孤島に浮かぶ真実

平野耕一郎

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第二部

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 私が転校してから一週間が経った頃。新クラスの委員会決めを放課後に行う。委員会は学級委員、広報委員、図書委員、環境委員、などなど。中には風紀委員なんてものがあって、私は前の学校での規律の厳しさを思い出す。

 あのギスギスした空気、古びたがさついた机に座って私は授業を受ける。その最中、扉がガラリと開き、冷徹なまなざしをした女教師にクラスの一人が呼ばれる。少女はしおしおと教師の後を付いていく。理由は本人も分かっている。

 殺風景で冷凍庫のように冷え冷えとした厳しい空間で、私はしのぎを削っていた。毎日が地獄だった。だが今ではそんな心配をする必要はどこにもない。

 私は辺りを見渡し、今の環境が平穏であることをしみじみと感じる。

 クラスメートは十六名。これから全員が何らかの委員をやらされることになる。私は自分の好きな委員に手を上げるつもりだ。

 一人一人の顔を見ても、何の緊張感もない。温和な平和に包まれた顔。全員が幸せそうだった。

 穏やかな空気に包まれる中で、問題なく委員が決まっていくと思った。しかし最初の学級委員決めでちょっとした悶着が起きる。

 まず委員長に立候補したのは彩月だ。それに対し、一部のグループが妨害をする。リーダー格である少女、美作緑が全体の空気に抗うかのようにペチャクチャと近くの仲のいい女子と話し始める。

 おかげで一旦静まりかけたクラスが、無情にもざわざわとし出す。

 思い通りになりかけたクラスが違う方角を向きだしたとき、彩月が怒っていた。彼女は緑の机の前まで行き、バンッと机を叩いて強制的に会話をストップさせる。

 小柄な彩月の姿が倍になって目に焼き付いた。顔は凍り付いき、目は一点だけを見つめている。

「じゃ、あんたが学級委員やる?」

 目と目が合う……

「うちは別に、学級副委員長で、あんたに委員長をやらしてもいいけどさ」

 冷たい視線が降り注ぎ、周囲の気持ちを沈黙させる。人はみな、ただ彩月と緑を見守るしかなかった。

「文句があるなら言ってみな」

 高圧的な物言いに緑は折れた。ぷいっと顔を背け、何でも、とだけつぶやく。

「なら静かにしてな」

 彩月が緑を通してクラス全員に求めていたことを言い放った。彼女の意思は通った。委員決めは、淡々とした雰囲気の中で進められる。

 最初に学級副委員長、書記が決まり、次に広報委員などが決まっていく。私は図書委員に立候補したが、定員二に対し、三人が応募してじゃんけんになる。

 勝ったのが私と――悶着を起こした緑だった。

 彼女は、私に一目もくれずに席へ着いた。

 こうして全ての委員決めが終わった。表面的には何事もなかったように進み、クラス十六名が、二人一組になって各自の仕事を持つ。あとは流れるようにして解散になった。
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