【R18】群青ニ歪ム偏愛ノ獣たち

皐月うしこ

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《序章》第0話:グレイス家の子どもたち

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巨大な鳥が翼を広げたような大地セイントバレーの胴体部分に位置するシュゼンハイド王国は、国土の三分の一を占めるフォンフェンの森と、神話の時代に神が降り立ったとされる神台メテオの山の恩恵を受けて平和に暮らしていた。国の南には海が広がり、かつて島があったとされるマザーランドの海底神殿伝説が残る。北はアルヴィド国が巨大な面積を誇っているが、現王妃ベロニカの故郷ということもあって今は友好条約が結ばれている。
それでも不穏な空気がぬぐい切れないのは、この世界に二つの種族が存在しているせいだろう。
人間と獣亜人。
わずか一種族でありながら知恵を開花させた人間は数を増やし、数多の種族の頂点に君臨している。人間は大地のほぼ全土に繁殖の範囲を広げ、文明や文化を各々に築き、その数で大地のほとんどを制圧した。一方、多数の種類が存在する獣亜人は受け継いだ獣の血を色濃く残し、独自の生態を守ってきたことで大地の大半を人間に譲る形となった。
何年、何百、何千年と繰り返される人間と獣亜人の領土争いの戦禍は随分ひどい。ところが、他種族との交戦がない獣亜人に比べ、人間同士は同じ種族であっても領土の奪い合いを好み、大地を炎で焼いて壊していく。戦争の歴史だけでみれば、獣亜人と人間との戦歴よりも人間と人間の激突の方がはるかに多く、その悲惨さは語るのもはばかられる。
人間同士でも和解が無理なもの、獣亜人とでは到底無理な話。
いつしか獣亜人は人間と共存共栄する道をあきらめ、それぞれの場所で住処を守って生きていくことにした。人間ももはや彼らの決めた領土を侵そうとはしない。それは暗黙の境界線。同じ世界に存在しながら違う道を歩んだ者同士、交わることのない日々を過ごしている。はずだった。


「ッ・・ぁ・・ヤッ」


獣亜人は人間と共存しない。


「~~っ、あぁ・・ヒッ・・ぁ」


まして、人間を番に持つことは絶対と言い切れるほどあり得ない。


「・・っンッ・・ァ・・っ」


百を超える種族がある獣亜人のどの種族の歴史をたどっても前歴はなく、いや、記録に残っていないだけかもしれないが、それでも公式に獣亜人が人間と愛を実らせた結果はどこにもない。
種族によって程度は様々だが、同じように言葉でコミュニケーションをとり、家族を持ち、愛する者を守り、文明や文化を持つ獣亜人であったとしても、外見は人間とは全然違う。獣の耳を持ち、尻尾を持ち、爪を持ち、牙を持つ。中には鱗のある種族、角を生やした種族、足のない種族、羽をもった種族など、その容姿は一言で表しにくい。
その影響もあってか、獣亜人と人間が交配に至ったとしても混血児が誕生することはない。
それこそ過去何千年と繰り返されてきた殺戮と凌辱の歴史のなかで、試みた実験はいくつもある。しかし成功した実例は世界が誕生してから今日にいたるまで、一例たりとも存在していない。
それが種族間の共存を遠くに追いやった原因の一つでもあるのだが、それはもはや遺伝子に刻まれた危機管理といってもいいだろう。獣亜人と人間は共に生きることは不可能だと。
そんなわけで、誰もが彼らを初めてみた時には驚愕と困惑の眼差しでその場に足を縫い付ける。


「待って・・ぁ・・ゼオラ・・ッ」

「んー、俺はずっと待ってやってるだろ?」

「そこばっ、かり・・ッん・・ァッ」


どこにでもいるような人間の女と、明らかに獣亜人だとわかる長い耳を持った男が三匹。
今はその内の一匹が、観衆のいない室内の天蓋付きベッドの上で全裸の女を背後から抱き寄せ、快楽に尖ったその胸の先端を指の腹で撫でまわしている。獣亜人には珍しい燕尾服を崩し、左手の中指部分だけが千切れた特殊な革手袋をはめている。先ほどからその指の腹で乳首を執拗にいじられて、女は快楽の声をあげているようだった。


「なんでも好きな褒美くれるって言ったのはリズだろ?」

「んっ・・ゼオラ、そう・・だけ、ど」

「リズが許してくれるところしか触ってないのに、まだ意地悪すんの?」

「・・・ッひ・・ぁ・・ァ」

「顔、こっち向けて。キスして」


背後から優しい顔で誘われて拒絶する理由はどこにもない。望みどおりに首を直角に曲げて、天井を仰ぎ見るようにリズは背後から顔をのぞかせる男の顔を拝む。
群青色の長い耳がせわしなく左右に揺れているのに、その金色の瞳は温かな陽射しのようにじっと降り注いでくる。「きれい」と思わず呟けば、その声に反応した獣の指がぐっとリズの首を掴んでその唇を貪っていた。


