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閑話
【独白】Sideロイ~関係を持つ前~
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【Side ロイ】
ここ数日、二人の様子が明らかにおかしい。
二人っていうのはスヲンとランディ。大学時代から一緒に暮らしているし、もう十年近く連れ添っていれば好みも癖も全部答えられる。スヲンもランディも他人からどう見えてるかは知らないけど、ボクからしてみればわかりやすい。
つまり、ここ数日で二人が恋しちゃったってことはボクにバレバレってこと。
それも多分、同じ人。
「はぁ……あの二人がライバルとかまじ勘弁」
個室に設けられたデスクのパソコンを閉じ、座ったまま椅子を窓際まで寄せてクルクル回転させる。誰もいない専用のフロア。廊下を歩く人影があるとすれば、それは招待したスヲンかランディ以外にはありえない。あ、例外がいた。ボクの叔父さん。社長と言ったほうがいいかな。
今はカナコっていう日本人に夢中だけど、数年前まで本当に仕事一筋で、跡継ぎがいないからって理由で甥のボクにその矢をたてた。
別にそれはいい。働くのは好きだし、スヲンとランディと一緒にやらせてくれるならいいよっていう条件にも満足してる。
だけど、さ。ことごとく「婚約者候補」を送りつけてくるのは勘弁してほしかった。今回、日本からの研修生という大義名分……ボクも荷担したけど。その研修生がボクの新しい婚約者候補だったってわけ。
いや、自分が日本人のカナコを愛したからって、ボクまで日本に染めようとしてくるの強引すぎない?
「とはいえ、今回はまんまとやられた」
血は争えないと言うべきか。
ボクの家系は古くからあって、祖父の代で色々あったみたいだけど財産はそれなりにある。ただおかしなことに、運命の相手というのにすごくこだわってる。世襲制だから嫡子が家を継ぐという縛りはあれど、家柄とか育ちとか関係なく、運命の相手と添い遂げてきたらしい。
おかげで両親は絵に描いたように仲睦まじいし、いまでも付き合いたてかと思うくらいに初々しい部分がある。小さい頃は疑問に思わなかったそれも、社会に出れば異様だと気付いたけどね。
ボクも例にもれず反抗期はあって、両親を愛してはいるが、その在り方は受け入れがたいものがあった。
実の父親と母親は愛こそすべての精神の持ち主だから「いつか運命の人と出会えるわ」なんて夢見がちなことを言ってる。その割に母さんは何かと「この人がロイの運命だと思うの」とかって笑顔で見合いを勧めてくるんだから気が抜けない。
叔父さんは一族で唯一「運命は自分の手で掴むものだ。女も名誉も金も」とか言ってたくせに、カナコにあった途端、運命論者に成り代わった。
そのときのボクの目は、たぶん死んだ魚みたいだったと思う。
「運命とか、信じないし」
そう、信じない。
宇宙に行ける時代。デジタルで物事が整理され、あらゆる現象が科学的に証明される時代に運命とか馬鹿げてる。
マッチングアプリで適応、相性の有無を確認するような時代に、運命とか本気で信じてるのボクの一族くらいだと思うんだけど。
「でもなぁ。アヤは、なぁ。ずるい」
ズルいよ、あれは。
これは運命じゃなくて完全な策略だ。
「カナコの友人の娘はいい子だったから採用した。いじめるなよ!」
「女の子をいじめたことないし。ってか、そんな贔屓で雇用したとか本気で言ってないよね?」
「本気だ。ちなみに英語は喋れない」
「は?」
「ロイは日本語も話せるから問題ないだろう。来月にはそっちに送るからよろしくな」
「送るって、なに」
「何って決まってるだろ。日本の研修生だよ」
「仕事が出来る出来ない以前に、喋れないような子なんて論外。却下。カナコの株をあげようとしないで、もう少し真面目に働きなよ」
「おお、ロイからそんな言葉が聞ける日がくるなんて。俺は嬉しいぞ!」
「ボクは全然嬉しくない」
「じゃあな。次は日本で会おう」
そういって電話が切れた一ヶ月後、会社に向かう道すがらでアヤと出会った。
電話が切れてすぐは、あまりに馬鹿馬鹿しくて、スヲンとランディに丸投げしちゃえって感じで、仕事も生活も支えてあげてって言ったんだっけ……まあ、そこはさすがというべきか二人とも慣れたように受け入れてくれた。
「ハートン家の突発的な考えに今さら驚きも何もない」
「期限付きの荷物なんてまだ可愛いほうだ」
とかなんとか、不名誉なことを言われたような……でも問題なくアヤを受け入れたし、今のところ特別な何かは起こってない。はず。
定期的にアヤを見に行っているけど、困っている様子はなさそうだし、一生懸命会社に溶け込もうとしていて「可愛いな」とか思っちゃったくらいだし。真面目でひたむきって長所だよね。
「あー、滅茶苦茶にしたい」
ああいう生きるために必死で頑張ってるイキモノってギュってしたくなる。
例えばお気に入りの玩具を隠された犬とか、大好きなエサを取り上げられたハムスターとか、夢中になってそれしか見てなかったくせに「え?」って戸惑って、キョロキョロして、不安そうに潤んだ瞳で「知りませんか?」みたいにボクを見てくる瞬間とかたまらなくない?
