俺様王子は女嫌い?!本当は一途すぎて幼馴染のキミしか見てない

naomikoryo

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第37話「君だけの“特別”になりたくて」

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――スタジオに響く、カメラのシャッター音。

白いライティングが眩しく、フロアの隅には番組スタッフが忙しく動いていた。
その中心に立っているのは、もちろんR+T。
 

地元の音楽フェスで話題となった2人は、
今や都内のキー局の情報番組の**「新人アーティスト特集」**の枠で取り上げられるまでになっていた。

 
凛音はスーツスタイルのアレンジ制服に身を包み、天音は淡いベージュのワンピース風の衣装。
控室では、美咲と美沙、そして由依までもが立ち会っていて、ちょっとしたモデル事務所の撮影現場のようだった。

 
「天音、姿勢気をつけて。凛音、もうちょい笑って?」

美咲のテンションはいつものように高い。
一方、凛音はどこか無表情でカメラの前に立ち、天音も緊張でやや硬い笑顔になっていた。

 
(テレビって……思ってたより、ずっと緊張する……)

天音は控えめに息を整えながら、隣の凛音をちらりと見た。

(……でも、凛音は……相変わらず落ち着いてる)

どこか大人びた横顔に、ほんの少しの寂しさを覚えた瞬間――

 
「やっほー! お疲れさまです、桐嶋くん、白石さん♪」

その声に振り向いた天音の前に現れたのは――

 
神埼ルイ。
今、女子中高生に圧倒的な人気を誇る、フレッシュ系王子様アイドル。

 

長身でスタイル抜群。透明感のある茶髪に、大きな瞳。
誰にでも分け隔てなく話しかけるその人懐こさに、スタッフも女子アナも笑顔がこぼれていた。
 

「ルイくん、今日は同じコーナーに出る新人さんたちに挨拶してるの。おふたり、初めましてだよね?」

マネージャーが補足しながら微笑む。
 

「よろしくお願いします、神埼ルイです。R+Tさんって、すごく話題になってるよね。
フェスの映像見たけど……あれ、正直、感動した」

 
天音は思わずぽかんと口を開けてしまった。

「あ……ありがとうございますっ」

 
凛音はぴくりとも動かず、低く短く言った。

「どーも」

 
(……あ、ちょっとムスっとしてる?)

天音がその空気の違和感に気づいたのは、ほんの数秒後だった。
 

「天音ちゃん、歌声もだけど、表情の作り方が上手だね。
なんていうか、心で歌ってるのが伝わってきて、すごく惹きこまれた」

 
「え、あ……あの……ありがとうございます……」

 
にこやかに褒めるルイの姿に、天音は内心ドキドキしていた。

(わ……テレビで見たまんま……こんな近くで話してくれるんだ……)

 
だが、その瞬間。

背中に、びりっとするような視線を感じた。

振り返ると――

凛音がじっと、ルイを見ていた。

その目は……まるで獣のように鋭く、警戒心に満ちていた。

 
(えっ……な、なにこの空気)

 
「じゃ、俺はそろそろ自分の準備あるから。
あとで、ステージでまたね♪」

そう言ってルイは、爽やかな笑顔を残して去っていった。

去った後も、空気は妙にぴりついたままだった。

 
「……なんか、すごくいい人だったね。ルイくん」

天音が何気なくそう口にすると、
 

「そうか?」

と、凛音がぽつり。

 
「え……?」

 
「お前、やたらと笑ってただろ。
顔、赤くして。耳まで真っ赤だったぞ」

 
「そ、そ、それは緊張してただけで!」

 
「ふーん。
だったら、さっきの“すごくいい人”ってセリフ、必要だったか?」

 
「……えっ、ええっ? な、なにそれ……!」

 
凛音は天音をじっと見つめた。
いつものように、冷静で無表情。
けれどその視線の奥に、なにか――熱いものが宿っていた。

 
「……俺以外のやつに、“特別”を感じんなよ」

 
「……え?」

 
「お前が誰かに褒められて嬉しいのも、注目されるのも、分かる。
でも……それで、笑顔見せるのは――俺だけでいい」

 
「っ……!」

 
天音の心が、跳ねた。

口元を手で抑え、顔が赤くなっていく。
 

(な、なにそれ……そんなの……ずるい)

(さっきまで、あんなにクールだったくせに……!)

 
「……でも。じゃあ、凛音も、私以外にそんな顔見せないでよ」

 
「は?」

 
「テレビだって、雑誌だって。
女の子のファン増えてるし……
“かっこいい”とか“王子様”とか、言われてるし……」

 
凛音が目を細めた。

そして、一歩近づく。

天音の目の前に、ぴたりと立つ。
 

「俺が誰にどう見られようが、
“本気で顔見せてんの”は、お前にだけだ」

 
「……!」
 

そのまま、天音の頬にそっと手を添える。

ドキドキが、止まらない。

 
(こんな、テレビの控室で……)

(ほんとに、この人……)

 
「……バカみてぇに嫉妬すんな。
俺が特別なのは――お前だけだ」
 

天音の目に、ぽろっと涙が浮かぶ。

でもそれは、不安じゃなくて。
ただただ、嬉しくて。

 
「……私も……特別なの、凛音だけだから」

 
そうして、2人は距離も時間も忘れて見つめ合った。

控室の外では、スタッフが「R+Tさん、スタンバイお願いしまーす!」と声をかけていたけれど。

この一瞬だけは、誰にも邪魔されたくない。

お互いが“誰のものでもない、ただひとりの相手”であることを、
静かに、心で確かめ合う時間だった。

 
【つづく】
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