俺様王子は女嫌い?!本当は一途すぎて幼馴染のキミしか見てない

naomikoryo

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第15話「姉たちの逆襲? 凛音の帰宅サバイバル」

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「――ただいま」

玄関を開けた瞬間。
桐嶋凛音は、体感気温が10度ほど下がったような感覚を覚えた。

玄関ホールの明かりはなぜか青白く、
鏡の前には靴を脱ぎ捨てたままのハイヒールが3足。

そして。

「……ほう」

「……おかえり、凛音くん?」

「……ちょ~っと遅くない?」

3姉が、完璧に陣形を組んで待ち構えていた。

 

長女・由依(テレワーク中の鬼部長)。
冷静な微笑みと共に、タブレットを持ったまま仁王立ち。

次女・美咲(フリーモデルでファッション狂)。
明らかに手にしたスマホで何かの録画を再生しようとしている。

三女・遥香(美大志望で謎多き芸術肌)。
ソファに腰かけ、凛音の帰宅に合わせてカメラのシャッターを切っている。

 

「おい、……何だこの並び」

靴を脱ぎながら、背筋が勝手に伸びる。

制服の上にカーディガンを羽織り、乱れた前髪を整えながら、
凛音はできるだけ平静を装って靴箱に向かった。

 

「今日の文化祭、大・成・功♡」

美咲がスマホの画面を突きつける。

そこに映っていたのは、
――ステージで天音に助け起こされる自分の姿。

どこかの保護者がSNSに上げた動画らしく、
すでにコメント欄には「リアル学園ラブストーリー!」「美男美女…神か」などの文字が並んでいる。
 

「お前ら、なんでそんな即行でチェックしてんだよ……」
 

「見逃すわけないでしょ。弟が全国配信級のイベント起こしたんだから」

由依はタブレットの画面をスワイプしながら、
「実際、フォロワーが一気に増えたわよ。何気にうちのブランドタグついてるし」と呟いた。
 

「でもさあ~、天音ちゃんってさあ~」

遥香が首を傾げながら、凛音の顔を覗き込む。

「……もしかして、付き合っちゃう感じ?」

 
「……は?」
 

「いや、あの感じはそうだよねえ。
 だってステージであんなに見つめ合って……あー、もう青春か!」

美咲がクッションを投げてきた。

凛音はそれを軽くかわし、ソファに背を預けながら溜息をつく。
 

「……つか、あいつらって本当にどこまで口出してくんだよ」

 
「当然でしょ?」

 
3姉の声が、ユニゾンで重なる。
 

「女に興味ないって言ってた弟が、あんなキラキラした目してるんだもん」

「確認するに決まってるじゃない。恋愛の質監査ってやつよ」

「恋は、家庭の風紀に関わるのだ」

 
「どこの警察だお前ら……!」
 

凛音はそのまま立ち上がり、階段へ向かう。

「もういい。俺、9時以降の自由時間に入るから」
 

「え、ちょっと待って! 今日はその“自由時間”にもアンケートがあります!」

 
由依が持っていたiPadから、まさかの**“交際報告チェックリスト”**が表示される。

項目には、

告白済かどうか

初デートの予定

相手の家族構成の把握度

キスしたか

など、完全に過干渉ラインを突破している設問の数々。
 

「お前ら……どんな地獄を俺に見せる気だよ……」

 
階段を二段飛ばしで駆け上がり、自室に逃げ込む。

9時以降の“自由時間”は、凛音にとって命綱のような時間帯である。

ドアを閉め、鍵をかけた瞬間。

ようやく、ふっと力が抜けた。

 
天井を仰いで、ベッドに崩れ落ちる。

今日、あんなに気持ちが通じ合ったのに。
ステージで、教室で、あんなに大事な言葉を交わしたのに。

現実は、こうだ。

“姉三人”のフィルターを通せば、何もかもが娯楽と監視対象になる。

 
(……でも、あいつらの言葉、全部嘘じゃないのが、ムカつく)

姉たちの干渉は、時に鬱陶しくて、
だけど時に――どこか安心もする。

無視すればいいのに、
「なんだかんだで見ていてくれる」と思えてしまう自分が、
腹立たしいほどに“家族”に慣れきっている。

 
天音の顔が浮かぶ。

優しくて、まっすぐで、昔から変わらない。

今日、ようやく言えた。

「好きだ」と。

でも、まだ不安もある。
こんな俺様で、こんな姉たちがいる家で。
本当に、あいつをちゃんと大事にできるのか。

 
9時半を回ったころ、スマホが震えた。

メッセージは、天音からだった。
 

《今日、楽しかった。
 でも、ちょっとだけ不安。
 凛音、ちゃんと寝れてる?》

 
ふ、と笑った。

“寝れてる?”って、まるで親かよ。

でも、その気遣いが嬉しい。
昔から、ずっとそうだった。
言葉に出さずとも、心の奥を見抜いてくる。

 
《……寝る前に、お前の声、聞きたい》

 
そう送ったあと、すぐに着信が鳴った。

画面に「天音」の名前。

受け取った瞬間、彼女の声が響く。

「……バカ。何言ってんのよ、こっちは心臓止まるかと思った」
 

「お前が心配させるようなこと言うからだろ」

 
「え? 私のせい?」

 
「そうだよ。だから、責任取れ」

 
「はいはい、俺様様~」
 

何度目か分からないその言葉に、
今夜は、少しだけ心が軽くなった。

姉たちの“逆襲”はまだ続くだろう。
明日になれば、また謎の確認書類やら、恋愛指南会議が開かれるに違いない。

それでも――

この声があれば、たぶん俺はやっていける。
 

たった数分の通話を終えたあと。

画面が暗くなったスマホを握りしめ、
凛音はようやく、心からの笑みを浮かべた。
 

「……好きだ」

自分の部屋で、誰も聞いていないはずの場所で。
そっと、もう一度だけ口にした。
 

けれど、その声はしっかりと――部屋のドアの隙間に貼り付けられた盗聴マイクに拾われていたのだった。
 

「……きゃーーーーーっ!!!
 やっぱり付き合ってるうううううう!!!!」

階下で炸裂する姉たちの絶叫。

凛音の自由時間は、たった10分で終了した。

 
【つづく】
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