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第31話「注がれる視線、守りたい想い」
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「凛音くんと天音ちゃんが、デビューだってぇ!?」
「テレビ出るって、マジ!?録画しなきゃ!」
「2人って、まだ付き合ってるの?結婚とかしちゃうの!?」
朝の教室は、騒然としていた。
それもそのはず、昨晩――
凛音と天音が仮所属ユニット《R+T》としてオーディション番組に出演決定、という情報が
《Lily+》公式SNSから発表されたのだ。
しかも、第一回放送は来週金曜日のゴールデンタイム。
SNSではすでに“新星美声カップル”などとタグが付き、
2人の合唱コンクール時の映像が再バズ中。
凛音は相変わらず席に座って無表情だが、
その机の上には祝福のメモやお菓子、応援グッズがずらりと並んでいた。
「これ、配信者かアイドルの控え室かよ……」
悠真が苦笑いしながら隣でつぶやいた。
「まあ、でも……俺は嬉しいけどな。
凛音が“何かを目指してる”のって、初めて見た気がするから」
その隣では、天音が真っ赤な顔をして小さくなっていた。
「う、うぅ……人の視線が突き刺さるぅ……」
「いつもの天然天音どこいった」
凛音がボソッとつぶやくと、天音はちらりと彼を見上げた。
「……だって、凛音は“見られること”慣れてるでしょ。私なんて、こんなに注目されるの初めてで……」
「慣れとか関係ねぇよ」
「え?」
「俺が見てるのは、お前だけだ。それ以外、ノイズだ」
「っ……///」
それだけで、天音の頬は真っ赤に染まる。
けれど――そのやりとりを、別の角度から見ている視線があった。
スマホの画面越しに、怒りの絵文字が並ぶ。
「あの女、また凛音くんにベタベタ……」
「天音って誰?一般人でしょ?顔普通じゃん」
「消えてほしい……彼の邪魔」
──天音に向けられる、歪んだ“ファン心理”。
凛音の知名度が上がるほどに、
それは形を変えて、鋭い棘となって彼女に刺さりはじめていた。
◆
その日の夜、天音はスマホを握ったまま、ため息をついていた。
(見ちゃダメだってわかってるのに……)
通知を切っても、コメントは増え続ける。
天音個人のSNSは非公開のまま。
でも、《R+T》公式アカウントの投稿には必ず数件の“悪意”が混じっている。
「……私、足を引っ張ってるのかな……」
机の上には、歌の練習用ノート。
どんなに音程が良くなっても、どんなに褒められても、
たった一言の中傷で、自信は簡単に崩れてしまう。
「天音、いる?」
ノックもせずに部屋に入ってきたのは――
もちろん、凛音。
「……あ、うん」
「やっぱり。顔に書いてある。“落ちてます”ってな」
「うう……ばれてる……」
凛音は天音の隣に腰を下ろし、スマホを指差した。
「見たのか、SNS」
「……うん」
「見んなって言ったのに」
「でも……気になるよ、どうしても。
私は“凛音の隣”にいるだけで、何もしないくせに。
それで、嫌われて、悪く言われて……それって、当然じゃないかなって……」
天音が声を震わせる。
その瞬間――
「黙れ」
凛音の低く、鋭い声が落ちた。
「お前が“何もしてない”とか言うな。
お前が隣にいてくれるから、俺は歌える。
誰かが叩いたからって、それを“正しい”って思うな」
「……りんね……」
「俺にとって、お前は“特等席”にいる存在だ。
誰が何と言おうと、そこは俺が選んだ場所だ。
だから、気にすんな。俺が全部潰してやる」
その言葉は、強くて、優しくて。
なにより、信じる力に満ちていた。
天音の目から、ぽろっと涙がこぼれた。
「ずるい……そんな風に言われたら……
また、がんばりたくなっちゃう……」
「それでいい。お前の声を聞いて、そう思ったヤツがいれば、それでいい」
凛音は、彼女の手を握った。
その手のぬくもりが、世界のすべての傷から守ってくれるようだった。
◆
翌日、校内に張り出されたのは――
《R+T》オーディション番組初出演記念
放課後トークイベント開催決定!
