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しおりを挟む“ 無能 “ と嘲っていた私の事、いや王家も “ 無能 “ だったわね。が映し出した映像を見て “ 向こう側 “ の人々は色を失くしていた。
正直スッとした。そんな自分に心が汚れたなと少しガッカリもしたけれど、まだギャーギャーと泣き喚くひっつき虫達を見ると、まあ、それくらい思っても良いかと思える。今までされた事を考えると、大した事ないね。
と、ぐだぐだ考えていたけれどダメス様の声に現実に戻って来た。
「ああ、まあそこそこやるじゃないか。だったら尚更、私の元で使ってやっても良い。妻には出来ないが、我が領地、この国の為、誠心誠意働かせてやろうじゃないか。
ずっと、私からの愛を欲して縋っていただろう? 気が向けば与えてやっても良い。もし子が生まれたなら、子供と共に私達に仕えれば良い。側にいる事を許そう。」
なんて奴なの?恥を知らない人だったなんて。こんな人の愛を乞い、傷ついていたなんて馬鹿みたい。前世の記憶が戻って良かった。こんなクズでダメダメな奴、気持ち悪くて鳥肌が立つ。何が悲しくてこんな奴の為に働くかっての。しかも、わたしたち、って言った。ダメスだけじゃなくてひっつき虫も含めて、って事でしょ?
やっと巡り会えたガブリエル殿下のためだったら、例え結婚出来なくても陰ながらでも役に立ちたいけれど。こんな国、こんな人たちに扱き使われるなんて、御免被るだわ!
「(ああー、ヤダヤダ)お言葉ですが、ダメス様の元でダメス様始め、ひっつき虫のお方達にまで、扱き使われるなんて私の予定にはございませんの。 セーラ様にも分かり易く言いますと
『まっぴら、ごめん。ごめんこうむる!』ですわ。
何が悲しくて、何年も馬鹿にされ、嘲り、笑われて来た人達に仕えなければなりませんの?
私の愛は、とっくにダメスさん、あなたの元にはありませんわ。むしろ、淑女にあるまじきですけれどあなた達の様な“ クズやろう “ とは縁が切れて清々致しました。
よって、ダメス、あなたの “ 愛 “ なんてお呼びじゃございませんし。お情けの愛、で与えられるかもしれない、子供と共に支えるのも、お側にいるのも、あり得ない未来。 辞退致しますわね。」
と、人生初、人々を睥睨した。冗談じゃない、そんな未来を我が子にまでさせるなんてあり得ないわ。
私が、イラつきながら、少しでも冷静でいようと努めていたら。
「ああ、良かった。アンリ。君が、そこのダメ男をまだ愛していたら、どうしようかと思ったよ。どうやら、本当にもう気持ちが無い、ようだね。安心したよ。」と蕩ける笑みをこちらに向けてくるガブリエル殿下
「っ・・・・・!!」ハッとした。私、ガブリエル殿下の前でなんて、なんて、顔。 鬼の様な形相だったに違いない。淑女の仮面が、飛んで行ってた!と言葉を失くしていると。
「いやですわ! “ 無能 “ ったら、なんて怖い顔なの? こわーーい!こんな鬼の様な、しかも “ 無能 “ な女なんか放っておいて私達とご一緒しましょう?」
さっきまで泣き喚いていたのに?気持ち悪い猫撫で声で胸を擦り付けながら上目遣いで見上げるセーラ。
「そうですわ! ガブリエル殿下にはこんな女よりも、王女となる私こそが相応しいですもの。」
と、こちらも泣き喚くと言うほどでは無いが大きな声を出していたとは思えない、恐らく自分では高貴で美しいと思っているであろうポーズを取った後、これまた無駄に立派なお胸様を押し付けるユレイア。(腹が立ったから敬称は、付けん!)
思わず、目を細める私・・・また、鬼になっているかもしれない
静かな焔を滾らせていると
「お母様?子供はマナーがきちんとしている子だけが参加出来る夜会なのですよね?
大人は、泣き喚いたり、破廉恥??な事を人前でしても、参加しても良いのですか? 追い出されないのですか?
今日の会話を聞いていると、今までも、オブラートに包まないストレートな侮辱を爵位関係無くお姉様にしていた様ですが・・・・・それは良いのですか?」
と、恐らく声を小さくしたつもり、のアレンの素直な子供の疑問がお母様に質問されている。
「・・・・・それはね、ゴニョゴニョ・・・・・」とお母様の困った声が吃っている。
「んーー、よく分かりませんが。それだったらお姉様が、珍しく使った“美しくない言葉“ とハッキリとしたお断りも、お相手のマナーと会話レベルに合わせているから大丈夫ですね。お姉様まで追い出されるかと、ボ、私、とっても心配してしまいました!」
と曇っていた表情がパアッと明るくなった。子供の素直な反応は、どんなお叱りよりも反省させられる。
「クスクス、そうだなアレン。本来ならば、このような会話は貴族ではあり得ない。でも、ハッキリと言わないと伝わらない時もある。でも、今回だけだぞ?
本来この様な振る舞いは、恥ずべき事だ。」と、2人の手を振り解いたガブリエル殿下。
「そして、本来、淑女の手を振り解く事もしてはいけないよ。でも、これも今日だけ特別だ。もう、2回目だからね。それに、普通のマナーあるレディは、勝手に人の腕、特に異性の腕、を掴んだり、身体の一部をあからさまに押し付けてきたりしないものだからね?」
とアレンにお話しする風だがしっかり釘を刺す殿下。
「「そんな、私はそんなつもりじゃ・・・」」と、目をウルウルさせて手を胸の前で組み見上げるユレイアとセーラ
「まあ、どんなつもりでも今後私に勝手に触れたら不敬で裁くよ。これでもロワイス帝国の第3皇子だ。ここが帝国じゃなくて良かったね。物理的に首が飛ぶよ?君たち。」と凍てつく視線を向ける殿下
「ダメス伯爵令息、だったね? “ 君の “ レディ達、しっかり手を繋いでおくんだね。
それと、これが一番大事何だけど。」と目力をグッと強めて
「私のアンリの事をいつまで君の婚約者の様に扱うのかな?先程聞いた通り、アンリは君への “ 情 “ さえも無い、と言っていたよね?それなのに、まだ、彼女が側に居てくれるとでも?ーー君は、その幸運を自ら手放したんだ。
己の未熟さを棚に上げて彼女を貶める事しか出来ないなんて紳士の風上にも置けないね。
君じゃ、アンリには役不足だよ。自分と合ったレベルの・・そこのレディ達を連れて自分のレベルで楽しむと良いよ。」
とダメス&ひっつき虫とその御一行を冷めた目で見ると会場の皆に向けて
「さあ、最後の夜会だ。楽しもう。」と声を上げた
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