37 / 57
自由になった人々 1
しおりを挟む必ず助ける!と言う思いを胸に森の中に分け入った私達。白狼獣人のアランとレオンの鼻も頼りに進んでいるが森に不慣れな奴隷商の者達が自由になった人々を連れて(何か台車?の様な物で通った轍が残っている)通った後なので下生えや木の枝が折れたりとそこまで難しい捜索では無いのだが間も無く陽が落ち始めるのだ、戦闘に慣れた者達も同行しているとは言え危険だ、少しでも早く見つけなければ。 通った跡は往きだけでなく引き返した分もある為奴隷商の者達は既に野営地に戻った後の様だ。
湖の周りは人も多くモンスター避けもあるが深めの森の中は夜になると何が起こるか分からない。もし怪我して血が流れていたらモンスターが引き寄せられてしまう、急がなきゃ。途中出てくるモンスターを倒しながらどうか彼らがモンスターに見つかっていません様に、と祈りつつ焦る気持ちを抑えながら進んで行く。もうかなり奥に入った様な気がするけれどどうなんだろう。 ハッ、ハッ、と息を切らしながらも何とか付いていく。出来るだけ静かにしないと・・・会敵する度に戦闘の分だけ時間がかかる、早く辿り着きたい、無事な姿を見たい。
こうして暫く進んで行くとモンスターの威嚇する唸り声が聞こえてきた、人の声もする。 皆でアイコンタクトを取り静かに素早く近付いて行くと、獣人や人間が約10人程固り、薄らとではあるが結界の様な物が張られているようだ。だがその頼みの結界も揺らぎ消えようとしている。
そして狼獣人だろうか傷だらけの身体で棒を手に持ち戦っている。だがその傷付いた身体では威力も無く3頭のモンスター相手に苦戦していたようで咆哮と共に殴り飛ばされてしまった。
また迫って行くモンスターとその狼獣人の間に白狼獣人とレオンが半獣化して飛び込んだ。 そして剣で応戦していく。他の結界内にいる人々の前に付いて来てくれたスタッフが立ち残りの2頭のモンスターから守り戦い始めた。
やっとの事で私も辿り着き消えそうな結界を張り直す。
そして、そこに居る人達を見てみると皆酷い有様だった。手足が欠けている者や深い傷を負った者が殆どだった。戦っている者も左手を失い片手で戦っていたようだ。 欠損だけで無いその状態に涙が出る、でも泣いている場合では無い。 流れる涙はそのままに生命維持に必要な分だけでもと癒していく。そうして、応急処置をしていると・・・
「すまん、此方も頼む。」と掠れた声が聞こえた
その腕には、瀕死の黒狼獣人が抱かれている。どうやら先程戦っていて殴り飛ばされた方の様で近くで見ると女性だと分かった。浅い呼吸で右手はダラリと垂れている。
診てみると腹部の傷が1番深い様でかなり出血している。この傷は先程付いたと言うより元々あった傷に見える、そこが戦闘で開きより深くなったのだろう。先ず出血から止めヒールを掛けていくが消耗が大きく命の灯火は小さい。
「レイラ、お願いだ目を開けてくれ・・・頼むレイラ、いかないで・・愛しているんだ。」
血の気を失い冷たい彼女の手を握り震える声で話しかける白狼獣人の彼。その頬に流れる涙の想いが彼女へ届きます様に彼女の力となります様に。彼女、レイラが必ず助かるとは言ってあげられないが何とか助かって欲しい、助けるんだ、と気持ちを込め癒しの力ヒールをかける。
他の残りの2頭のモンスターも倒した様だ、レオンと他のメンバーが戻って来た。 ルームに戻って更に手当していきたい。ルームを開き、衰弱している皆んなを魔法で運ぶ。そしてお父様とお母様にも手伝って貰いながら癒しの力を使っていく。2人は神獣でもあるし大きな力を持っている。そこにレオンと私に “ 越後屋 “ の皆んな 一丸となって動く、ここはさながら救急外来の様相だ。 緊迫していた空気が少し和らいで来た。
1番重症だったレイラの顔色も土気色から青白い程度に戻って来た。冷たかった手も身体も少し温もりを感じられる様になって来た。 まだ、絶対とは言えないが峠は越した。
238
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
私達、婚約破棄しましょう
アリス
恋愛
余命宣告を受けたエニシダは最後は自由に生きようと婚約破棄をすることを決意する。
婚約者には愛する人がいる。
彼女との幸せを願い、エニシダは残りの人生は旅をしようと家を出る。
婚約者からも家族からも愛されない彼女は最後くらい好きに生きたかった。
だが、なぜか婚約者は彼女を追いかけ……
私は彼に選ばれなかった令嬢。なら、自分の思う通りに生きますわ
みゅー
恋愛
私の名前はアレクサンドラ・デュカス。
婚約者の座は得たのに、愛されたのは別の令嬢。社交界の噂に翻弄され、命の危険にさらされ絶望の淵で私は前世の記憶を思い出した。
これは、誰かに決められた物語。ならば私は、自分の手で運命を変える。
愛も権力も裏切りも、すべて巻き込み、私は私の道を生きてみせる。
毎日20時30分に投稿
好きでした、婚約破棄を受け入れます
たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……?
※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。
私たちの離婚幸福論
桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる