俺様王子は女嫌い?!本当は一途すぎて幼馴染のキミしか見てない

naomikoryo

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第18話「届かない想い、見守る背中」

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文化祭が終わり、日常が戻ってきた
――はずだった。

だが、教室の空気はどこか違っていた。
ざわざわとした噂の中心にいるのは、例のふたり。
桐嶋凛音と白石天音。

廊下を並んで歩けば、そっと道が開く。
お昼を一緒に食べていれば、周囲の視線が一斉に集まる。
だが、それを誰よりも気にしていないのは
――当の本人たちだった。
 

「なあ、天音」

 
「なに?」
 

「今日、昼休み。俺と一緒じゃなかったら……殺す」

 
「……ふぇ?」
 

「返事は?」
 

「は、はいっ!」
 

「よろしい」

 
天音は完全に“喜びの混乱状態”だった。

顔を真っ赤にしながら、嬉しそうに鞄を抱きしめる姿に、
クラスの女子たちはため息混じりに口をそろえる。

「……え、束縛されてるのに、あれって嬉しいの?」

「いや、あれが“天音クオリティ”なんだよ」

「……なるほど、天然には天然の耐性があるのね」
 

凛音はというと、
天音の反応を見て微かに口元を緩めながらも、すぐに不機嫌そうな表情に戻る。

「男子も話しかけすぎんなよ。
 特に、昨日の掃除当番のやつ、次やったら机の中にタコ焼き入れる」

「どこの関西の報復だよ……」

「てか、凛音くんってこんなに彼女好き好きだったの……」

 
そんなドSな俺様スタイルを発揮しつつも、
天音が笑っていれば、何も言わずとも機嫌が直る。
それを、クラス全体が把握しはじめていた。

最初は「なんか怖い」と感じていた生徒たちも、
いまや“もうあのふたり、ほっといてよくない?”的な空気になってきていた。
 


 

一方その頃――。
放課後のバレー部練習後。

悠真は、グラウンド脇のベンチで、水を飲みながら空を見上げていた。

「あ、いた。悠真」

声をかけてきたのは、女子バレー部キャプテン・夏菜。

スタイル抜群で、体育会系女子のイメージが強い彼女。
けれど最近は、なぜかやたらと悠真のそばに現れることが多い。

 
「サボり中?」
 

「休憩中」
 

「ふーん」

夏菜は横に座り、水筒を差し出す。

「飲む? レモン水」

「……もらう」

ゴクゴクと飲んだあと、
悠真はぽつりと呟く。

「ありがと」

「ん」
 

少しの沈黙。

けれど、どこか居心地が悪くない。

夏菜は、天音の“応援団長”として彼女を見守ってきた。
だからこそ、
凛音のそばで静かに支えてきた悠真と、どこか似た役割をしている。
 

「ねえ、悠真ってさ」

「ん」

 
「……本当は、まだ凛音のこと、少しだけ好きでしょ」

 
「……さあな」

 
答えを濁すその声に、
夏菜は不思議と責めるような気持ちは抱かなかった。

「それでも、天音のために応援してるの、偉いね」
 

「違う」
 

「え?」
 

「俺は、凛音のために応援してる」

 
その言葉に、夏菜は少しだけ目を見張った。

「……優しいね」

 
「違う」


「また違うんだ」
 

「優しいんじゃなくて……
 あいつのこと、昔から守ってきただけ」
 

夏菜は、少しだけ笑う。

「じゃあ、私と同じだ」

 
「……あ?」

 
「私も、天音がずっと好きだった凛音に会えたとき、
 “あの子のこと、守らなきゃ”って思った。
 なんか……あの子、幸せになるの下手そうだから」
 

その言葉に、悠真の心が揺れた。

まるで、自分の気持ちを代弁するような言葉。
守る側。
届かなくても、隣で見守る側。

“戦友”
――そんな言葉が自然と浮かんできた。

 
「……なんかさ」

 
「うん?」

 
「お前、ちゃんと見てんな、天音のこと」

 
「悠真もね」

 
そして、不意に笑い合った。

本当に些細なことで、
言葉に出すまでもないような空気だったけれど。

その瞬間、
ふたりの距離が、確かにほんの少しだけ近づいた。

 


 
その日の夜。

凛音は、天音からのLINEを既読無視していた。

既読はついているのに、返信は来ない。

20分経過。
30分経過。

天音はソファで、携帯を抱えながらぐるぐると悩んでいた。

(な、なんか変なこと送ったかな?
 もしかして、怒らせた? でも、スタンプしか送ってないよね!?)

そしてついに、意を決して追撃メッセージ。

《……あの、もしかして怒ってる?(´;ω;`)》

すると、すぐに返ってきた一言。

《今LINEしてんじゃねーよ。他の男の目に入るだろ》

 
「……」

 
「…………っっ、バカ!! うれしい!!」
 

絶賛、俺様彼氏の束縛仕様である。

もちろん、それに天音は大喜び。

気づかない天然ぶりで、
「今日も愛されてる……」と枕に顔をうずめて悶えていた。

 
そして。
姉たちは、今日もその様子を盗聴し、
玄関の影から祝杯をあげていたという――。
 

【つづく】
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