49 / 57
ラスティの春 6 までの私達
しおりを挟む本隊が待つ地点へと帰ってきた私達。そこには、お母様をはじめとして主だったメンバーが外で待っていた。
「「「「「「「「お帰りなさい!」」」」」」」」
「「「「「「「「「ただいま・・・」」」」」」」」」
との言葉の後は互いを抱きしめ合う皆んなだった。今回、私たちに危険が迫った事を皆分かっていた様だ。お母様は察知したのだろうし、他の皆も絆と能力により察知したようだ。
今回、同行していたメンバーの近しい者以外は心配しながらも周りで見守ってくれている。
私達の無事を確認し私の頬を両手で包み頭から身体を確認するかの様に触れた後、抱きしめ涙したお母様。
「無事で良かった、ブラン・・・」
ひとしきり、抱きしめた後、お父様とお母様が静かに抱きしめ合って無事を確かめ合っている姿に涙が出た。
2人は、お母様が前世の生を終えるまで離れていて、お父様は神界の狭間の空間でずっと待っていた。お母様がどんなに大変でも助ける事も、声をかける事すらも出来かった。文字通り見守る事しか出来なかったお父様は言葉に出来ない辛さがあったのだ。
今では2人とも神獣となり大体の事が大丈夫、と分かっていても絶対は無い。繋がりがあり大まかな感情や状態がわかるのだ。今回は、大きな危険が迫った事が伝わっていた為、危機が去ったと伝わってからも心配していたのだ。
お互いを大切に慈しみ合うその姿に涙が流れて仕方無かった。その抱き締める腕が、瞳が・・・全てに優しい想いと愛しいと言う深い感情が溢れている。
一緒に居られる “ 今 “ をとても大切にしている事が伝わってきてキュウっと胸が切なくなった。こんなに深く想い合っている2人が離れ離れでお互いを想いながら過ごしていた事が胸に迫った。だからこそ “ 今 “ を大切に出来るのだろうとは思うけれどそれでも切なかった。
でも、“ 今 “ は幸せな2人だから良いか・・・
ふと視線を移すとアランとレイラがお互いを離さないと言わんばかりに強く、強く抱きしめ合っていた。レイラがアランへ向ける“ 心配した、帰って来てくれてありがとう “ と。“ 愛してる “ の気持ち・・声にならない声が聞こえる。その瞳が語っていた。溢れる涙が万感の想いを伝えている。
アランからも “ 心配かけた、ごめんな、とただいま “ が伝わる。大切にそして力強く抱き締める腕も “ 愛している“ と語っている。
そして、こちらは一緒に行っていたメンバーだったけれど改めて本隊と合流して本当の意味で安心したのか。少し離れた場所で雪豹のシャーリィと黒豹のレンが額と額をくっつけ愛しげに見つめ合っている。そして、頬と頬を擦り寄せ “ 愛してる “ と伝え合っているのが見てとれた。 私の胸までキュンとくる。
更に目を移せば黒狼のラスティがモモンガ獣人のモリーと森の中に少し入った所で倒れた木に少しだけ間を空けて腰掛け、何やら見つめ合い初々しい感じで話している・・・愛の告白か?きっと、告白だ。
あの時の私を、皆んなを守ろうとしつつもモリーも守りたい!と言うラスティの気持ちが痛いほど伝わって来たもの。命をかけて守ろうとする強い眼差し、凄かった。その気迫だけで守られた気がした。慈しみに満ちたモリーの優しい気持ちもオーラとなって包んでくれていた。
そんな2人の “ 恋 “ の始まり、と言うか恋は始まっていただろうけれど互いに伝え合ってこれから2人で歩んで行くんだろう始まり・・・腰掛けていた2人の距離が縮まり寄り添い合う様子に上手くいったんだなと感じる。
はぁーーー、と皆の “ 愛してる “ を摂取して胸が一杯になった。キュン死しそうだ。沢山の愛を摂取して幸せにうっかりひっくり返りそうになった時そっと支えてくれる腕に更に幸せを感じる。
今は、独りで耐えなくて良い。今も昔も私を支えてくれているレオンだけれど、影からではなくて直ぐ傍にいて貰える。なんて幸せなんだろう。えっと、あの頃の婚約者の名前、顔も、思い出せないな・・・婚約破棄してくれて良かった。
前世通してあんな上っ面しか無い男の為に流す涙は勿体無い、あんな人の手に縋るなんて嫌だ。もう求めることも無い・・・としみじみと今の幸せを噛みしめる。
203
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
私たちの離婚幸福論
桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
私達、婚約破棄しましょう
アリス
恋愛
余命宣告を受けたエニシダは最後は自由に生きようと婚約破棄をすることを決意する。
婚約者には愛する人がいる。
彼女との幸せを願い、エニシダは残りの人生は旅をしようと家を出る。
婚約者からも家族からも愛されない彼女は最後くらい好きに生きたかった。
だが、なぜか婚約者は彼女を追いかけ……
優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。
それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。
一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。
いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。
変わってしまったのは、いつだろう。
分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。
******************************************
こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏)
7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる