孤島に浮かぶ真実

平野耕一郎

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第二部

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 翌日、試験最終日は雨だった。陽が雲で隠れ、少しだけ暑い気温を引き下げてくれて、涼しさを感じた。ただ晴れれば、ジメジメとした湿気が体を火照らすはずだ。海上に、雲の切れ端から陽が差し込んでいるから、すぐに雨は止んでしまうかもしれない。

 数学、物理、音楽。これが今日の試験日程だった。最終日ということもあって気抜けした感覚とも、戦わなくてはならなかった。

 無事試験は終了。今日から部活再会。試験期間になれば、休みになる部活も、また元通りになる。

 メイがやってきた。手に何かの資料を携えて。

「はい、これ。8月の部活の日程表と、合宿の資料!」

「合宿ぅー? えー行かない」

 彩月のたれた顔。

「ええぇぇーなんでー?」

 メイはオーバーに反応した。

「どこか行くの?」私は何ともなく聞いた。

「東京行って、そのままパパの別荘に行く」

「そう、なんだ」

「明美は? どっか行かないの?」

 私は、まだ予定はないとだけ言っておいた。

「あー別荘いいなあー。うらやまー」

「部活の合宿、新潟なんだー」

資料には、新潟県魚沼と書いてあった。

「は、絶対行かない!」

「来てよ、サッチーいないとつまんねえー」

「遠すぎでしょ? あーはいはい、行きません」

 島を出て1日。バスに乗って数時間。確かに、移動で大変だ。それに選抜の予選大会がある。今年は、ぜひ面影高等学校から一名でも予選に出場させ、あわよくば本線へというのが、学校側の気持ちらしい。

「ちぇ」

「明美さんにでも、構ってもらいな」

 彩月の態度はそっけない。東京か、私は前に住んでいた土地や家、あのごみごみしたあの密集地帯の情景を忘れかけていた。少なくとも、大勢の人間が窮屈そうに暮らす世界に私は興味を失いかけていた。

 今にも壊れそうな屋根瓦、わずか数センチばかりしか離れていない居住、モダンな、でも画一的な家々。それらは私に何の価値を与えたのだろうか?

 ただいつか私も大人になったら、この島を出ていくんだろう。ただ今は、そんなこと考えたくもない――色々なことは起こっているが。

 私はこの島の人間として生き人生を送っていきたい。それが心から感じた気持ちだ。
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