俺様王子は女嫌い?!本当は一途すぎて幼馴染のキミしか見てない

naomikoryo

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第23話「風を超えて、君と光の中で」

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午後の空は、朝よりもさらに澄み渡り、
桐嶋学園の校庭は熱気と高揚に包まれていた。

残すところは、いよいよ最後の競技
――学年縦断・全校対抗リレー決勝戦。

 
9クラス、全アンカーが揃った中で、観客席から飛び抜けた歓声が上がる。

「凛音ー!アンカーがんばれー!!」

「さっきの姫抱っこ、永久保存!!次は勝ち取ってー!!」

「#凛音無双が止まらない」がリアルタイムでトレンド入り。

 
そんな中、凛音は自分の出番を控えて、クールに待機していた。

横では、美沙が片手にアイスコーヒーを持ち、
何やらスタッフとスケジュール確認をしている。

「……凛音、これ、帰ったらCMプランまとめてちょうだい。
 もう2社からスポーツウェアとエナジードリンクのオファー来てるわ」

「……まだ走ってねぇだろ」

「でも、勝つんでしょう?うちの息子が」

と、当然のように美沙が笑った瞬間、
会場アナウンスが響いた。
 

「さあ、クラス対抗リレー、いよいよ最終種目に入ります!」

「1年A組から3年C組までの代表選手、グラウンド中央へ!」

 
桐嶋凛音
――アンカー。
天音は応援団エリアで、両手を合わせて祈るように見つめていた。

 
スタートと同時に、各クラスが爆走を開始した。
最初から2年C組はトップ集団に食らいつく形で好スタート。

1走・1年の陸上部女子、次に2年の悠真、そして3走の夏菜。
 

ここまで完璧だった。
けれど
――ドラマは、思わぬ場所で起きた。

 
「っ! ごめ、バトンっ……!」

ほんの僅かなズレ。

バトンを渡そうとした夏菜が、焦りすぎて手元が滑った。
それを受け取ろうとした凛音も一瞬タイミングを読み違え、
バトンは宙を舞って、地面に落ちる。

 
「……ッ、くそっ」

凛音が素早く拾い直してスタートを切るも、
その一瞬のミスで、順位は3位に後退してしまっていた。
 

観客席がざわつく。

だが
――次の瞬間。

凛音が、本気を出した。

 
風を切る音が変わる。
ひと蹴りごとに距離を詰め、次々に抜かしていく。

1位との差、約15メートル。

それが
――5メートル、3メートル、1メートル。

 
――抜いた。

 
「速すぎる!!」

「バケモンかあのアンカー!!」

「美しすぎる走りって、あるんだな……」

 
美沙がサングラスを持ち上げ、
携帯を片手ににこりと笑う。

「……これは来るわね。確信した。
 スポーツCM3本は確定」
 

そして
――テープを切る瞬間、
凛音は胸を張り、全速力のままゴールラインを駆け抜けた。

 
その姿を天音は、息を呑んで見つめていた。

まるで、風そのもの。

いや
――彼自身が、風を追い越した瞬間だった。

 


 
そして、閉会式。

全クラスの代表が整列し、静寂が降りたグラウンドに校長の声が響く。

 
「今年度、総合優勝は――2年C組!」
 

地鳴りのような歓声。

紙吹雪が舞い、優勝旗が手渡される。

それを受け取ったのは、もちろん凛音。

 
そして、続いてMVPが発表された。

 
「総合MVPは、3種目で決定的な結果を出した――桐嶋凛音君!」

 
またしても盛大な拍手。

だが、凛音はすっとマイクを取り、全員の前で口を開いた。
 

「――このトロフィーは、俺だけじゃ意味がねぇ」

 
間を置いて、もう一度。

 
「天音。お前、受け取ってくれ」


一瞬、空気が止まった。

応援団エリアで目を丸くしていた天音は、名前を呼ばれてぽかんとしたまま立ち上がる。

「あ、は、はいっ!」

スキップでもするかのように駆け寄って、
凛音の隣に立ち、差し出されたトロフィーを受け取った。

「わあ……重いっ!」

思わず声に出して笑う彼女に、
会場中から笑いとシャッター音が飛び交う。
 

「ちょ……まじで映画かこれ……」

「友和・百恵の再来って、言ってるカメラマンいたぞ……」

「保存した……一生保存する……」
 

凛音は優勝旗を片手に、天音の頭をぽん、と軽く叩く。

「お前がいたから、勝てたんだよ」

 
天音は、顔を真っ赤にしながら、でも嬉しそうに笑った。
 


 

表彰式の後
――最後のサプライズイベントが始まる。

なんと、美沙の会社に所属する超人気アイドルグループ「FLARE☆」がサプライズ登場。

体育祭のエンディングとして、ミニライブを開催することになっていた。
 

ステージに立つ5人のアイドルたちは、凛音の後輩モデルでもあり、何度も共演した仲。

「今日は、凛音先輩の晴れ舞台ってことで、勝手に応援に来ちゃいましたー!」

凛音に手を振るその様子を見て、
天音がややムスッとする。

 
(あの……ちょっとだけ……もやもやする)

女子たちが舞台から凛音に手を振り、会釈を返す凛音にざわつく会場。

だが、凛音は真っ直ぐ天音のほうを向いて、言い放つ。

 
「――お前の声援だけあれば、俺は世界にも勝てる」

 
ドン。と何かが胸に響いた。

それは天音だけじゃない。
観客席の女子、男子、教師すら――全員が感じた。

「……尊い」
「語彙力を失うとはこのことか」
「わたしこの恋を見守って死にたい」

美咲はその様子をすべてライブ中継しながら、
「推しカプ完結編まであと何話!?教えてください!!」と叫んでいた。

 

 

日が暮れるころ。

嵐のような体育祭が終わった。

けれど――その余韻は、校内だけでなく、SNSを通じて全国へと拡散し続けていた。

“美しき疾走”“俺だけの姫抱き”“天音の笑顔で凛音が覚醒”

ありとあらゆる見出しが並び、
ネットでは「桐嶋凛音・非公式ファンクラブ」がまたも急増。

 
だが、凛音本人はただ、帰り道で天音の隣に立ち、そっと手を握っていた。

「……ありがとな」

「えっ?私、なにかしたっけ?」

「お前が隣にいるだけで、全部うまくいく」
 

それだけで、
天音の顔は、陽の光よりも眩しくなった。

 
【つづく】
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