俺様王子は女嫌い?!本当は一途すぎて幼馴染のキミしか見てない

naomikoryo

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第10話「悠真のモノローグ(三角関係の影)」

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――桐嶋凛音は、ずっと俺の隣にいた。

そして、たぶんこれからも、いるんだと思ってた。

 
でも、それはきっと“勘違い”だったんだ。

そう思い始めたのは、あの女の子が戻ってきてからだ。

 
白石天音。

小学四年生まで、俺たち三人は同じ時間を過ごしていた。

あの頃の凛音は、今とは全然違っていた。

どこか怯えてて、人混みが苦手で。

特に女の子には触れられるだけでビクついていた。

そりゃそうだ。

家では姉三人に囲まれて、朝も夜も構われすぎて、愛情という名の牢獄に閉じ込められていたんだから。

 
そんな凛音が唯一、心から安心して笑っていたのが――天音と一緒にいるときだった。

 
俺もその場にいたけど、今思えば、あの輪の中で一番特別だったのは天音だったんだろう。

 
でも、天音は転校した。

そのあと、凛音は急に“女嫌い”を公言し始めて。

俺以外とは距離を取り、女の子は全員無視。

それが結果的に「俺様系王子」として大ウケし、女子人気を掴むという謎現象を生んだ。

 
俺はずっと、そんな凛音の“裏側”を知ってる唯一の親友として、そばにいた。

その立場は、心地よかった。

だって、自分にしか見せない顔を知ってるって、特別だろ?

特に、彼みたいな“完璧すぎる人間”の、その隙を知ってるってことは――俺だけの特権だった。

 
だけど、それが崩れた。

崩れ始めてるのが、わかる。

 


 
「悠真、聞いた? 天音ちゃんと凛音くん、また一緒に帰ってたって」
 

廊下で女子の会話が耳に入る。

聞いてないフリをして、全部聞いてる。

だって、気になるんだから。

天音は無自覚。

たぶん凛音も、自覚があるのかないのか、微妙なところ。

でも、二人の間にある空気は、周囲が気づくほどに**“色がついてきてる”。**

 
なのに。

俺の中には、いつまでも変わらない記憶がこびりついてる。

 
あの日。

雨の中で泣いていた凛音を、天音がそっと傘で覆った日。

あのときの凛音の顔は、今でも忘れられない。

誰にも見せたことのない、安心と信頼のにじんだ、あたたかい顔だった。
 

俺はあのとき、少しだけ思ってしまった。

――天音がいなくなれば、俺が一番近くにいられる。

 
最低だと思った。

でも、それは嘘じゃない。

あの日から、俺はずっと“いなくなった天音の代わり”だった。
 

そして今。

本物が戻ってきた。

凛音の目に映る彼女は、昔と同じように無邪気で。

でも、どこか少し強くなっていた。

凛音の“変化”に対して、一歩も引かずにぶつかっていく。

まるで彼女は――彼の“本音”を取り戻す鍵のようだ。

 
俺には、できないことだった。

俺はただ、凛音の“仮面”を知っているだけで、壊せない。

壊したら、きっと俺の居場所がなくなる気がして。

 


 
「悠真、今日、暇?」

放課後、天音が教室の入り口からひょっこり顔を出した。

 
凛音は席に座ったまま、無反応。

天音は別に気にした様子もなく、悠真に向かって微笑む。

 
「ちょっと付き合ってほしいとこあるんだ」

 
「……俺でいいの?」

 
「うん。悠真って、話しやすいから」

 
その言葉。
嬉しかった。
けど、胸の奥で何かがチクリと刺さった。

“話しやすい”。
それは、裏を返せば――“特別ではない”ってこと。

 
「いいよ。どこ行くの?」

 
「ちょっとだけ。買い物!」

 


 
駅前の文具店。

彼女は可愛い付箋やノートを手に取りながら、楽しそうにあれこれ話していた。

時折、「これ、凛音だったら似合いそう」と口にして、すぐ「違うか~」と笑う。

全部が、“彼の話”だ。

今、俺の目の前にいるのに。

俺の隣にいるのに。

彼女の心は、ずっと桐嶋凛音に向かってる。

 
「ね、悠真ってさ、凛音のことどう思ってる?」
 

不意に投げられたその問いに、言葉が詰まる。

視線が合う。

彼女は、まっすぐに見ている。

俺の目を。心を。奥を。
 

「……親友だよ」

 
やっと出たのは、その一言だった。

天音はふっと微笑んで、

「そっか」

とだけ言った。

それ以上、深くは追及しなかった。

でも、それでよかった。

それ以上を聞かれたら、俺はもう嘘をつけない気がしたから。

 


 
帰り道。

商店街の灯りがポツポツと点き始めていた。

天音は手にした小さな紙袋を揺らしながら、唐突に言った。

 
「悠真、優しいね」

 
「そうかな」
 

「うん。でも、ちょっと寂しそう」

 
その言葉が、心に直接降ってきた。

隠していたものが、少しだけ顔を出しそうになった。

でも、それを見せたら、彼女はもう笑えない気がして。

俺は笑ってごまかした。

 
「凛音がさ、お前といるときだけ、子どもみたいな顔になるの、知ってる?」

 
「え?」
 

「なんかさ、俺の知らない顔してるんだよ。あいつ、あんな顔できたんだなって」

 
「……うん。私も、そう思った」

 
「……天音」
 

呼んだだけで、何も言えなかった。

言ってしまったら、たぶんもう、今の関係には戻れない。

だから、何も言えなかった。

 
彼女は気づいてるのか、気づいていないのか。

ただ、小さく「うん」とだけ返して、

そのまま別れ道の角を曲がっていった。
 

俺はしばらく、その場に立ち尽くしていた。

街の音が遠ざかっていく。

灯りは点き始めているのに、心の中は、どんどん暗くなっていくようだった。

 
(……いいよ)

(俺は、親友でいい)

(それが、今の俺の居場所なら)
 

そう、言い聞かせながらも、
胸の奥で疼いているものは、誰にも言えなかった。

誰にも
――言いたくなかった。

 
【つづく】
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