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突然の告白
しおりを挟む「読んで分かりやすいのはこの本ですが、詳しく書かれているのはこちらの本です。でも、この本は専門用語が多くて少し取っ付きにくい印象があるかもしれません・・・」
「ふむ、流石図書委員だな。詳しくて助かる」
「いえ、先輩程では・・・」
その後、図書室にやってきた僕達は膨大な本の中から数冊手に取りあーだこーだと話をしていた。
雁染先輩は何故か僕の隣に腰掛け、先程から近い距離で話をしている。
正面に座ればいいのに、なんて思うが口に出すのも嫌味な感じがした。
「伊野瀬は本が好きなんだな。将来は司書か何かを目ざしているのか」
「・・・将来の事はあまり考えてないんです。でも、確かに本は好きだから。本に関する仕事につけたら楽しいだろうなとは思います」
僕がΩである事は雁染先輩には話していない。
Ωは職業選択の自由も少なく、殆どはαと番い子を妊娠したあと専業主夫として生活している者がほとんどだ。
就きたくてもΩを雇ってくれる会社なんて殆どないから。
「そうか、勿体ないな。伊野瀬ほど知識があるものなら俺だったら秘書として雇いたいくらいだが」
実家が太く、大企業の息子である雁染は学園卒業後会社を継ぐのだろう。
約束されたレールがある雁染と、不安定な人生の自分。まるで対比された存在のようだ。
「ははっ僕なんかじゃ、雁染先輩の秘書は務まりませんよ」
「そんな事は無い。伊野瀬もっと自分に自信を持て」
するりと項を撫であげられ思わず手をはらいのける。
「あ・・・」
「・・・悪かった。不快に思ったのならすまない」
「あ・・・いえ・・・びっくりしただけです・・・」
「・・・・・・伊野瀬。お前の第2性は何だ」
「・・・・・」
突然の質問に冷や汗が止まらない。
別に、先輩にΩだとバレて不味い事は無い。先輩はαだが風紀委員長だし、変なことをしてくるような人物でもない。
でも、本能的に答えたくなかった。
とはいえ、先程の反応でΩだと自白しているようなものだが。
この学園ではΩの番契約を推進してる影響で、Ωが首輪をすることは許されてないのだ。
「・・・人に・・・第2性を聞くのは・・・失礼ではありませんか・・・」
「すまない。気になって聞いてしまっただけだ。どうか、俺を嫌いにならないで欲しい」
Ωだとバレることは日常生活で危険にさらされるのと同じことだ。どんな輩に狙われるか分からない。
だからΩ達は抑制剤を飲んで第2性をひた隠しにする。番が出来るその日まで。
だからこんな質問をすること自体ありえないのだ。
そういったリスクを考えずに質問できる、それこそがアルファの傲慢さだ。
ふと、先輩を見れば酷く悲しげな表情で縋るようにこちらを見ていた。
まるで番に拒否されたαのように。
「せ・・・先輩を嫌いになるなんて・・・そんなことありません。でも、第2性を聞くのは良くないと思います・・・。すごく・・・センシティブな内容だし・・・」
「そうだな、俺が悪かった。伊野瀬の気分を害すような質問をしてしまったな。だが、もしも・・・もしもお前がΩなら、俺が守りたいと思ったんだ。俺はお前を特別に思ってる。伊野瀬にとって俺も・・・同じであって欲しいと願ってる」
突然の告白に驚いていれば先輩の手が僕の手に重なる。
「好きだ、お前の事がどうしようもなく」
僕は驚き、先輩の手を振り払うとその場を走り去った。脳内で匠の忠告が過ぎる。
「向こうはαなんだから、鈴に気があるかもしれないだろ」
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