俺様王子は女嫌い?!本当は一途すぎて幼馴染のキミしか見てない

naomikoryo

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第9話「天音と放課後デート(未遂)」

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月曜日の昼下がり。
2年B組の教室には、いつも通りのざわめきが満ちていた。

けれど、そのざわめきの中心には、今日もやっぱり“白石天音”がいた。

 
「なあなあ、天音ちゃん、好きな食べ物って何?」

「ラーメン!」
 

「かわいいな……庶民派とか最高かよ」

 
「映画って観る? 今度、学割で行こうぜ」

「あ、うん、映画好きだよ。アクションとか派手なのが好き」

 
今日も今日とて、天音のまわりは男子の花園。

クラス内の一部男子が“天音親衛隊”と化し、昼休みに代わる代わる話しかけては撃沈している。
だが、彼女はまったく動じない。

全員に同じように笑顔を向け、同じトーンで会話をする。
そのたびに「可能性あるかも!?」と男子が誤解して、さらに暴走するという悪循環。

 
しかし――

凛音から見れば、それは“もはや天災”。

 
(……あいつ、マジで無自覚なんだな)
 

凛音は窓際の席で、ペンをくるくると回しながらため息をついた。

つい数日前、天音に「守ってもらってもいいかも」と言われた。
あの言葉は、確かに心に刺さった。

けれど、それからの天音は何も変わっていない。

相変わらず無防備に男子と話し、笑って、
――それがなぜか、胸の奥をモヤつかせる。

 
(俺だけに笑ってるんじゃ、ねえんだよな)

 
そんな思考を振り払うように、机の上のペンを置いた。

その瞬間。

トントン、と軽く肩を叩かれた。
 

振り返ると、そこには例の笑顔。

白石天音が、昼休みの喧騒の中で、真っ直ぐ凛音を見ていた。
 

「ね、放課後、ちょっと一緒に寄り道しない?」

 
「……は?」
 

「最近ちょっと甘いもの食べたくてさ。なんか、ほら、パンケーキとか」

 
「……女子かよ」

 
「女子だもん」

 
その返しに教室の空気が一瞬ピキリと緊張する。

数人の女子が凛音を睨み、
さらに数人が“また凛音だけ?”と目配せする。

天音本人は、そういう視線にまったく気づいていない。
 

「じゃあ、行く? ね? 行こうよ」
 

「……」

 
断る理由がない。

いや、あるにはある。
行けばまた噂が広がるし、女子の視線が痛くなる。
けど――

 
(行きたくないわけじゃ、ない)

 
結局、凛音は小さくうなずいた。

天音が嬉しそうに笑う。
その笑顔に、負けた。

 


 
放課後。

教室を出る頃には、すでに“ふたりが出かけるらしい”という噂がクラス中を駆け巡っていた。

天音が制服のまま、バッグを肩にかけ、階段を下りる姿を見て、
女子のひとりが皮肉っぽくつぶやく。

「また凛音くんと? よっぽど特別なのね」

 
だが、天音はまったく気づかず、「うん♡」と答えてしまう。

その無邪気な返答が、さらに女子たちの嫉妬をあおる。
 

(……もう、何とかしてくれ。誰か止めろ)
 

と思っている凛音が止められるわけもなく、
そのまま校門を出て、駅前へと向かうことになった。

 
「ね、甘いの食べるって言っても、どこ行くの?」

「知らねぇよ。誘ったのお前だろ」

「へへ、実は行ってみたいカフェがあってさ」

 
「じゃあそこ行けよ」

「一人じゃ入りにくいじゃん。男子が一緒ならちょうどいいし」

「なんだそれ」

「“男子”っていうか、“凛音”っていうか……まあいいか」

 
その何気ない言葉が、胸をじわりと焼いた。

“凛音”っていうか。
どういう意味だ。
どういう気持ちで、今のテンションなんだ。

 
聞きたいけど、聞けない。
言いたいけど、言えない。

不器用な距離が、歩幅とともに伸び縮みする。
 

そして駅前の商店街に入ったとき。

事態が、急変する。

 
「おっ! 天音じゃん!」

 
元気な声が響いた。

振り向くと、制服姿の男子がふたり。
同じ学校の、他クラスのバレー部員だ。

彼らは天音に手を振り、距離を詰めてきた。
 

「今日バレー部休みなの? 一緒にクレープでも行かね?」

「天音ちゃんのファンクラブ会員No.12の俺がごちそうするぜ!」

 
「え、あ、うーん……」
 

戸惑う天音。
凛音は口を開こうとしたが、言葉が出なかった。

なんだ、この胸の奥に広がる、
もやっとして、苦くて、でも熱を持ったこの感情は。

 
(……クレープくらい、俺も……)
 

「すみません。こいつ、俺と約束あるんで」
 

ついに口が動いた。

振り返ったふたりの男子が、「は?」という顔になる。
 

「へぇ、珍しいな、桐嶋が女子と約束って」

「まあでも天音ちゃんのことなら仕方ないか~。じゃ、また今度なー」

 
去っていく男子たち。

そして残された天音は、凛音を見上げて、ポカンとした顔。
 

「……凛音、今の……」

 
「なんか、ムカついた」

 
「ムカついた?」
 

「クレープがどうとか、会員ナンバーがどうとか、うるせぇって思った。だから、言った」

 
そのまま、すたすたと歩き出す。

だが数歩歩いて、ふと気づく。

天音がついてきていない。

 
振り返ると、彼女はまだその場に立ち止まり、
凛音を見つめていた。

表情は、どこか切なげで、でも、なぜか――嬉しそうだった。

 
「……ありがとう」

 
「別に、お前のためじゃねぇ」

 
「……うん。でも、嬉しかった」

 
小さな声。
届いたかどうかも怪しい声。

でも凛音の心には、確かに届いていた。

 


 
目的のカフェは、なんと定休日だった。

まさかの展開に、二人はコンビニでアイスを買い、
近くの公園のベンチで食べることに。

放課後デート、未遂。

けれど、それはそれで、悪くなかった。

 
「ねえ、凛音」
 

「ん」
 

「今日みたいに、ただ一緒に歩いてくれるだけで、私は嬉しいんだよ」

 
「……なんで」

 
「うーん。なんでだろ。……昔も、こうやって並んで歩いてたからかな」

 
「……そんなの、小学生のころだろ」

 
「うん。でもね、今の方が、好き」

 
アイスの棒をくるくる回しながら、
天音は、そう言った。

 
凛音は答えなかった。
いや、答えられなかった。

心の中に、言葉がありすぎて、
それをひとつにまとめるには、まだ時間が足りなかった。

 
ただ。

アイスの味が、思っていたよりずっと甘かったことだけは、はっきりとわかった。

 
【つづく】
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