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44 二十五歳の誕生日
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フラエはとても暇だった。全く退院の目途が立たないからである。
見舞い客もミスミとディール以外、誰も来ない。フラエは自分の交友関係が広いとは全く思っていないので取り立てて凹んだりはしないが(研究所の同僚たちにはちょっと来てほしかった)、手持無沙汰であることは変わりない。
手は治癒魔術のおかげですっかりよくなったのに、研究の続きをすることも許されなかった。なので最近のフラエは、黙々と刺繍に取り組んでいる。手っ取り早く暇が潰せて、教本と道具を簡単に揃えてもらえるのが、これくらいしかなかったのだ。
刺繍の木枠に下絵を描き、ちくちくと縫っていく。縫い方がどうの、縫い目がどうの、と教本を一ページずつ確認していくのは、悪くない時間だ。
何を縫うという具体的な考えは浮かばない。教本に載っている図案を縫ってみて、上手くできたら次の図案に取り組む。
そうしているうちに、刺繍の入った布が(縫い損じた物含め)何枚かできてしまった。初心者にしてはかなり上出来なのではないだろうか、とフラエは密かにうぬぼれた。ベッドに座って夢中で布と糸と格闘していると、扉がノックされる。
「どうぞ」
一瞥もせず入室を許すと、扉が開いた。足音がフラエの耳に届く。それは靴底の分厚い大きな靴が、ゆっくりと、堂々と、一歩一歩近づいてくる音だった。
だからフラエには、それが誰なのか見なくても分かった。のんびりと針を置く場所を探していると、「フラエ」と、甘く掠れた声が上から降ってくる。
「遅かったね」
グノシスに見向きもせずに言うと、彼の大きな手が刺繍の木枠を取り上げてしまった。針は糸から外され、几帳面に針山へと刺される。
フラエが文句を言う前に、その大きな身体で抱きしめられる。遅くなった、と彼から素直に謝られると、妙に胸や腹の辺りがむずむずした。
「いいよ、別に。あなたも頑張ってたんだろうし」
許してみせると、獣が懐くようにグノシスが頬を寄せる。フラエは内心かつてない距離の近さに動揺していたのだが、それよりも彼の胸の音がうるさくて、笑ってしまった。
「フラエだ」
グノシスは熱に浮かされたようにそう言って、フラエを見つめた。頬に手を当ててその輪郭をなぞり、「迎えにきたんだ」と囁く。うん、と頷いてみせると、彼はベッドサイドの椅子に座った。フラエは少し残酷な気分になってしまって、「グノシス」と密やかに呟いた。
「僕、そういうことをするのに、あなたがはじめてってわけじゃないんだ」
うん、と彼は頷いた。それに追い打ちをかけるように、フラエは言う。
「僕はヌメリツタの精液で種子を生んでる。新品じゃないよ」
フラエの露悪的な物言いに、ううん、とグノシスは首を横に振った。フラエは頬に添えられた彼の手を握り、頬ずりをする。じっと彼を見つめて、言葉を促した。
グノシスは心底愛しい者を見る目でフラエを見ており、そこには軽蔑の色も憐れみの色もなかった。ただ、悲しみの色があった。
「身体は大事にしてくれ。……だけどフラエがそう言ってくれるくらい、俺に心を許してくれて、嬉しい」
「ふしだらって言わないの?」
からかうように言えば、グノシスは「まさか」と気まずそうにした。あれは、と言い訳がましく口を開く。
「あの頃は……若かったんだ。結婚もせずそういうことをするのを、お互いの価値を軽んじることだと思っていた」
フラエはじっと、彼の手に頬を寄せたまま、言葉を待つ。グノシスはしばらく唸った後、やっと言葉を選び終わって、フラエの方を見た。
「お前の一世一代の言葉と行いを、軽んじてしまった。すまなかった」
「許さないから」
突き放すように言いつつ、その手は離さない。やがて指と指が絡んで、二人は固く手を結んだ。自然と二人の顔が近づき、フラエは蕩けるように笑った。
「でもキスしてくれたら、許す」
そして目を瞑ったフラエに、グノシスは口づけた。何度も唇を擦り合わせ、やわらかい感触を楽しむ。それだけで、二人はうっとりしてしまった。
触れるだけのキスは、やがてフラエが彼の唇を食んだことで均衡が破られる。グノシスは驚いて口を薄く開け、フラエはその隙を逃さずに舌を彼の咥内へといれた。
「ん、……ふ」
ぴちゃ、と淫靡な水音が立ち、慌てたグノシスに引きはがされる。フラエは文句を言ってやろうかと思ったが、彼の顔があまりにも真っ赤だったので口をつぐんだ。
「にっ、荷物を、お前のものを廊下にまとめてある」
グノシスは慌てて立ち上がり、廊下に目配せをする。フラエはここで、ひとつの違和感に気づいた。
「侍従の人たちは?」
「俺は王子ではなくなったので、いない」
はぁ? と呆気に取られるフラエに、面倒くさそうにグノシスは頭を掻いた。フラエはその肩を揺らし、「王子じゃなくなったって、どういうこと」と焦る。
「言葉そのままの意味だ。俺は勇者になったから、ほぼ確実に臣籍降下される予定ではあったんだ」
フラエの中の錆びついた王室典範知識を総動員する。そういえば、そういう規則があったような、なかったような。
「勇者は政に干渉せず、また政も勇者に干渉しない……」
「まあ、そういうことだ。実際には、そう簡単な事情ではないが」
頷くグノシスに、「そっか~」と他人事のような言葉が漏れた。グノシスは、それにむっとしたように片眉を上げる。
「お前も俺と来るんだぞ」
また知らない話が出てきたので、フラエは咄嗟に手を挙げた。発言を求めるフラエに、グノシスは頷いて発言を許す。
「その『一緒に行く』って、どういうこと?」
「俺は公爵位に叙された。その配偶者として来るんだ」
それはあまりにも、情緒のないプロポーズの言葉だった。さすがのフラエも、腹を抱えて笑い出してしまった。何度もベッドを叩く彼を、グノシスはきょとんとした顔で見ている。
「あなたって人は、本当に……」
ひー、と笑いすぎて出た涙を拭って、フラエはベッドにだらりと上半身を預けた。ひくひくと震えるフラエに、グノシスがそっと覆いかぶさる。身体にのしかかったりしない辺りに、フラエの腹部に対する配慮が窺えた。
フラエは彼の首に腕を巻き付け、「僕に言うこと、あるんじゃないの?」と笑い混じりに言った。グノシスは心底分からないようで、頭の上でうんうん唸っている。
本当に、この馬鹿は、どうしようもないのだ。フラエは「じゃあ、僕が言うからね」と、彼の額に口づけた。
「僕と結婚して」
その瞬間、グノシスの時が止まる。彼が顔を真っ赤にして、今更「ずるいぞ」と喚き始めたので、唇に噛みついて黙らせてやった。案の定大人しくなったので、これはしばらく有効な手段だろう。
「待て、俺が先に言ったんだ」
「言っていないよ。配偶者として一緒に来るんだ、って事後報告しただけ」
減らず口にまたキスをして黙らせる。面白いほど真っ赤になるグノシスに、フラエは笑った。案外結婚生活とやらも、この調子で上手くいくんじゃないかと楽観的に考える。これはグノシスのがうつったな、とフラエは思った。
それからずっと言い損ねていたことがあったので、ここぞとばかりに口にする。
「二十五歳の誕生日、おめでとう。誕生日の贈り物は、僕でいい?」
グノシスは顔をもっと真っ赤にして「ずるい」「卑怯だ」と喚きながら、フラエを抱きしめた。そして顔中に唇を落とし、「愛してる」と負け惜しみのように囁く。
「うん。知ってる」
フラエは得意げに笑って、グノシスの唇に口づけた。二人はそのまま体温を分け合うように寄り添っていた。
春の日差しはだんだんと黄色くなり、二人を優しく包む。春の風に乗って、どこからか花の甘い香りがした。
見舞い客もミスミとディール以外、誰も来ない。フラエは自分の交友関係が広いとは全く思っていないので取り立てて凹んだりはしないが(研究所の同僚たちにはちょっと来てほしかった)、手持無沙汰であることは変わりない。
手は治癒魔術のおかげですっかりよくなったのに、研究の続きをすることも許されなかった。なので最近のフラエは、黙々と刺繍に取り組んでいる。手っ取り早く暇が潰せて、教本と道具を簡単に揃えてもらえるのが、これくらいしかなかったのだ。
刺繍の木枠に下絵を描き、ちくちくと縫っていく。縫い方がどうの、縫い目がどうの、と教本を一ページずつ確認していくのは、悪くない時間だ。
何を縫うという具体的な考えは浮かばない。教本に載っている図案を縫ってみて、上手くできたら次の図案に取り組む。
そうしているうちに、刺繍の入った布が(縫い損じた物含め)何枚かできてしまった。初心者にしてはかなり上出来なのではないだろうか、とフラエは密かにうぬぼれた。ベッドに座って夢中で布と糸と格闘していると、扉がノックされる。
「どうぞ」
一瞥もせず入室を許すと、扉が開いた。足音がフラエの耳に届く。それは靴底の分厚い大きな靴が、ゆっくりと、堂々と、一歩一歩近づいてくる音だった。
だからフラエには、それが誰なのか見なくても分かった。のんびりと針を置く場所を探していると、「フラエ」と、甘く掠れた声が上から降ってくる。
「遅かったね」
グノシスに見向きもせずに言うと、彼の大きな手が刺繍の木枠を取り上げてしまった。針は糸から外され、几帳面に針山へと刺される。
フラエが文句を言う前に、その大きな身体で抱きしめられる。遅くなった、と彼から素直に謝られると、妙に胸や腹の辺りがむずむずした。
「いいよ、別に。あなたも頑張ってたんだろうし」
許してみせると、獣が懐くようにグノシスが頬を寄せる。フラエは内心かつてない距離の近さに動揺していたのだが、それよりも彼の胸の音がうるさくて、笑ってしまった。
「フラエだ」
グノシスは熱に浮かされたようにそう言って、フラエを見つめた。頬に手を当ててその輪郭をなぞり、「迎えにきたんだ」と囁く。うん、と頷いてみせると、彼はベッドサイドの椅子に座った。フラエは少し残酷な気分になってしまって、「グノシス」と密やかに呟いた。
「僕、そういうことをするのに、あなたがはじめてってわけじゃないんだ」
うん、と彼は頷いた。それに追い打ちをかけるように、フラエは言う。
「僕はヌメリツタの精液で種子を生んでる。新品じゃないよ」
フラエの露悪的な物言いに、ううん、とグノシスは首を横に振った。フラエは頬に添えられた彼の手を握り、頬ずりをする。じっと彼を見つめて、言葉を促した。
グノシスは心底愛しい者を見る目でフラエを見ており、そこには軽蔑の色も憐れみの色もなかった。ただ、悲しみの色があった。
「身体は大事にしてくれ。……だけどフラエがそう言ってくれるくらい、俺に心を許してくれて、嬉しい」
「ふしだらって言わないの?」
からかうように言えば、グノシスは「まさか」と気まずそうにした。あれは、と言い訳がましく口を開く。
「あの頃は……若かったんだ。結婚もせずそういうことをするのを、お互いの価値を軽んじることだと思っていた」
フラエはじっと、彼の手に頬を寄せたまま、言葉を待つ。グノシスはしばらく唸った後、やっと言葉を選び終わって、フラエの方を見た。
「お前の一世一代の言葉と行いを、軽んじてしまった。すまなかった」
「許さないから」
突き放すように言いつつ、その手は離さない。やがて指と指が絡んで、二人は固く手を結んだ。自然と二人の顔が近づき、フラエは蕩けるように笑った。