昨日、二人とピザを食べてるときに、そういう気分になることがないか聞いてみた。
「歪んでるな」
「ロイの愛情表現ってどこで歪んだんだろうな」
ランディとスヲンがボクじゃないどこかを見ながら口先だけで相手をしてくれる。
「支配欲の成れの果てじゃないか?」
「ああ、一族の愛情を独り占めしすぎたせいか」
「そうかもな」
「ロイに運命認定される子が現れないことを祈ってるよ」
酷い。二人とも酷すぎる。
そのボクに運命認定された子は、二人の思い人だって知ったらどんな顔するのかな。あ、想像したらちょっと楽しい。ん、待てよ。こういうところが歪んでるってこと?
いや、普通でしょ。
「あ、カナコがアヤを抱いてる写真」
頻繁にカナコとのツーショット写真を送ってくる叔父から、珍しくカナコが赤ん坊を抱いている古い写真が送られてきた。
わざわざ探したらしい。一体これにどういう意図があるのか、想像しただけでも泣けてくる。たしかに可愛いし、送られてきて顔がにやけるくらいには嬉しいけど、叔父さんだけには絶対「アヤに惚れた」なんて知られたくないな。
なにが運命。完全に仕組まれた出会いだってわかってる。
だけど黒髪黒目の赤ちゃんって、そこにいるだけで可愛いから罪だね。
ほんと、ズルい。
「可愛いな。天使に見える」
「だから今も天使なのか」
「……」
なんでスヲンもランディもボクの携帯を覗いてるわけ。いつもなら「見て」ってお願いしても見てくれないくせに。
ボクが叔父さんからの写真を見せようとしても無視するくせに。これだよ。
最近ずっとこんな調子。
「アヤ」って名前を出すだけで過剰反応する二人って、本当、わかりやすすぎ。
ちなみに、二人ともこれで完全に隠しきれてると思ってるからね。スヲンもランディも、お互いに気づいてないと思ってるからね……いや、気づいてないのかもしれない。
恋は盲目っていうし、今は自分たちがどうやってアヤを落とそうかってことしか考えてないのかもしれない。
今朝もフラフラ出勤していったけど、アヤの通勤時間に合わせてる意識あるのかな。フレックスタイム制の意味なくない?
「あー、もう」
運命なんて信じたくないけど、あの二人が本気で動くなら、ボク自身もそろそろ観念しなくちゃいけない頃合いかも。
だってさ、ボクもアヤのことが好きだなって自覚しちゃったから。四六時中考えてるって、そういうことだと思うんだよね。自慢じゃないけど、一人の女性のことだけを寝てるときも起きてるときも考えたことなんかない。
いつも風景の一部だった。
綺麗とか可愛いとかスタイルはもちろん、家柄、才能、知名度、それぞれに特化した女性なんて一族総出で「運命演出」して送り込んでくるんだから、どっちかっていうとうんざり。女性不信や女性嫌いにならなかっただけ感謝してほしいくらいだよ、ほんと。
そんなボクが、最近ずっとアヤのことばかり考えてる。
「これで出会いがやらせだったらまじで落ち込む」
大都会のど真ん中で普段は素通りするような観光客に自分から声をかけただけでも意味不明なのに、それが一目で「あ、この子」って何かが告げたような感覚って、他になんて説明すればいいの。
そこからアヤが気になってしょうがないって、おかしいよ。魔法にかけられた気分。
一目惚れ。そんなんじゃない。
「あー……ほんと、この年で好きな人が出来るとか思ってなかった」
漠然と、将来は適当なところで手を打つんだと思ってた。
それなりに両親が納得するような相手で、それなりに自分も家庭を壊さずにいられる程度の相手を選ぶと思ってた。
恋とか、愛とか、運命とか。お花畑のような風習はボクの代で終わるんだと思ってた。
「くっそ、なんか悔しい」
アヤが好みのタイプかと聞かれたら違う。
見た目とかセンスとか、そういうのはむしろボク好みにいじりたいくらいに違う。
それなのに、毎日ストーカーみたいに観察しちゃう自分が怖い。
ボクを見つけたら「あっ」て嬉しそうな顔するくせに、ボクの回りを取り囲む女たちを見て「……あ」って寂しそうな顔する意味はなに!?
