「アアッ…!! ひっ…! ひぁ……んっ!!」
「……くっ…んァ…っ!」
ほぼ同時に絶頂を迎えたようだが弛緩する意識の中で、一条さんの昇りつめた嬌声を聴いたのは初めてのような気がして、半ば無理矢理抱かれたのにそれを嬉しく思うなんて自分でも終わってると思った真唯だった。
その後、立っていられずに崩れ落ちた真唯をバスマットに寝かせ直ぐさま二回戦を開始した一条さんだが、真唯はそこで尋問を受けてしまった。曰く―――なぜ、あんなにフェラが上手いのかと。
『上手い』と言われて(ああ、一条さんを気持ち良く出来たんだ…!)と嬉しくなった真唯は、問われるままに正直に話した。一条さんの雰囲気がなんだか怖いと思いながら。真唯の答えに、一条さんの呆気にとられたような表情は段々ばつが悪そうなものへと変わって行く。
『…なんでそんな事を聞くんですか? …他にどんな理由があると思ったんですか?』
『……すみません、…その…あんまりお上手だったので……経験がおありなのかと……』
『…なっ! ……酷い、一条さん!! …私、他の男の人なんて…想像しただけで吐き気がして、鳥肌が立ちますっ!!』
『すみません、真唯さん! …今、落ち着いて考えれば、確かに貴女の舌遣いはたどたどしかった。バカ正直とも言える貴女に、私を裏切るような真似が出来るはずがないと理解りますっ! …ですが、もう少しで貴女の口に出してしまいそうになるほど追い詰められた、私の気持ちも理解って下さいっ!!』
『……………』
それは明らかに真唯への賛辞で、気分が浮上した真唯は結局一条さんを許してしまった。
だが、もう一つの質問。これには答えられなかった。曰く―――
『私がバスルームに入って来た時に何故、泣いていたんですか?』
頑として答えない真唯に、片眉をヒョイと上げ…『浮気疑惑は簡単に晴れましたが、こちらは追及の必要がありそうですね。吐いて頂きますよ、どんな事をしても』宣言した一条さんは真唯を快感地獄に陥れ…身体を使っての尋問に屈してしまった真唯は、泣きながらすべてを白状させられてしまったのだった。
※ ※ ※
「おバカさんですね、真唯さんは」
「……どうせ、バカだもん……」
ここは湯船の中。一条さんに背後から抱き締められる形で、真唯はバスソルトから薫る微かなハーブの匂いを感じていた。
一条さんは説明してくれた。若い頃から確かにモテたが、女性は大概、財産目当てで一条さんを財布のように思っているか、連れて歩くと自慢出来るアクセサリーのような感覚でコナをかけてきた事。『そんな女性を恋人などと思えると思いますか?』逆に聞かれて、真唯は首を左右に振る。
『私も若かったですからね、正直に申し上げますが、後腐れのない女と適当に身体の関係を持ちました。ですが、短くて一晩。長くて一ヶ月くらいしか続きません。ハッキリ言って単なる性欲処理です…軽蔑しますか…?』
苦い物を飲み下すような一条さんの告白に、真唯はプルプルとまた首を左右に振る。
途端に微笑んだ声で言われた。
『…ありがとうございます…』
と。
「今までどんな女も、部屋に入れた事はありません。この部屋も同様です。
私は自分のテリトリーを他人に犯される事が何より嫌いですので。
寝室のベッドルームを使った事があるのも、この風呂に入ってこの夜景を見たのも貴女一人だけです。」
そして、最後に耳元に囁かれた一言に、真唯はKOされた。
―――だからね……真唯さんは……私の初恋の女性なんですよ―――
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた
アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。
高校生くらいから何十回も告白した。
全て「好きなの」
「ごめん、断る」
その繰り返しだった。
だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。
紛らわしいと思う。
彼に好きな人がいるわけではない。
まだそれなら諦めがつく。
彼はカイル=クレシア23歳
イケメンでモテる。
私はアリア=ナターシャ20歳
普通で人には可愛い方だと言われた。
そんなある日
私が20歳になった時だった。
両親が見合い話を持ってきた。
最後の告白をしようと思った。
ダメなら見合いをすると言った。
その見合い相手に溺愛される。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。