俺様王子は女嫌い?!本当は一途すぎて幼馴染のキミしか見てない

naomikoryo

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第32話「ステージの向こう、光と影」

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収録当日の朝、空はやけに青かった。

晴れ渡る空の下、凛音と天音は《Lily+》専用車でテレビ局に向かっていた。
凛音は相変わらず無口なまま隣に座り、天音は緊張で指先が冷たくなっていた。

 

「……ねぇ、凛音」

 

「ん」

 

「今日、もし……私がうまく歌えなかったらどうしよう」

 

「歌え」

 

「えっ、えっ?」

 

「うまく歌えないなら、お前のままで歌え。
俺が隣にいる限り、観客は“感動”する。断言する」

 

そのあまりに俺様な物言いに、天音は思わず笑ってしまった。

 

「……うん。うんっ。信じるよ、凛音のことも、私の声も」

 

「いい子だ」

 

車内の空気が少しだけ柔らかくなった、その瞬間――
遠くに見えてきたのは、あまりに大きなテレビ局の建物。

緊張が再び、天音の胸を締めつけた。

 



 

テレビ局のリハーサル室には、全国から集まった十数組の出場者たちが並んでいた。
その誰もが、音楽専門学校やボーカルスクールの精鋭、プロ予備軍といった雰囲気を纏っていた。

 

「……あれが噂の“R+T”? 桐嶋凛音ってモデルもやってるらしいじゃん」
「女の方……ちょっと素人感強くない? まぁ、見た目はいいけどさ」

 

ささやかれる声、冷たい視線。
天音はそれを聞き流そうとして、でもやっぱり気になってしまっていた。

 

(凛音は……あんなふうに見られても堂々としてるのに……)

 

一方で、凛音はまったく気にした様子もなく、いつも通りのクールな表情を浮かべていた。

 

「おい、顔が死んでるぞ、天音」

 

「っ、ご、ごめんっ!」

 

「本番は“ステージ”が世界の中心だ。周りはどうでもいい。
お前の声だけ響けば、それで世界は黙る」

 

「……うん」

 

天音はぎゅっと拳を握った。
凛音の隣に立つ。
それはきっと、“見られる”だけじゃなく、“試される”場所に立つことでもあった。

 



 

本番前、ステージ袖。
照明は落とされ、スタッフの合図で収録が開始された。

会場には観客が入り、ライトがステージを照らし出す。

モニター越しには、全国数百万人の視聴者がいる。

 

紹介アナウンスが響いた。

「続いての出場は、注目の新人ユニット《R+T》。
合唱動画から一躍話題となった、2人の透明なハーモニーをご覧ください」

 

客席から拍手が起こる。
凛音が一歩、舞台へ出る。
そして天音の手を引く。

 

(手、汗かいてる……でも、ぎゅっとしてくれてる)

 

天音はそれだけで、心がふっと軽くなるのを感じた。

 



 

イントロが始まった。

1曲目は、《新曲》――
プロ作家によって書き下ろされたデビュー曲候補「Bright Lullaby」。

 

凛音の低く甘い声が、静かに夜を描き出すように響く。

天音のパートが来た。

少し震える声。でも、まっすぐ。

徐々に重なるハーモニー。
凛音が一歩横に寄って、天音の肩に手を置いた瞬間――

音の層が変わった。

観客の中に、涙を浮かべる人すらいた。

 

パフォーマンスが終わった瞬間。

数秒の静寂のあと、会場が拍手と歓声で包まれた。

天音は、初めて味わうその“音の洪水”に、心が震えた。

 

(あぁ……これが、ステージなんだ)

(これが、凛音の隣で見る景色なんだ……)

 

 



 

控え室。

天音は、ボーッとしたままソファに座っていた。

 

「……私、本当に、歌ったんだよね」

 

「うん。歌ってた。泣きそうな顔だったけどな」

 

「ひどい~~!」

 

2人が笑い合っていると、そこにスタッフが駆け込んできた。

 

「お二人、控室でお待ちください!審査員の方が直々にお話されたいと!」

 

「……えっ」

 

凛音が目を細めた。

「なんだ、もう騒がれるのか」

 

天音は思わず口を押さえた。

 

「……夢、なのかな。これ」

 

「夢じゃねぇよ。現実だ。
だから、お前はこれからも俺と並んで歩け」

 

「……うん。行こう、凛音」

 

2人は手を取り合って立ち上がる。

その一歩は、光の先を選ぶ道。

だが同時に、影に耐える覚悟の始まりでもあった。

 
【つづく】
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