俺様王子は女嫌い?!本当は一途すぎて幼馴染のキミしか見てない

naomikoryo

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第42話「RとT、交差する未来」

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あの日のステージをきっかけに、天音の世界は少しずつ変わり始めた。

美沙の事務所には「白石天音ソロで起用したい」という声が数件寄せられ、
イベントスタッフや音楽ライターたちの中では、
「R+Tの“歌姫”は、想像以上に才能を持っていた」と話題になっていた。

 
だが、それは同時に、“ある噂”を引き寄せる。

 
天音、R+T卒業説。

凛音、ソロデビュー確定か?

 
SNSを中心に拡散された小さな火種は、
ほんの数日のうちに燃え広がり、
一部メディアにも取り上げられるほどの話題にまで発展していた。
 



 
「ねぇ、これ見た?」

朝の教室で、夏菜がスマホを差し出す。

そこには、『次世代シンガー・白石天音にソロ契約のオファー殺到』の見出し。

「……また憶測記事か」

悠真がため息をついて、静かにスマホを置く。


「でも……天音ちゃん、最近プロのレッスンとか受けてるでしょ?」
 

「……知ってる。見てたからな。何も悪くねぇよ」

悠真の声は、どこか少し淋しそうだった。

だが、それ以上は何も言わず、彼はそっと目を伏せた。

 

 

その日の放課後。
屋上の手すりにもたれながら、凛音は風に髪をなびかせていた。

空は高く、夕陽がオレンジ色にグラデーションをかけていた。

隣にいたのは、美沙。

黒のサングラスを外し、真剣なまなざしを凛音に向ける。

 
「……で、どうするの? あんたに来てる話、受ける気はある?」

 
「……ソロ?」

 
「うん。某レーベルから正式オファー。
“R+T”じゃなく、桐嶋凛音として契約して、音楽番組にも出演って話」
 

「……ふーん」

凛音は腕を組み、視線を空へ流した。

 
「悪い話じゃねぇな。
けど……今、俺にとってそれって、あんまり面白くねぇ」

 
「どうして?」

 
「俺が歌いてぇのは、
――一人とか誰かとじゃなく、天音とだからだよ」

 
美沙は驚いたように目を見開き、すぐに笑った。

「……ふふっ。あんた、ホントに変わったわね」

 
「変えられたんだよ、あいつに」

 
その時、凛音のスマホが鳴る。
画面には『天音』の名前。

 
「はい。……ん? 今? 分かった、行く」

 
通話を切ると、美沙がにやりと笑う。

「ラブラブで何より」
 

「うるせぇ。
けどまあ……少し、ラブラブかもな」

 


 
呼び出されたのは、河川敷の小さな土手道。
ベンチに腰掛けて待っていた天音は、髪を揺らして微笑んでいた。

「……ね、ちょっと歩かない?」
 

「急になんだよ」

 
「なんとなく、今日は……ちゃんと話したかったの」

 
二人は並んで歩く。
足元には、秋風に揺れるススキの影。

少しだけ冷たい空気が、肌をくすぐる。

 
「……ね、凛音。噂、見た?」

 
「ああ。見た。
……全部、ウソだな」
 

「うん。ウソなんだけど、
私、自分でも少しだけ怖くなったの。
“このまま私が一人で進んでったら、
凛音の隣から消えちゃうんじゃないか”って」

 
「消えねぇよ」

 
「でも、凛音にだってソロの話来てるって聞いた。
もし、それを選んだら……って、思ったら、
胸がギュってなって……」
 

天音は立ち止まる。

秋風が、頬を撫でる。

 
「凛音。私、選んだんだ。
私、どんなにチャンスをもらっても、
“R+T”をやめない。
……あなたの隣で、歌い続けたい」
 

凛音は、静かに彼女の肩を引き寄せた。

「じゃあ、決まりだな。
俺も、同じだ。
一人で歌う気なんか、はなっからねぇよ」

 
「……よかった」
 

「でも、さ。
選んじまったからには――
お前、覚悟しとけよ」

 
「え?」

 
「これから先、俺と一緒に進むってことはさ、
普通じゃねぇ未来に行くってことだ。
テレビも、ライブも、ファンも、アンチも、
お前のことを“好き”とか“嫌い”とか勝手に言ってくる。
それでも、歌うってことなんだよ」

 
天音は、少しだけ目を伏せた。

「……分かってる。
それでも、私は――
“誰かに選ばれる自分”じゃなくて、
“自分が選んだ道”を歩きたい」

 
「……かっけぇな」
 

「ふふっ、でしょ?」
 

夕陽が差し込む中、二人はふと笑い合う。

いつの間にか、指がそっと重なっていた。

 
「凛音」
 

「なんだよ」

 
「次のステージさ。
2人で世界に挑もう?」

 
「おう。
“R+T”、世界仕様で行こうぜ」
 

ふたりの影が、寄り添いながら伸びていく。

足元の落ち葉が、カサリと音を立てていた。

その音も、彼らの音楽になる日が、もうすぐそこまで来ている。

 
【つづく】
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