女子高生探偵:千影&柚葉

naomikoryo

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第1章:開かずのアパート

第31話:「松風荘、最後の潜入」

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——午後10時30分、松風荘の前。

 月明かりの下、廃れたアパートが静かにそびえ立っている。

 昼間とは違い、夜の松風荘はより一層、不気味な空気に包まれていた。

「……何度見ても、やっぱり気味が悪いね……」

 柚葉が小声で呟きながら、防弾チョッキの上からパーカーを引き締める。

「これが最後の潜入になるかもしれないわね」

 千影は警戒しながら、アパートの周囲を確認する。

 美咲も緊張した面持ちで、母親の痕跡を探すようにアパートを見つめていた。

「……お母さん、本当にここにいるのかな……?」

「分からない。でも、"先生"がここに呼びつけたということは、何か決定的なものがあるはずよ」

「……っ」

 美咲は不安を押し殺し、こくりと頷いた。

「じゃあ、行くよ……!」

 柚葉が拳を握る。

 千影は静かに頷き、慎重にアパートの入り口へと近づいた。


 ——松風荘・内部。

 古びた廊下は、まるで時間が止まったかのように静まり返っていた。

 だが、千影はすぐに異変に気づく。

「……明らかに、前と違うわね」

「えっ?」

「床を見て」

 千影が指差したのは、うっすらと残る靴の跡。

「……これって、最近ついた跡?」

「ええ。埃が積もっていない部分があるわ。誰かが頻繁に出入りしている証拠よ」

「やっぱり……"先生"たちが何か隠してるんだ……」

「ええ。用心して進むわよ」

 三人は息を潜めながら、アパートの奥へと進んでいった。

 ——そして、ついに地下室への扉の前に立つ。


 ——松風荘・地下室の前。

 古びた鉄の扉には、以前見た"立入禁止"の札がかかっていた。

 千影は静かにドアノブを握り、力を込めて回す——

 ——カチリ。

 「開いてる……!」

「前は閉まってたのに……?」

「中に誰かがいる可能性が高いわ」

 千影は静かに深呼吸し、慎重に扉を押し開ける。

 扉の向こうには、暗闇が広がっていた。

「電気……ないの?」

「ライトを使うわ」

 千影は小型のLEDライトを取り出し、地下室の内部を照らした。

 ——そこに広がっていたのは、想像以上の光景だった。


 ——松風荘・地下室内部。

 地下室は、普通のアパートの構造とは明らかに異なっていた。

 広いコンクリートの空間。

 壁には古びた棚が並び、埃の積もった書類や箱が無造作に置かれている。

 だが、もっと異様だったのは——

「……机?」

 部屋の奥には、簡易的なデスクと椅子が置かれていた。

 さらに、その机の上には、"何かの機械"が並んでいる。

「これって……」

 千影が慎重に近づき、機械のモニターを見る。

 そして——

「……防犯カメラの映像……?」

「えっ?」

 柚葉と美咲もモニターを覗き込む。

 そこに映っていたのは、松風荘の各部屋の映像。

「ま、まさか、ここ……"監視室"!?」

「……その可能性が高いわ」

 千影はモニターを操作し、録画データを確認する。

 そして、ある映像を再生した瞬間——

「……っ!」

 美咲の顔が青ざめる。

 映像の中には、一人の女性がいた。

「お母さん……!!!」

 美咲が思わず叫ぶ。

 映像の中で、美咲の母親・相原美沙は、暗い部屋の中で椅子に座らされ、手錠で拘束されていた。

「ど、どういうこと!? お母さん……生きてるの……!?」

「間違いないわ……"先生"は、美咲ちゃんのお母さんを囚えていたのよ……!」

 美咲の目には涙が滲む。

「お母さん……!」

「落ち着いて」

 千影は、映像の再生日時を確認する。

「……この映像、"昨日のもの"よ」

「ってことは……お母さん、まだこのどこかに……!」

「ええ。でも、"先生"が簡単に居場所を教えるわけがないわね」

「じゃあ、どうすれば……?」

 そのとき——

——ギィ……。

 背後の扉が、音を立てて開いた。

「……!!」

 千影は瞬時に振り返る。

 そこに立っていたのは——

黒いフードの男。

「やはり来たか……天野千影」

「……"先生"」

 低い声が響く。

 柚葉がすぐにナイフを構え、美咲は怯えながらも立ちすくむ。

「あなたが"先生"……?」

 美咲の震えた声に、フードの男は冷たく微笑んだ。

「私はただの"案内人"さ」

「……じゃあ、本当の"先生"は?」

「それは、"お前たちが導き出す答え"だ」

 千影は静かに、護身用のスプレーをポケットに忍ばせる。

「私たちをここに呼び寄せたのは、何のつもり?」

「簡単なことだ」

 男はゆっくりと歩み寄る。

「"お前たちがここで消えれば"、全ては終わる」

「……やっぱり、罠だったのね」

「さて——どうする?」

 フードの男が不気味な笑みを浮かべた次の瞬間——

——バンッ!!

 銃声が響いた。

「くっ……!!」

 千影たちはすぐに物陰へ飛び込む。

「やっぱり撃ってきた!?」

「……全員、冷静に動くわよ!」

 千影は柚葉と美咲を庇いながら、"反撃のチャンス"を狙った。

——"開かずのアパート"の地下室。
 そこでついに、"先生"との直接対決が始まる——。
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