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冒険者ギルドとは
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「冒険者ギルドって、なんでまたそんな急に……」
魔王が復活する前からも、魔物はこの世界の住民達を脅かしていた。そんな魔物を退治する手段を持ち合わせているのが冒険者だ。
ブライアル周辺では、王宮騎士団が魔物討伐を行っているし、有力な貴族の領地でも同様だ。だが、ここ、ホルストの領主は力がなく、魔物の討伐は主に冒険者に依頼する形を取っている。
レミリアも冒険者ギルドのことはよく知っていた。かつて、聖女として王宮に呼ばれた時、国は冒険者達にも協力を求めたからだ。
実戦経験を積むために、冒険者達と一緒になってダンジョンの踏破に挑戦したこともあった。
最終的に魔王の前に立ったのは八人だが、そこに至るまでの間は冒険者達の協力があったからこそ、揃って魔王の前に立てたのである。
(ライムント様は、歴史から抹消されていない……だけど、今度は、彼を魔王討伐に行かせたくない)
そのためには、ライムント以上に強力な人間を魔王討伐に送り込めばいい。
それに、魔王は復活してから数年かけて力を蓄える。魔王がどこにいるのかさえ掴めれば、力をつける前に討伐することも可能だ。
となれば、冒険者ギルドで有力な冒険者についての情報や、魔王の復活に関わりそうな異変についての情報を集めるのが一番速い。
幸いに――と言えばいいだろうか。かつてレミリアが身に着けた力は、過去に戻った今もほとんど残っている。
魔力だけは全盛期ほどの量はないが、それだって修行でどうにかなるはずだ。
それにもう一つ。
あんな形で、ライムントとレミリアを殺すようなやつらにこの国の未来を託すわけにはいかない。復讐さえできれば、あとは野となれ山となれと突き放すほど非情にはなれないようだ。
(冒険者ギルドには、この世界の情報が集まっているから……冒険者ギルドで、情報を得られる立場になれば問題ないわよね)
冒険者達は、魔物の討伐を行うだけではない。
昔の魔王が残したと言われているダンジョンや、大昔の遺跡から発掘した魔道具の売買を行うことでもまた、彼らの生計は成り立っている。
そんな彼らを取りまとめ、魔道具の売買の仲介をしたり、素材の売買をしたりしている冒険者ギルドには、ありとあらゆる情報が集まるのだ。
復讐を終えたら、この町で平和に生きていければそれでいい。ベルナルドがいなくなれば、きっとライムントが新たな王太子となる。
それを遠くから見ていられれば、それだけで満足だ。
「だって、冒険者ギルドの職員なら安泰でしょう? いろいろ考えたんだけど……子供達のためにも、悪くないかなって」
「でもあなた、難しい字は読めないでしょうに。魔術語だって必要になるのよ」
「読めるようになったの。こっそり勉強していたから……計算も大丈夫」
前回、聖女になるまでのレミリアは、最低限の読み書きと計算くらいしかできなかった。
あの頃のレミリアが思い描いていた将来設計というのは、パン屋の手伝いをするか、魔道具の売買をしている店の手伝いをするか程度のものだった。この程度ならば、さほど知識がなくても務まる。
だが、王宮に行ってからはそれは通じなかった。
リンネルートに仕える神官や魔術師達が入れ替わり立ち代わり、レミリアに魔術の基礎を叩きこんだ。魔術の発動には、複雑な魔術式が必要となる。
女神の加護を受けていたレミリアは、それらを乾いた砂が水を吸収するような勢いで吸収していった。
十四歳に戻った今も、あの頃叩きこまれた知識は失われてはいない。
朝食を食べ終えるなり、レミリアは走るようにして冒険者ギルドに向かったのだった。
◇ ◇ ◇
魔王が復活する前からも、魔物はこの世界の住民達を脅かしていた。そんな魔物を退治する手段を持ち合わせているのが冒険者だ。
ブライアル周辺では、王宮騎士団が魔物討伐を行っているし、有力な貴族の領地でも同様だ。だが、ここ、ホルストの領主は力がなく、魔物の討伐は主に冒険者に依頼する形を取っている。
レミリアも冒険者ギルドのことはよく知っていた。かつて、聖女として王宮に呼ばれた時、国は冒険者達にも協力を求めたからだ。
実戦経験を積むために、冒険者達と一緒になってダンジョンの踏破に挑戦したこともあった。
最終的に魔王の前に立ったのは八人だが、そこに至るまでの間は冒険者達の協力があったからこそ、揃って魔王の前に立てたのである。
(ライムント様は、歴史から抹消されていない……だけど、今度は、彼を魔王討伐に行かせたくない)
そのためには、ライムント以上に強力な人間を魔王討伐に送り込めばいい。
それに、魔王は復活してから数年かけて力を蓄える。魔王がどこにいるのかさえ掴めれば、力をつける前に討伐することも可能だ。
となれば、冒険者ギルドで有力な冒険者についての情報や、魔王の復活に関わりそうな異変についての情報を集めるのが一番速い。
幸いに――と言えばいいだろうか。かつてレミリアが身に着けた力は、過去に戻った今もほとんど残っている。
魔力だけは全盛期ほどの量はないが、それだって修行でどうにかなるはずだ。
それにもう一つ。
あんな形で、ライムントとレミリアを殺すようなやつらにこの国の未来を託すわけにはいかない。復讐さえできれば、あとは野となれ山となれと突き放すほど非情にはなれないようだ。
(冒険者ギルドには、この世界の情報が集まっているから……冒険者ギルドで、情報を得られる立場になれば問題ないわよね)
冒険者達は、魔物の討伐を行うだけではない。
昔の魔王が残したと言われているダンジョンや、大昔の遺跡から発掘した魔道具の売買を行うことでもまた、彼らの生計は成り立っている。
そんな彼らを取りまとめ、魔道具の売買の仲介をしたり、素材の売買をしたりしている冒険者ギルドには、ありとあらゆる情報が集まるのだ。
復讐を終えたら、この町で平和に生きていければそれでいい。ベルナルドがいなくなれば、きっとライムントが新たな王太子となる。
それを遠くから見ていられれば、それだけで満足だ。
「だって、冒険者ギルドの職員なら安泰でしょう? いろいろ考えたんだけど……子供達のためにも、悪くないかなって」
「でもあなた、難しい字は読めないでしょうに。魔術語だって必要になるのよ」
「読めるようになったの。こっそり勉強していたから……計算も大丈夫」
前回、聖女になるまでのレミリアは、最低限の読み書きと計算くらいしかできなかった。
あの頃のレミリアが思い描いていた将来設計というのは、パン屋の手伝いをするか、魔道具の売買をしている店の手伝いをするか程度のものだった。この程度ならば、さほど知識がなくても務まる。
だが、王宮に行ってからはそれは通じなかった。
リンネルートに仕える神官や魔術師達が入れ替わり立ち代わり、レミリアに魔術の基礎を叩きこんだ。魔術の発動には、複雑な魔術式が必要となる。
女神の加護を受けていたレミリアは、それらを乾いた砂が水を吸収するような勢いで吸収していった。
十四歳に戻った今も、あの頃叩きこまれた知識は失われてはいない。
朝食を食べ終えるなり、レミリアは走るようにして冒険者ギルドに向かったのだった。
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