校長の許可が下りて、学内でもファンイベントが開けることになったのだ。
悠真と夏菜が中心となって企画し、
クラスメイト全員が運営を手伝ってくれるという形に。
「もう私たちの手を離れたね、悠真」
「でも、嬉しいな。あいつら、ほんとに走り出したんだ」
放課後。準備中の教室で、凛音と天音はお揃いのブレザー姿で立っていた。
カメラ、ステージ、マイク。
そして、見守るみんなの眼差し。
凛音がそっと囁いた。
「俺だけを見てろ。俺も、お前しか見てねぇから」
天音は、にっこりと笑ってうなずいた。
「うん。約束する」
そして、ステージのライトが灯る。
2人の物語は、これからますます加速していく。
【つづく】
「テレビ出るって、マジ!?録画しなきゃ!」
「2人って、まだ付き合ってるの?結婚とかしちゃうの!?」
朝の教室は、騒然としていた。
それもそのはず、昨晩――
凛音と天音が仮所属ユニット《R+T》としてオーディション番組に出演決定、という情報が
《Lily+》公式SNSから発表されたのだ。
しかも、第一回放送は来週金曜日のゴールデンタイム。
SNSではすでに“新星美声カップル”などとタグが付き、
2人の合唱コンクール時の映像が再バズ中。
凛音は相変わらず席に座って無表情だが、
その机の上には祝福のメモやお菓子、応援グッズがずらりと並んでいた。
「これ、配信者かアイドルの控え室かよ……」
悠真が苦笑いしながら隣でつぶやいた。
「まあ、でも……俺は嬉しいけどな。
凛音が“何かを目指してる”のって、初めて見た気がするから」
その隣では、天音が真っ赤な顔をして小さくなっていた。
「う、うぅ……人の視線が突き刺さるぅ……」
「いつもの天然天音どこいった」
凛音がボソッとつぶやくと、天音はちらりと彼を見上げた。
「……だって、凛音は“見られること”慣れてるでしょ。私なんて、こんなに注目されるの初めてで……」
「慣れとか関係ねぇよ」
「え?」
「俺が見てるのは、お前だけだ。それ以外、ノイズだ」
「っ……///」
それだけで、天音の頬は真っ赤に染まる。
けれど――そのやりとりを、別の角度から見ている視線があった。
スマホの画面越しに、怒りの絵文字が並ぶ。
「あの女、また凛音くんにベタベタ……」
「天音って誰?一般人でしょ?顔普通じゃん」
「消えてほしい……彼の邪魔」
──天音に向けられる、歪んだ“ファン心理”。
凛音の知名度が上がるほどに、
それは形を変えて、鋭い棘となって彼女に刺さりはじめていた。
◆
その日の夜、天音はスマホを握ったまま、ため息をついていた。
(見ちゃダメだってわかってるのに……)
通知を切っても、コメントは増え続ける。
天音個人のSNSは非公開のまま。
でも、《R+T》公式アカウントの投稿には必ず数件の“悪意”が混じっている。
「……私、足を引っ張ってるのかな……」
机の上には、歌の練習用ノート。
どんなに音程が良くなっても、どんなに褒められても、
たった一言の中傷で、自信は簡単に崩れてしまう。
「天音、いる?」
ノックもせずに部屋に入ってきたのは――
もちろん、凛音。
「……あ、うん」
「やっぱり。顔に書いてある。“落ちてます”ってな」
「うう……ばれてる……」
凛音は天音の隣に腰を下ろし、スマホを指差した。
「見たのか、SNS」
「……うん」
「見んなって言ったのに」
「でも……気になるよ、どうしても。
私は“凛音の隣”にいるだけで、何もしないくせに。
それで、嫌われて、悪く言われて……それって、当然じゃないかなって……」
天音が声を震わせる。
その瞬間――
「黙れ」
凛音の低く、鋭い声が落ちた。
「お前が“何もしてない”とか言うな。
お前が隣にいてくれるから、俺は歌える。
誰かが叩いたからって、それを“正しい”って思うな」
「……りんね……」
「俺にとって、お前は“特等席”にいる存在だ。
誰が何と言おうと、そこは俺が選んだ場所だ。
だから、気にすんな。俺が全部潰してやる」
その言葉は、強くて、優しくて。
なにより、信じる力に満ちていた。
天音の目から、ぽろっと涙がこぼれた。
「ずるい……そんな風に言われたら……
また、がんばりたくなっちゃう……」
「それでいい。お前の声を聞いて、そう思ったヤツがいれば、それでいい」
凛音は、彼女の手を握った。
その手のぬくもりが、世界のすべての傷から守ってくれるようだった。
◆
翌日、校内に張り出されたのは――
《R+T》オーディション番組初出演記念
放課後トークイベント開催決定!
校長の許可が下りて、学内でもファンイベントが開けることになったのだ。
悠真と夏菜が中心となって企画し、
クラスメイト全員が運営を手伝ってくれるという形に。
「もう私たちの手を離れたね、悠真」
「でも、嬉しいな。あいつら、ほんとに走り出したんだ」
放課後。準備中の教室で、凛音と天音はお揃いのブレザー姿で立っていた。
カメラ、ステージ、マイク。
そして、見守るみんなの眼差し。
凛音がそっと囁いた。
「俺だけを見てろ。俺も、お前しか見てねぇから」
天音は、にっこりと笑ってうなずいた。
「うん。約束する」
そして、ステージのライトが灯る。
2人の物語は、これからますます加速していく。
【つづく】
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