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ラスティの春 6 までの私達

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本隊が待つ地点へと帰ってきた私達。そこには、お母様をはじめとして主だったメンバーが外で待っていた。

「「「「「「「「お帰りなさい!」」」」」」」」

「「「「「「「「「ただいま・・・」」」」」」」」」

との言葉の後は互いを抱きしめ合う皆んなだった。今回、私たちに危険が迫った事を皆分かっていた様だ。お母様は察知したのだろうし、他の皆も絆と能力により察知したようだ。

今回、同行していたメンバーの近しい者以外は心配しながらも周りで見守ってくれている。


私達の無事を確認し私の頬を両手で包み頭から身体を確認するかの様に触れた後、抱きしめ涙したお母様。

「無事で良かった、ブラン・・・」

ひとしきり、抱きしめた後、お父様とお母様が静かに抱きしめ合って無事を確かめ合っている姿に涙が出た。
2人は、お母様が前世の生を終えるまで離れていて、お父様は神界の狭間の空間でずっと待っていた。お母様がどんなに大変でも助ける事も、声をかける事すらも出来かった。文字通り見守る事しか出来なかったお父様は言葉に出来ない辛さがあったのだ。

今では2人とも神獣となり大体の事が大丈夫、と分かっていても絶対は無い。繋がりがあり大まかな感情や状態がわかるのだ。今回は、大きな危険が迫った事が伝わっていた為、危機が去ったと伝わってからも心配していたのだ。

お互いを大切に慈しみ合うその姿に涙が流れて仕方無かった。その抱き締める腕が、瞳が・・・全てに優しい想いと愛しいと言う深い感情が溢れている。

一緒に居られる “ 今 “ をとても大切にしている事が伝わってきてキュウっと胸が切なくなった。こんなに深く想い合っている2人が離れ離れでお互いを想いながら過ごしていた事が胸に迫った。だからこそ “ 今 “ を大切に出来るのだろうとは思うけれどそれでも切なかった。


でも、“ 今 “ は幸せな2人だから良いか・・・


ふと視線を移すとアランとレイラがお互いを離さないと言わんばかりに強く、強く抱きしめ合っていた。レイラがアランへ向ける“ 心配した、帰って来てくれてありがとう “ と。“ 愛してる “ の気持ち・・声にならない声が聞こえる。その瞳が語っていた。溢れる涙が万感の想いを伝えている。

アランからも “ 心配かけた、ごめんな、とただいま “ が伝わる。大切にそして力強く抱き締める腕も “ 愛している“ と語っている。


そして、こちらは一緒に行っていたメンバーだったけれど改めて本隊と合流して本当の意味で安心したのか。少し離れた場所で雪豹のシャーリィと黒豹のレンが額と額をくっつけ愛しげに見つめ合っている。そして、頬と頬を擦り寄せ “ 愛してる “ と伝え合っているのが見てとれた。 私の胸までキュンとくる。

更に目を移せば黒狼のラスティがモモンガ獣人のモリーと森の中に少し入った所で倒れた木に少しだけ間を空けて腰掛け、何やら見つめ合い初々しい感じで話している・・・愛の告白か?きっと、告白だ。

あの時の私を、皆んなを守ろうとしつつもモリーも守りたい!と言うラスティの気持ちが痛いほど伝わって来たもの。命をかけて守ろうとする強い眼差し、凄かった。その気迫だけで守られた気がした。慈しみに満ちたモリーの優しい気持ちもオーラとなって包んでくれていた。

そんな2人の “ 恋 “ の始まり、と言うか恋は始まっていただろうけれど互いに伝え合ってこれから2人で歩んで行くんだろう始まり・・・腰掛けていた2人の距離が縮まり寄り添い合う様子に上手くいったんだなと感じる。


はぁーーー、と皆の “ 愛してる “ を摂取して胸が一杯になった。キュン死しそうだ。沢山の愛を摂取して幸せにうっかりひっくり返りそうになった時そっと支えてくれる腕に更に幸せを感じる。

今は、独りで耐えなくて良い。今も昔も私を支えてくれているレオンだけれど、影からではなくて直ぐ傍にいて貰える。なんて幸せなんだろう。えっと、あの頃の婚約者の名前、顔も、思い出せないな・・・婚約破棄してくれて良かった。 

前世通してあんな上っ面しか無い男の為に流す涙は勿体無い、あんな人の手に縋るなんて嫌だ。もう求めることも無い・・・としみじみと今の幸せを噛みしめる。



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