【R18】サディスティックメイト

皐月うしこ

文字の大きさ
7 / 32
第2章:巡る記憶の回想

第1話:そもそもの話(2)

しおりを挟む
初めて三人と泉の桟橋で出会った日から今日まで丸三日。実に気の遠くなるような時間を過ごした身としては、是が非でも距離を縮めてもらいたかった。自分に出来ることがあるのなら、そう言って差し出した身に災厄が訪れるなど、降り出した雨は教えてくれない。
灰色に遮られる視界のように、未来は読めないから質(タチ)が悪い。

* * * * *

三日前。乃亜が三人と出会った日。
屋敷の女主人は、夜更けに突然帰宅するなり乃亜たち全員を呼び寄せた。
深紅の瞳に栗色の巻き毛。首筋が見えるほど頭上で丁寧にまとめ、黒と紫が混じったドレスを着て、瞳と同じ赤い宝石をあしらったアクセサリーを身につけている。一目で美人だと称される女は口にしていた煙管(キセル)を置いて、同じように美しい三人の男をじっと見つめていた。並んだ三人は何も言わない。そして彼女は視線の端に乃亜をとめると、ふっとわずかな笑みを浮かべてこう言った。


「泉に何を願ったのかはわからないけれど、得た形はよくわかった。異例ではあるが、真実であれば認めよう。こうして目の前に存在していることが事実なのだから」


その一言が、乃亜の人生を決定したと言っても過言ではない。


「新しく人生が与えられたと思って、この屋敷で過ごす余生を楽しむといい。ただし、全員同室でだ」


にこやかに笑ったその顔は、屋敷中の使用人に対しても命令遂行を強要し、三人と乃亜が必ず同室になるようにしろと告げて消えていった。
屋敷をあけることの多い女主人。
主人に代わって屋敷の権限を与えられた有能な執事は、その命令通りに三人と乃亜を同じ部屋に閉じ込めた。
朝も昼も夜も同じ。着替えも、寝食もすべて同じ。まさか同室にされるとは夢にも思っていなかった乃亜は茫然と与えられた部屋で立ち尽くし、これからどう過ごしていけばいいのかと途方にくれたことを覚えている。けれどその心配は必要なかった。


「全員同じ?」


冗談だろうと、悪い夢でも見ていると言いたげな斎磨の声に端を発する。


「ボクはかまいませんよ。自分が自由の身であれば」

「だろうな」

「別にオレも問題ないよ。閉じ込められるって言うのはちょっと勘弁だけど」


斎磨に続いて、萌樹も三織も難色を示す。
部屋に案内した執事はその視線を受けて、軽くお辞儀をしながら「お部屋がコチラというだけで、屋敷内でしたら出歩いていただいて結構です」と規約を述べた。
屋敷内。
金持ちの領主が道楽で建てたとしか思えない広さの屋敷。庭も含めていいのなら、それ相応の自由があるのと同じような響きを持っている。


「よかった。んじゃ、ま。オレは少し席を外すわ」

「でしたらボクも。斎磨はどうします?」

「俺に聞くか?」

「でしょうね」


乃亜を素通りして三人は案内されたばかりの部屋の扉を通過していく。
話の流れが見えずに呆然としていた乃亜が彼らを引き留めようと振り返るころには、誰も残っていなかった。


「嘘、でしょ」


一人で過ごすには広すぎる部屋に一人きり。
置き去りにされた身で一体何をしろというのか、持て余してしまうほど退屈な時間しか想像できない。部屋はソファーや本棚、お茶が出来るテーブルがあるリビングのような作りの部屋を中心に、右側には大きなベッドが一つあるだけのベッドルーム。左側にはバスルームを兼ねた簡易の水場が用意されている。
着替えるための部屋は別にあるらしいが、先ほど「着替えは適宜、お持ちいたします」と説明をされた感じでは、本当にすべてをこの部屋でまかなうつもりなのだろう。
仮に閉じ込められたとしても、どうにか生きていけるとはいえ、彼らが早々に脱出を試みるのも仕方がないのかもしれない。


「うーん」


しかし、困った。その表情は隠せるものではない。
見ず知らずの女といきなり同室を義務付けられれば、そういう反応になるのかもしれないが、それでも放置されるなんて考えもしなかった。


「どうなさいますか?」


執事に問われたたった一言。


「私はどうしたら」


どうしたらいいのかわからない。それが本音。仲がいいのか悪いのかもわからない三人を呼び戻す方法がわからなければ、呼び戻せたとしてもどう過ごせばいいのかわからない。
屋敷内で自由に過ごしていいのであれば、わざわざ部屋を一緒にした理由もわからない。
途方に暮れる返答しか出来ない乃亜に、屋敷を任された執事は軽く咳ばらいをしたあと、妙案を告げるように指をひとつ天に突き立てた。


「望む通りにしてみてはどうか、と」

「私の?」

「他に誰かいらっしゃいますか?」


眉をしかめて確認されるような目を向けられれば唸る他ない。


「望む通りと言われても・・・」

「先に伝えておきますが、食事は全員でとっていただきます」

「つまり、あの三人がそろわない限り食事はなし?」

「さようでございますね」


それが執事の言うことだろうか。ニコリと満面の笑みを向けてくる異様さが怖い。
この部屋で一人寂しく引きこもり続ける限り、飢え死にしていく未来が手に取るように見えてしまう。乃亜は「んんん」と曖昧に返事を濁して、やがて観念したのか、三人の姿を求めて屋敷内を探索することにした。

To be continued...
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

朔望大学医学部付属病院/ White Dictator

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
White Dictator______通称:『白衣の独裁者』 <ホワイト・ディクテイター> ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ 圧倒的な「実力」と「技術」で捩じ伏せ・現場を支配する凄腕たち。 ___ ごく僅かな一瞬の隙も逃さない神手の集まり。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

処理中です...