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第45話「R+Tは、終わらない」
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桜が咲くにはまだ早い、でもどこか春の匂いがする空気。
校舎の壁は柔らかな光に包まれ、
卒業式を迎える制服の群れが、校門の前を埋め尽くしていた。
桐嶋凛音と白石天音、そして悠真と夏菜。
4人はいつものように並んで立っていた。
ただ、今日は――ほんの少しだけ景色が違う。
「なーんかさ、卒業式って実感わかないよね」
と、夏菜がぼやくように呟いた。
「実感わかないのはお前だけだろ」
凛音はいつものように突っ込みながらも、
その目はどこか柔らかく笑っていた。
「でも……これで本当に、制服ともお別れだね」
天音が寂しそうに制服の袖を見つめる。
「……いや、俺はまだ着てもらう予定だけど?」
「え?」
「うちの姉貴たちがさ。
“卒業制服デートフォトプラン”とかって
勝手に段取り組んでるから」
「なにそれ!?」
「写真撮られまくって、SNS拡散されんぞ。震えて待て」
天音はぷーっと頬を膨らませた。
「もう、凛音の家族ってホント自由だよね!」
「……慣れろ。
てか、お前ももう“公認”だしな」
「う、うん……」
そう。天音はすでに、“桐嶋家公式彼女”としての地位を獲得していた。
紗奈は卒業祝いにペアの手作り衣装をプレゼントしてくれたし、
美咲は動画と写真をまとめて「卒業記念R+T MV」を編集中。
由依はスケジュールアプリに“卒業後同棲生活計画”を入れかけているという。
そして――美沙は、R+Tの世界プロジェクト始動を控えて、
新しい音楽フェスやライブツアーの準備を進めていた。
「……卒業、か」
凛音は空を見上げて呟いた。
「終わったな。けど――」
「終わりじゃないよね」
天音が凛音の隣で笑った。
「始まり、だよ。これからが、きっと」
「……ああ、そうだな」
◆
午後。卒業式が終わり、校舎の裏庭には
クラスメートたちがちらほら集まっていた。
制服の第二ボタンをもらう子、
泣きながら抱き合う友達同士、
写真を撮る部活仲間――
そんな光景の中で、凛音と天音は
少し離れたベンチに腰掛けていた。
「なんか……静かだね」
天音が言うと、凛音は首を傾ける。
「この3年間、いろいろあったよね」
「お前が転校してきた瞬間から、
俺の静かな学園生活は終了したわけだが」
「ふふ、でも楽しかったでしょ?」
「……まあな」
風が吹く。
春の匂いを乗せた風だった。
「なあ、天音」
「うん?」
「卒業したら、“R+T”の活動、もっと本格的になる。
音楽だけじゃなくて、メディアも増える。
取材も、撮影も、海外も、たぶんもっと増える」
「うん。分かってる」
「それでも、隣にいるって、言ってくれるか?」
天音は少しだけ目を見開いた。
そして――はにかむように笑った。
「“隣にいさせて”じゃなくて、“隣にいる”って言ってくれるんだね」
「そりゃそうだろ。
俺様だからな」
「……じゃあ、私も言う」
天音は、そっと凛音の手を握った。
「“ずっと隣にいる”よ、私。
どこに行っても、何をしても、
凛音の隣に立てる私でいたい」
その目は、もう少しの不安もなく、
ただ真っ直ぐに凛音を見ていた。
「……あーもう」
凛音は照れくさそうに天を仰いで、
そっと彼女の頭を引き寄せた。
「お前、どこまで可愛いんだよ」
「えへへ……好きだもん、凛音が」
◆
その日の夕方。
校門前には、なぜか報道陣が数名詰めかけていた。
カメラの先には――
凛音と天音。制服姿のまま、手を繋いで並んで立っている。
「すでにSNSでは“高校ラブソングシンデレラ”として
トレンド入りしてます。
今後のお二人の活動に注目です!」
マイクを向けられて、天音は戸惑いながらも、
凛音の袖をギュッと握った。
凛音は言う。
「“R+T”は――
俺と天音が一緒に歌ってる限り、終わんねぇから」
その言葉に、天音は笑って、そっと囁いた。
「ずっと、私の歌は凛音に向かってるよ」
カメラのフラッシュが眩しいほどに光る中で、
二人はゆっくりと歩き出した。
――それが、
彼らの新しい始まりだった。
◆
【エピローグ】
1年後。世界中のステージを飛び回るR+Tは、
アジアを中心に活動の幅を広げていた。
SNSのフォロワーは200万人を超え、
“新時代のラブボーカルユニット”として各国の音楽チャートにも顔を出す。
ステージの照明が灯るたび、
そこに立つのは、変わらず――
「俺様凛音と、天音」だった。
-Fin-
校舎の壁は柔らかな光に包まれ、
卒業式を迎える制服の群れが、校門の前を埋め尽くしていた。
桐嶋凛音と白石天音、そして悠真と夏菜。
4人はいつものように並んで立っていた。
ただ、今日は――ほんの少しだけ景色が違う。
「なーんかさ、卒業式って実感わかないよね」
と、夏菜がぼやくように呟いた。
「実感わかないのはお前だけだろ」
凛音はいつものように突っ込みながらも、
その目はどこか柔らかく笑っていた。
「でも……これで本当に、制服ともお別れだね」
天音が寂しそうに制服の袖を見つめる。
「……いや、俺はまだ着てもらう予定だけど?」
「え?」
「うちの姉貴たちがさ。
“卒業制服デートフォトプラン”とかって
勝手に段取り組んでるから」
「なにそれ!?」
「写真撮られまくって、SNS拡散されんぞ。震えて待て」
天音はぷーっと頬を膨らませた。
「もう、凛音の家族ってホント自由だよね!」
「……慣れろ。
てか、お前ももう“公認”だしな」
「う、うん……」
そう。天音はすでに、“桐嶋家公式彼女”としての地位を獲得していた。
紗奈は卒業祝いにペアの手作り衣装をプレゼントしてくれたし、
美咲は動画と写真をまとめて「卒業記念R+T MV」を編集中。
由依はスケジュールアプリに“卒業後同棲生活計画”を入れかけているという。
そして――美沙は、R+Tの世界プロジェクト始動を控えて、
新しい音楽フェスやライブツアーの準備を進めていた。
「……卒業、か」
凛音は空を見上げて呟いた。
「終わったな。けど――」
「終わりじゃないよね」
天音が凛音の隣で笑った。
「始まり、だよ。これからが、きっと」
「……ああ、そうだな」
◆
午後。卒業式が終わり、校舎の裏庭には
クラスメートたちがちらほら集まっていた。
制服の第二ボタンをもらう子、
泣きながら抱き合う友達同士、
写真を撮る部活仲間――
そんな光景の中で、凛音と天音は
少し離れたベンチに腰掛けていた。
「なんか……静かだね」
天音が言うと、凛音は首を傾ける。
「この3年間、いろいろあったよね」
「お前が転校してきた瞬間から、
俺の静かな学園生活は終了したわけだが」
「ふふ、でも楽しかったでしょ?」
「……まあな」
風が吹く。
春の匂いを乗せた風だった。
「なあ、天音」
「うん?」
「卒業したら、“R+T”の活動、もっと本格的になる。
音楽だけじゃなくて、メディアも増える。
取材も、撮影も、海外も、たぶんもっと増える」
「うん。分かってる」
「それでも、隣にいるって、言ってくれるか?」
天音は少しだけ目を見開いた。
そして――はにかむように笑った。
「“隣にいさせて”じゃなくて、“隣にいる”って言ってくれるんだね」
「そりゃそうだろ。
俺様だからな」
「……じゃあ、私も言う」
天音は、そっと凛音の手を握った。
「“ずっと隣にいる”よ、私。
どこに行っても、何をしても、
凛音の隣に立てる私でいたい」
その目は、もう少しの不安もなく、
ただ真っ直ぐに凛音を見ていた。
「……あーもう」
凛音は照れくさそうに天を仰いで、
そっと彼女の頭を引き寄せた。
「お前、どこまで可愛いんだよ」
「えへへ……好きだもん、凛音が」
◆
その日の夕方。
校門前には、なぜか報道陣が数名詰めかけていた。
カメラの先には――
凛音と天音。制服姿のまま、手を繋いで並んで立っている。
「すでにSNSでは“高校ラブソングシンデレラ”として
トレンド入りしてます。
今後のお二人の活動に注目です!」
マイクを向けられて、天音は戸惑いながらも、
凛音の袖をギュッと握った。
凛音は言う。
「“R+T”は――
俺と天音が一緒に歌ってる限り、終わんねぇから」
その言葉に、天音は笑って、そっと囁いた。
「ずっと、私の歌は凛音に向かってるよ」
カメラのフラッシュが眩しいほどに光る中で、
二人はゆっくりと歩き出した。
――それが、
彼らの新しい始まりだった。
◆
【エピローグ】
1年後。世界中のステージを飛び回るR+Tは、
アジアを中心に活動の幅を広げていた。
SNSのフォロワーは200万人を超え、
“新時代のラブボーカルユニット”として各国の音楽チャートにも顔を出す。
ステージの照明が灯るたび、
そこに立つのは、変わらず――
「俺様凛音と、天音」だった。
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