「ッぁ・・・ァッ」


長い舌が熱く口内を犯してくる。
酸素を取り込ませる気が、きっとないに違いない。


「ンッん~・・ぁ・・っ」


息を止めるのも限界だとキスの合間に鼻で呼吸をしようとした矢先、リズは胸に吸い付く甘い痺れに反応した。


「こら、ルオラ。いきなり吸い付いてはリズ様にご迷惑でしょう?」

「だってこんなに可愛い実を差し出されたら、誰でも口にふくんでみたくなるよ?」

「そこは否定しませんが、どうせならもっと熟した果実を口にしてみては?」

「シシオラってば、そういうとこあるよね」


じゃあ遠慮なく、と見えない顔が会話を終了させて足を持ち上げてくる。ついで、その中心に吸い付いた気配にリズは今度こそ体を大げさに反応させた。


「ァッ・・ぃヤッ、ぁ・・んっ」

「リズ様、何度も申し上げます通り、言葉の嘘は通用しません」

「っん、ンッぁ」

「声の高低、心拍、呼吸の乱れ、平常時と興奮時、それが恐怖なのか期待なのか。われわれ獣亜人のなかでも群青兎は特に聴力に優れておりますので、リズ様が全身で奏でる音のすべてで判断が可能です」

「ぃ・・くっ・・アッそ、れャぁ」

「嫌がることは決していたしません。いつでもリズ様の望みのままに」


丁寧に言葉をかけて近づいてくる気配が、胸に優しく触れてくる。
口内を犯すゼオラ、足の間で蜜をすするルオラ、胸の頂きにキスをおとすシシオラの三匹にかかれば「イヤ」も「イイ」もすべて暴かれて素直にさせられる。隠し事は無意味。そもそも隠す必要はどこにもない。彼らが本当に嫌がることをしたことは今まで一度もなく、未知の世界に導かれる恐怖さえもリズの歩幅に合わせてくれる。


「リズ様、指いれていい?」


舌だけでは舐め足りないルオラの声がねだるように聞こえてくる。


「ンッ・・ぁ・・」


ゼオラとのキスの隙間、その足はシシオラによってリズの答えをルオラに差し出していた。


「ふっぁ、ンッ・・はぁ・・ぁ」


右手の中指。ゼオラとは正反対の指の部分だけ革手袋が千切れているが、その指を使ってルオラはリズの膣内に侵入する。時間をかけてリズの反応を見ながら進んでくるその指は、もどかしさと羞恥をつれてリズの体温を上昇させていた。
三匹に見つめられて愛撫に悶える。
泣きたくなるほど恥ずかしい今も、与えられる快楽の刺激にどうでもよくなってくる。


「うん、リズ様、ここ触られるのすごく好きだよね」

「ァッ・・くっ、イクッぁ」

「いいよ。全部舐めとってあげるから気持ちよくなって」

「~~~~~~ッぁ」


ルオラの舌と指だけにいかされる。
喘ぎ声はゼオラの唇に奪われて、すがるように伸ばした腕はシシオラに絡めとられて封じられてしまった。のけぞる身体が背後のゼオラに全部の負担をかけて快楽をのみこんでいく。
それをどこか嬉しそうな顔で、三匹は同時にリズの体に唇を押し付けていた。


「はぁ・・・はぁ・・ぁ・・・ぁ」


余韻に肩で息をしながら解放されたリズの瞳が赤い顔で三匹を視界に映している。
おそろいの燕尾服をきた美しいイキモノ。兎のように長い耳をもつ彼らは俗に「群青兎=ブルーラビット」と呼ばれ、世にも美しい獣亜人として知られている。毛量が多く長い尻尾を含め、手足に群青色の毛を持っていることが名前の由来だが、ごくまれに真白のアルビノ種が誕生する。
目の前の彼らで言えば、シシオラとゼオラは群青という由来通りの色をしているが、ルオラは白の毛色をしている。
黄金色の瞳は三匹とも同じ。
千切った場所の違う黒い革手袋の下には鋭利な爪もある。キスのときは当たらないように配慮してくれているが、獲物を噛み千切る牙もある。特注の靴の内部も人間の足とは違う、空まで一瞬で高く飛ぶための脚力はお世辞にも人間らしいとはいいがたい。


「リズ様?」


シシオラが物足りなさそうに唇を結んだリズの気配に首をかしげる。


「してほしいことがあるのでしたら、声に出して仰ってくださらなければわかりません」

「っ・・ぅ」


右手の薬指だけ自分の指を見せているシシオラの手が頬を撫でる。
いちいち過剰反応をしたくはないのに、神経が敏感に跳ねる今の状況で平然を装う方が困難に等しい。第一、彼ら相手に快感を隠し通すほうが無理な話。


「指、じゃ・・たりな、い」


吐息に消える小さな声でも、彼らには十分な声量で届いたことだろう。


「じゃあ、俺からでいい?」


背後のゼオラが動く気配にリズもうなずく。
リズの愛蜜を舐めていたルオラが場所をゆずって、下半身の服を剥ぎ取ったゼオラがその位置に収まった。


「・・・ごほう、び」

「ん?」


挿入の前にゼオラは決まって頬ずりとキスを贈ってくる。細く編み込んだ長髪が絡みつくその長い耳が通り過ぎていく際に、リズはゼオラに約束の続きを告げる。


「ご褒美だから、ゼオラの好きに、して・・いいよ」


空気が笑った気がした。それでもリズにそれを確かめる術はない。


「ヒッぁ・・ぁ・・ッん・・・っ」


折り曲げられた足に脈打つゼオラのモノが突き刺さる。深くまで一気に突き刺さったそれは、入れるときとは全く違う感覚で引き抜かれていく。「好きにしてもいい」と告げたはずなのに、ゼオラが好きにしたのは最初の挿入だけで、そこからは反応をうかがうように優しいのだからどうしようもない。


「リズ」


真上から降り注ぐ声も腰を打ち付ける音も、心地よく響いて全身を溶かそうと迫ってくる。
金色に揺らめくゼオラの瞳に囚われた少女の顔が、いつから女として覚醒したのかはわからない。それはきっともう忘れるほど遠い昔。今から十四年も前に遡る。
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