その顔が可愛くて、気になって、ついつい毎日のように同じ事をしちゃうんだけど。あ、叔父さんがいじめるなって言ってたのって、もしかしてこれ?
でもさ、何とも思ってない相手にあんな反応する?しなくない?
もしかして、アヤもボクのこと運命とか思ってる?
いや、待って。この思考回路ヤバい。ハートン一族の痛い歴史とか、受け継ぎたくないんだけど。
「………」
もう無意識にアヤと一緒に住む部屋探ししてるとかヤバい奴でしかなくない!?
どうしてボクは、またパソコン開けてるの!?
パソコン閉じて窓際まで移動したはずだよね。うん、した。たしかにさっき、椅子でクルクル回りながらこのループを終えようってしたはずだ。
「……あ、ここ。四人で住むのに凄くいいかも」
………うん、よし。契約しちゃおう。
そして引っ越そう。
もういいや。どう運んでも結果はきっと同じ未来を描いてるだろうから、それなら早々に受け入れてしまった方が話は早い。
スヲンとランディもアヤが好きなら、もう四人で暮らせばいい。
「戦うより共闘したほうが得られるものは大きいって決まってるし」
目指す獲物が同じであれば、わざわざ骨肉の争いをする必要はない。
ボクは支配欲以上に所有欲や独占欲が強いんだ。
欲しいと思ったものは、必ず手に入れるし、手に入れたら絶対手放さない。
それが一族に愛されて、欲しいものを全部与えられてきた副産物だって言うのなら願ったり叶ったりだよ。ワガママ、暴君、なんでも言えばいい。
二人ともいつまで隠すつもりなのか、誤魔化すつもりなのか知らないけど、ボクたち多分、とっくに手遅れ。
ここ数日、二人の様子が明らかにおかしい。
二人っていうのはスヲンとランディ。大学時代から一緒に暮らしているし、もう十年近く連れ添っていれば好みも癖も全部答えられる。スヲンもランディも他人からどう見えてるかは知らないけど、ボクからしてみればわかりやすい。
つまり、ここ数日で二人が恋しちゃったってことはボクにバレバレってこと。
それも多分、同じ人。
「はぁ……あの二人がライバルとかまじ勘弁」
個室に設けられたデスクのパソコンを閉じ、座ったまま椅子を窓際まで寄せてクルクル回転させる。誰もいない専用のフロア。廊下を歩く人影があるとすれば、それは招待したスヲンかランディ以外にはありえない。あ、例外がいた。ボクの叔父さん。社長と言ったほうがいいかな。
今はカナコっていう日本人に夢中だけど、数年前まで本当に仕事一筋で、跡継ぎがいないからって理由で甥のボクにその矢をたてた。
別にそれはいい。働くのは好きだし、スヲンとランディと一緒にやらせてくれるならいいよっていう条件にも満足してる。
だけど、さ。ことごとく「婚約者候補」を送りつけてくるのは勘弁してほしかった。今回、日本からの研修生という大義名分……ボクも荷担したけど。その研修生がボクの新しい婚約者候補だったってわけ。
いや、自分が日本人のカナコを愛したからって、ボクまで日本に染めようとしてくるの強引すぎない?
