36 / 56
36
しおりを挟むガブリエル殿下に手を取られ幸せな気持ちに包まれながらシャンパンを口にしようとした時・・・・・
「ガブリエル殿下ご機嫌麗しゅうございますわ。あら、無能、今日は壁の染みじゃ無いのね?ふふっ。その場所は “ 無能 “ には勿体無いわ。私と変わりなさい。」
と、ダメス様にくっ付きながらエスコートされ品なく顎をツンとあげたユレイア公爵令嬢がいた。ガブリエル殿下に変な挨拶をしながら、ダメス様を挟みセーラと3人並んでいる。その後ろにはイライザ侯爵令嬢諸々10人程が後ろからくっ付いてきている。相変わらずのくっつき虫だこと。思わず笑いそうになったじゃない・・・
「もう直ぐ、“ 無能 “ のたった一つの頼りだった、元・王家の皆様諸共この王都から追い出されるのよね。うふふふ。
聞けば、次なる王都はまだ復興の手も付けられていない荒れ果てた領地。あんな何の利もない丸裸の土地に移り住まなきゃならないなんて、可哀想ですわね! うっふふふふ。ねぇ?皆さん?」
と皆を流し見ると。ダメス様始め、くっつき虫全員がさもおかしい、と言わんばかりにクスクスと嘲笑しながら同意の言葉を口にする。
「あら、ユレイア様。こんな “ 無能 “ にはお似合いでしてよ? なあんにも無くって、あるのは災害の爪痕と、またあるかもしれない災害。
有能な私達ならばそんな堕ちた土地でも、有益な事が出来るのでしょうけれど。 わざわざそんな荒地から始める必要なんて無いもの。他の領地だって細々としたものよ?
食料さえ調達できるのかしら?アッハハハハハハ。」
と下品に大口を開けて笑いながら見下した目を向けてくるセーラ。
「そうねぇ、両手、両膝をついて『民と、ダメな王家、“ 無能 “ なワタクシめにどうか、食料をお与え下さい。王女殿下。』って、懇願するなら、我が父、新国王に私から声をかけても良いわよ?今の王領と公爵領だけからじゃ早速今年の冬から飢えるのではなくて? 何人の民草を失うのかしら?」
とクスクスと馬鹿にしながら楽しむ底意地の悪さを見せるユレイア公爵令嬢。心の貧しい人だ。もし、それが事実なら人の命を何だと思っているのか・・・・・
「さあ、手をついて懇願なさい。新王女となるこのわたくしに!」
鼻で笑いながら促してくるユレイア。
「ああ、そうだね。元婚約者として、生涯尽くすと言うなら私の方からも手を貸してあげなくは無いかな?君は、執務は完璧だからね。せいぜい役に立って貰おうか?私達がくだらない事に煩わされ無い様にね。」
「やぁだぁ、もーう。この “ 無能 “ を何十番目かの夫人にでもするのかと思ったじゃ無い。おこだよ?でも、要はこの “ 無能 “ の事を奴隷としてこき使うって事ね? 雑用係として。それだったら納得だわ。もう、公爵令嬢としても扱わなくても良いんだものね? うふふ、やったー。 」
と小躍りしそうなほど喜んでいる所悪いんだけど、そんな予定は無いわ。
「そんな、くだらない冗談は君たちの頭の中だけにしてくれないか。彼女は私が幸せにする予定なんだから。それに、君たち、いや新王女予定のそこの悪趣味な君。聞いてないの? 何の情報も得られなかったの?」
とクスリと笑いを漏らしてガブリエル殿下が悪ーい顔でユレイア様を含むダメス様とひっつき虫の皆を見遣る。
「君たち、 “ 無能 “ 何だね。」と見渡すと
「そんな “ 無能 “ な君たちに教えてあげるね?