「でもキスしてくれたら、許す」
そして目を瞑ったフラエに、グノシスは口づけた。何度も唇を擦り合わせ、やわらかい感触を楽しむ。それだけで、二人はうっとりしてしまった。
触れるだけのキスは、やがてフラエが彼の唇を食んだことで均衡が破られる。グノシスは驚いて口を薄く開け、フラエはその隙を逃さずに舌を彼の咥内へといれた。
「ん、……ふ」
ぴちゃ、と淫靡な水音が立ち、慌てたグノシスに引きはがされる。フラエは文句を言ってやろうかと思ったが、彼の顔があまりにも真っ赤だったので口をつぐんだ。
「にっ、荷物を、お前のものを廊下にまとめてある」
グノシスは慌てて立ち上がり、廊下に目配せをする。フラエはここで、ひとつの違和感に気づいた。
「侍従の人たちは?」
「俺は王子ではなくなったので、いない」
はぁ? と呆気に取られるフラエに、面倒くさそうにグノシスは頭を掻いた。フラエはその肩を揺らし、「王子じゃなくなったって、どういうこと」と焦る。
「言葉そのままの意味だ。俺は勇者になったから、ほぼ確実に臣籍降下される予定ではあったんだ」
フラエの中の錆びついた王室典範知識を総動員する。そういえば、そういう規則があったような、なかったような。
「勇者は政に干渉せず、また政も勇者に干渉しない……」
「まあ、そういうことだ。実際には、そう簡単な事情ではないが」
頷くグノシスに、「そっか~」と他人事のような言葉が漏れた。グノシスは、それにむっとしたように片眉を上げる。
「お前も俺と来るんだぞ」
また知らない話が出てきたので、フラエは咄嗟に手を挙げた。発言を求めるフラエに、グノシスは頷いて発言を許す。
「その『一緒に行く』って、どういうこと?」
「俺は公爵位に叙された。その配偶者として来るんだ」
それはあまりにも、情緒のないプロポーズの言葉だった。さすがのフラエも、腹を抱えて笑い出してしまった。何度もベッドを叩く彼を、グノシスはきょとんとした顔で見ている。
「あなたって人は、本当に……」
ひー、と笑いすぎて出た涙を拭って、フラエはベッドにだらりと上半身を預けた。ひくひくと震えるフラエに、グノシスがそっと覆いかぶさる。身体にのしかかったりしない辺りに、フラエの腹部に対する配慮が窺えた。
フラエは彼の首に腕を巻き付け、「僕に言うこと、あるんじゃないの?」と笑い混じりに言った。グノシスは心底分からないようで、頭の上でうんうん唸っている。
本当に、この馬鹿は、どうしようもないのだ。フラエは「じゃあ、僕が言うからね」と、彼の額に口づけた。
「僕と結婚して」
その瞬間、グノシスの時が止まる。彼が顔を真っ赤にして、今更「ずるいぞ」と喚き始めたので、唇に噛みついて黙らせてやった。案の定大人しくなったので、これはしばらく有効な手段だろう。
「待て、俺が先に言ったんだ」
「言っていないよ。配偶者として一緒に来るんだ、って事後報告しただけ」
減らず口にまたキスをして黙らせる。面白いほど真っ赤になるグノシスに、フラエは笑った。案外結婚生活とやらも、この調子で上手くいくんじゃないかと楽観的に考える。これはグノシスのがうつったな、とフラエは思った。
それからずっと言い損ねていたことがあったので、ここぞとばかりに口にする。
「二十五歳の誕生日、おめでとう。誕生日の贈り物は、僕でいい?」
グノシスは顔をもっと真っ赤にして「ずるい」「卑怯だ」と喚きながら、フラエを抱きしめた。そして顔中に唇を落とし、「愛してる」と負け惜しみのように囁く。
「うん。知ってる」
フラエは得意げに笑って、グノシスの唇に口づけた。二人はそのまま体温を分け合うように寄り添っていた。
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