「とはいえ、今回はまんまとやられた」
血は争えないと言うべきか。
ボクの家系は古くからあって、祖父の代で色々あったみたいだけど財産はそれなりにある。ただおかしなことに、運命の相手というのにすごくこだわってる。世襲制だから嫡子が家を継ぐという縛りはあれど、家柄とか育ちとか関係なく、運命の相手と添い遂げてきたらしい。
おかげで両親は絵に描いたように仲睦まじいし、いまでも付き合いたてかと思うくらいに初々しい部分がある。小さい頃は疑問に思わなかったそれも、社会に出れば異様だと気付いたけどね。
ボクも例にもれず反抗期はあって、両親を愛してはいるが、その在り方は受け入れがたいものがあった。
実の父親と母親は愛こそすべての精神の持ち主だから「いつか運命の人と出会えるわ」なんて夢見がちなことを言ってる。その割に母さんは何かと「この人がロイの運命だと思うの」とかって笑顔で見合いを勧めてくるんだから気が抜けない。
叔父さんは一族で唯一「運命は自分の手で掴むものだ。女も名誉も金も」とか言ってたくせに、カナコにあった途端、運命論者に成り代わった。
そのときのボクの目は、たぶん死んだ魚みたいだったと思う。
「運命とか、信じないし」
そう、信じない。
宇宙に行ける時代。デジタルで物事が整理され、あらゆる現象が科学的に証明される時代に運命とか馬鹿げてる。
マッチングアプリで適応、相性の有無を確認するような時代に、運命とか本気で信じてるのボクの一族くらいだと思うんだけど。
「でもなぁ。アヤは、なぁ。ずるい」
ズルいよ、あれは。
これは運命じゃなくて完全な策略だ。
「カナコの友人の娘はいい子だったから採用した。いじめるなよ!」
「女の子をいじめたことないし。ってか、そんな贔屓で雇用したとか本気で言ってないよね?」
「本気だ。ちなみに英語は喋れない」
「は?」
「ロイは日本語も話せるから問題ないだろう。来月にはそっちに送るからよろしくな」
「送るって、なに」
「何って決まってるだろ。日本の研修生だよ」
「仕事が出来る出来ない以前に、喋れないような子なんて論外。却下。カナコの株をあげようとしないで、もう少し真面目に働きなよ」
「おお、ロイからそんな言葉が聞ける日がくるなんて。俺は嬉しいぞ!」
「ボクは全然嬉しくない」
「じゃあな。次は日本で会おう」
そういって電話が切れた一ヶ月後、会社に向かう道すがらでアヤと出会った。
電話が切れてすぐは、あまりに馬鹿馬鹿しくて、スヲンとランディに丸投げしちゃえって感じで、仕事も生活も支えてあげてって言ったんだっけ……まあ、そこはさすがというべきか二人とも慣れたように受け入れてくれた。
「ハートン家の突発的な考えに今さら驚きも何もない」
「期限付きの荷物なんてまだ可愛いほうだ」
とかなんとか、不名誉なことを言われたような……でも問題なくアヤを受け入れたし、今のところ特別な何かは起こってない。はず。
定期的にアヤを見に行っているけど、困っている様子はなさそうだし、一生懸命会社に溶け込もうとしていて「可愛いな」とか思っちゃったくらいだし。真面目でひたむきって長所だよね。
「あー、滅茶苦茶にしたい」
ああいう生きるために必死で頑張ってるイキモノってギュってしたくなる。
例えばお気に入りの玩具を隠された犬とか、大好きなエサを取り上げられたハムスターとか、夢中になってそれしか見てなかったくせに「え?」って戸惑って、キョロキョロして、不安そうに潤んだ瞳で「知りませんか?」みたいにボクを見てくる瞬間とかたまらなくない?
昨日、二人とピザを食べてるときに、そういう気分になることがないか聞いてみた。
「歪んでるな」
「ロイの愛情表現ってどこで歪んだんだろうな」
ランディとスヲンがボクじゃないどこかを見ながら口先だけで相手をしてくれる。
「支配欲の成れの果てじゃないか?」
「ああ、一族の愛情を独り占めしすぎたせいか」
「そうかもな」
「ロイに運命認定される子が現れないことを祈ってるよ」
酷い。二人とも酷すぎる。
そのボクに運命認定された子は、二人の思い人だって知ったらどんな顔するのかな。あ、想像したらちょっと楽しい。ん、待てよ。こういうところが歪んでるってこと?
いや、普通でしょ。
「あ、カナコがアヤを抱いてる写真」
頻繁にカナコとのツーショット写真を送ってくる叔父から、珍しくカナコが赤ん坊を抱いている古い写真が送られてきた。
わざわざ探したらしい。一体これにどういう意図があるのか、想像しただけでも泣けてくる。たしかに可愛いし、送られてきて顔がにやけるくらいには嬉しいけど、叔父さんだけには絶対「アヤに惚れた」なんて知られたくないな。
なにが運命。完全に仕組まれた出会いだってわかってる。
だけど黒髪黒目の赤ちゃんって、そこにいるだけで可愛いから罪だね。
ほんと、ズルい。
「可愛いな。天使に見える」
「だから今も天使なのか」
「……」
なんでスヲンもランディもボクの携帯を覗いてるわけ。いつもなら「見て」ってお願いしても見てくれないくせに。
ボクが叔父さんからの写真を見せようとしても無視するくせに。これだよ。
最近ずっとこんな調子。
「アヤ」って名前を出すだけで過剰反応する二人って、本当、わかりやすすぎ。
ちなみに、二人ともこれで完全に隠しきれてると思ってるからね。スヲンもランディも、お互いに気づいてないと思ってるからね……いや、気づいてないのかもしれない。
恋は盲目っていうし、今は自分たちがどうやってアヤを落とそうかってことしか考えてないのかもしれない。
今朝もフラフラ出勤していったけど、アヤの通勤時間に合わせてる意識あるのかな。フレックスタイム制の意味なくない?
「あー、もう」
運命なんて信じたくないけど、あの二人が本気で動くなら、ボク自身もそろそろ観念しなくちゃいけない頃合いかも。
だってさ、ボクもアヤのことが好きだなって自覚しちゃったから。四六時中考えてるって、そういうことだと思うんだよね。自慢じゃないけど、一人の女性のことだけを寝てるときも起きてるときも考えたことなんかない。
いつも風景の一部だった。
綺麗とか可愛いとかスタイルはもちろん、家柄、才能、知名度、それぞれに特化した女性なんて一族総出で「運命演出」して送り込んでくるんだから、どっちかっていうとうんざり。女性不信や女性嫌いにならなかっただけ感謝してほしいくらいだよ、ほんと。
そんなボクが、最近ずっとアヤのことばかり考えてる。
「これで出会いがやらせだったらまじで落ち込む」
大都会のど真ん中で普段は素通りするような観光客に自分から声をかけただけでも意味不明なのに、それが一目で「あ、この子」って何かが告げたような感覚って、他になんて説明すればいいの。
そこからアヤが気になってしょうがないって、おかしいよ。魔法にかけられた気分。
一目惚れ。そんなんじゃない。
「あー……ほんと、この年で好きな人が出来るとか思ってなかった」
漠然と、将来は適当なところで手を打つんだと思ってた。
それなりに両親が納得するような相手で、それなりに自分も家庭を壊さずにいられる程度の相手を選ぶと思ってた。
恋とか、愛とか、運命とか。お花畑のような風習はボクの代で終わるんだと思ってた。
「くっそ、なんか悔しい」
アヤが好みのタイプかと聞かれたら違う。
見た目とかセンスとか、そういうのはむしろボク好みにいじりたいくらいに違う。
それなのに、毎日ストーカーみたいに観察しちゃう自分が怖い。
ボクを見つけたら「あっ」て嬉しそうな顔するくせに、ボクの回りを取り囲む女たちを見て「……あ」って寂しそうな顔する意味はなに!?
その顔が可愛くて、気になって、ついつい毎日のように同じ事をしちゃうんだけど。あ、叔父さんがいじめるなって言ってたのって、もしかしてこれ?
でもさ、何とも思ってない相手にあんな反応する?しなくない?
もしかして、アヤもボクのこと運命とか思ってる?
いや、待って。この思考回路ヤバい。ハートン一族の痛い歴史とか、受け継ぎたくないんだけど。
「………」
もう無意識にアヤと一緒に住む部屋探ししてるとかヤバい奴でしかなくない!?
どうしてボクは、またパソコン開けてるの!?
パソコン閉じて窓際まで移動したはずだよね。うん、した。たしかにさっき、椅子でクルクル回りながらこのループを終えようってしたはずだ。
「……あ、ここ。四人で住むのに凄くいいかも」
………うん、よし。契約しちゃおう。
そして引っ越そう。
もういいや。どう運んでも結果はきっと同じ未来を描いてるだろうから、それなら早々に受け入れてしまった方が話は早い。
スヲンとランディもアヤが好きなら、もう四人で暮らせばいい。
「戦うより共闘したほうが得られるものは大きいって決まってるし」
目指す獲物が同じであれば、わざわざ骨肉の争いをする必要はない。
ボクは支配欲以上に所有欲や独占欲が強いんだ。
欲しいと思ったものは、必ず手に入れるし、手に入れたら絶対手放さない。
それが一族に愛されて、欲しいものを全部与えられてきた副産物だって言うのなら願ったり叶ったりだよ。ワガママ、暴君、なんでも言えばいい。
二人ともいつまで隠すつもりなのか、誤魔化すつもりなのか知らないけど、ボクたち多分、とっくに手遅れ。
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