分かれる国。現王領から向こうだけど、もう荒れ果ててなんていないよ。しかも、これから新王都以降、他の領地も整備され栄えて行くからね。この国の比ではなくね。
そろそろ、見せてくれるんじゃない?実際にではないけれど、“ 映像 “ としてね。」
とアイコンタクトを取ってくるガブリエル殿下。この頃には、私達だけじゃなくて周りに居る上位貴族達も私達に注目しており “ 向こう側 “ の貴族達は嘲りを載せた顔で。 “ こちら側 “ の者達は心配しながらも信頼のこもった眼差しを向けて来ていた。
そして、現両陛下、王子殿下達と我が公爵家の皆が集まっていた。
「ふふふ、ダメス様とくっつき虫の皆様。ああ、ユレイア様は新王女殿下でしたわね?失礼致しました。
皆様方には相変わらず新王陛下以下各家門の皆様方にはご心配、ご配慮頂き心より感謝申し上げます。」
と深々と渾身のカーテシーを披露する。
「この度、国を分つに当たっては何の準備もせずに至った訳ではございませんの。
だって、荒れ果てた土地ばかりで、ご心配通りに民を飢えさせる訳には参りませんもの。冬の糧食ばかりではなく、諸々の備えに災害防止・・・・・と既に、様々手を打ってございます。
国を分けたばかりに、新しい国の、貴族に関わらず全ての民が色々な意味で犠牲になってはいけませんものね。」と、好色大臣からダメス・ひっつき虫達、までを見渡す。笑顔の中に殺気をのせてღ
「実際に今お見せする事は流石に出来ませんけれど、先ほどガブリエル殿下からお話がありました “ 映像 “ でお見せしませわね。」と笑みを向けると “ 向こう側 “ の民様から
「「「「「ヒッ!・・・・・」」」」」と息を呑む音が聞こえる。
「では、ガブリエル皇子殿下と我が愛する姪っ子から紹介に預かった“新王都の映像“ と領地の映像を少しお見せしよう!」と現国王陛下の朗々たる声が響いた。
そうして、パリとニューヨークとこの世界が見事に融合した、美し過ぎる王都が映し出された。そこから新たな街道・・・・・と、秋には見事に実りを迎えるであろう領地の畑。夢の様な映像だった。
「さて、皆の者。安心して頂けたかな?___新、王国は何の憂も無い事を!」と誇らしげな顔の王陛下。
驚愕する “ 向こう側 “ の人々。
「そ、そんな。あんなの嘘よ!あり得ないわ!!ほんの1、2ヶ月前まで荒れ果てていたのを見たもの!!悔し紛れの大嘘よ!!!」と喚くセーラ
「そ、そうよ!あり得ないわ、“ 無能 “ なアンリと無能な王家が・・・・・こんな美しい街を、たった1、2ヶ月で造り上げるなんて。わたくし達でさえ出来ないことよ!! 映像とやらが本物かも分からないわ!」
「そうだ!! 我らの、術中に為す術も無く翻弄されておったのに。」
「信じる、信じないは自由だ。後ほど、見れば分かる。」とお父様が一言。
蒼白な “ 向こう側 “ の人々を見れてスッとした。
しかし、そんな自分の性格にすこーし、ほんの少しね?そう、ちょっぴり悲しみもある。でも、悔いはない
93
あなたにおすすめの小説
手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです
珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。
でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。
加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!
恋せよ恋
恋愛
結婚五年目。
誰もが羨む夫婦──フローレンスとジョシュアの平穏は、
三歳の娘がつぶやいた“たった一言”で崩れ落ちた。
「キャ...ス...といっしょ?」
キャス……?
その名を知るはずのない我が子が、どうして?
胸騒ぎはやがて確信へと変わる。
夫が隠し続けていた“女の影”が、
じわりと家族の中に染み出していた。
だがそれは、いま目の前の裏切りではない。
学園卒業の夜──婚約前の学園時代の“あの過ち”。
その一夜の結果は、静かに、確実に、
フローレンスの家族を壊しはじめていた。
愛しているのに疑ってしまう。
信じたいのに、信じられない。
夫は嘘をつき続け、女は影のように
フローレンスの生活に忍び寄る。
──私は、この結婚を守れるの?
──それとも、すべてを捨ててしまうべきなの?
秘密、裏切り、嫉妬、そして母としての戦い。
真実が暴かれたとき、愛は修復か、崩壊か──。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!
【完結/短編】いつか分かってもらえる、などと、思わないでくださいね?
雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
宮廷の夜会で婚約者候補から外されたアルフェニア。不勉強で怠惰な第三王子のジークフリードの冷たい言葉にも彼女は微動だにせず、冷静に反論を展開する。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる