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第五章 動き出す人々
第七十三話 交互に軋む体
しおりを挟む「ッ……はっぁ……はっ」
息切れと同時に現実が戻ってくる。さっきまでも現実世界だと思っていたのに、心地よく揺られていたときとはまるで違う。
いうなれば、嵐と同義。しがみつかなければ、あっという間に転覆して溺れてしまう。
「アヤ、おかえり。誰と繋がってるか思い出せた?」
「ろ、ぃ……ロイ、ろ……ッ……イッ」
「うん、正解。いい子にはご褒美をあげるね」
ご褒美の意味を知りたい。
辞書で調べて、自分の認識とあっている言葉かどうか調べたい。
全身が叩きつけられるほどの振動をどこに訴えればいいのか。アヤは唯一すがりつけるロイに腕を伸ばして、一緒に荒波に揉まれていく。
乗り越える波は高く、激しく、息の仕方も忘れそうになる。
「……ッく、イクッ…ぁ……やァッ…」
「いいよ、アヤ。一緒にいこう」
「~~~ッ、ぅん、イクッぃくぃ……ッ」
波打つ身体を強く抱き締められて果てる。
ロイの呼吸とひとつになって、心地よい疲労感に包まれる。
同じ体温、同じ鼓動。
酸素を求めて息を吸う唇まで、ロイと繋がることを望んでいた。
「………やっばぁ。めちゃくちゃ気持ちいい。幸せすぎる」
「ろ……ぃ…っ…ンッ」
名残惜しいのか、離れないロイの腕で微睡んでいた。
うとうとと、意識が朦朧としてくるが、やはりそれは残す彼氏たちの反感を買う。
「アヤ」
「……らん…でぃッ、ァ」
抜けていくロイと腰から入れ替わるランディの姿が近付いてくる。
だらけた足の中央に身体を滑らせて、腰を掴んで、ゆっくりと入り口を塞いでくる圧力に自然と身体が上へ逃げる。
「ヒッぁ…あ…ンッ」
まだ肩に手をかけたままのロイと腰をつかむランディのせいで、それは叶わなかった。恥骨同士が触れ合うほど距離を縮めた性器は、新たな欲を掘り起こす。
「~~~~っ、イッ…ぅ…あぁ」
たった一振。ロイが離れたのを確認するなり、力任せに腰を引き寄せたランディに神経がなぶられる。
思わず首を振って、無理だと告げたはずなのに、舌舐めずりしているランディには届かない。見えない振りをしているに違いない。
組み敷く彼女の泣き顔にそそられる性癖を持つのは、ロイだけではなかったことを思い出す。
「ら……ッく、ァッ…ランディ」
「なんだ?」
「……ヤッ、それ……ァッ…そ、にゃ」
「顔を隠すな」
「ダメッ…そ、こ、奥……それ以上、も…ヤッぁ、ダメ…っ……~~~~く」
顔の真横にある腕を真上から押さえつけてくるランディのせいで、自然と足が曲がり、さらに奥へとランディを誘ってしまった。
誰も届かない。ランディだけが貫ける場所。いつも敏感で、少しの痛みとこじ開けられる悦びに気が狂う場所。
「黙ってオレに犯されろ」
「~~~ッ、アアぁッ」
腰が浮いて、足が踊る。
押さえつけられた手首が折れそうなほど激しく繰り返される行為に、泣き声とも鳴き声ともつかない声が勝手にこぼれていく。
気を失ったほうが楽になれたかもしれない。それでも、一定の負荷を越えた圧力は逆に神経を呼び覚まして、ランディの行為を伝えてくる。
「……ッく、イクッ…いって、る……ランディ、ァッ…止まっ……ランっ~~」
野性的なキスに言葉ごと奪われて、何度目になるかわからない絶頂を身体に刻む。
それなのに止まらない。止めてくれない。
滲む世界がランディの首と鎖骨だけになったことを考えれば、等しくここはランディの腕で作られた檻の中だとわかる。
「ひゃッ……~~ぅ…く」
下半身が水浸しになっていく。
圧迫されて、掘り起こされた肉体が限界を訴えているせいだろう。ランディの出入りする道が掘削されていくたび、痙攣して麻痺していくのがわかる。
壊されるのだと呆然と理解するしかない。
「~~~ふっ…ぅ……ッ…く」
全身でランディにまとわりつく。こうしていれば、例え壊れてしまったとしてもランディと一体化できるかもしれない。
なんて、バカなことを考えるのか。自分でも笑ってしまいそうな、だけど、アヤは本気でランディとひとつになってもいいと思っていた。
「っ……らぅ、にゃ…ぁ…はぁ…はぁ…っ」
ランディの名前も上手に呼べない。
せっかく可愛いと言ってくれたのに、可愛い彼女であり続けたいのに。声が、顔が、不細工に歪んで息を止めていく。
「アヤ…っ…愛している」
「~~~ッ!?」
大事なものを触るように抱きしめて囁かないでほしい。
それだけで全部許せてしまう。腰が痛くて、全身がつらくて、もう止まってほしいと思っていたのに、ランディの暴虐のすべてを許してしまう。
欲望に任せて吐き出された熱を身体の奥深くで感じて、薄膜越しの向こうにある本物を求めて、わずかばかりの意識を手放しそうになる。
「……ぁ……スヲン……も…ッ」
「もう無理。は、聞いてやれない」
「ァッ……んに…っ……ぅ」
「参加しないで待っていたんだ。褒美くらいはもらってもいいだろ?」
軋む身体が、これ以上は無理だと泣いている。
三人の彼氏を持つ大変さを痛感するのは、こうして最後の一人まで手を抜いてくれない事態に陥ったとき。
「うーわ。スヲン、それどこで買ったの?」
「昼間に使ったバイブを調達した時に、ちょっとな」
興味津々といったロイの声に誘われた自分の好奇心の強さを呪いたい。
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