31 / 55
第31話「注がれる視線、守りたい想い」
しおりを挟む
「凛音くんと天音ちゃんが、デビューだってぇ!?」
「テレビ出るって、マジ!?録画しなきゃ!」
「2人って、まだ付き合ってるの?結婚とかしちゃうの!?」
朝の教室は、騒然としていた。
それもそのはず、昨晩――
凛音と天音が仮所属ユニット《R+T》としてオーディション番組に出演決定、という情報が
《Lily+》公式SNSから発表されたのだ。
しかも、第一回放送は来週金曜日のゴールデンタイム。
SNSではすでに“新星美声カップル”などとタグが付き、
2人の合唱コンクール時の映像が再バズ中。
凛音は相変わらず席に座って無表情だが、
その机の上には祝福のメモやお菓子、応援グッズがずらりと並んでいた。
「これ、配信者かアイドルの控え室かよ……」
悠真が苦笑いしながら隣でつぶやいた。
「まあ、でも……俺は嬉しいけどな。
凛音が“何かを目指してる”のって、初めて見た気がするから」
その隣では、天音が真っ赤な顔をして小さくなっていた。
「う、うぅ……人の視線が突き刺さるぅ……」
「いつもの天然天音どこいった」
凛音がボソッとつぶやくと、天音はちらりと彼を見上げた。
「……だって、凛音は“見られること”慣れてるでしょ。私なんて、こんなに注目されるの初めてで……」
「慣れとか関係ねぇよ」
「え?」
「俺が見てるのは、お前だけだ。それ以外、ノイズだ」
「っ……///」
それだけで、天音の頬は真っ赤に染まる。
けれど――そのやりとりを、別の角度から見ている視線があった。
スマホの画面越しに、怒りの絵文字が並ぶ。
「あの女、また凛音くんにベタベタ……」
「天音って誰?一般人でしょ?顔普通じゃん」
「消えてほしい……彼の邪魔」
──天音に向けられる、歪んだ“ファン心理”。
凛音の知名度が上がるほどに、
それは形を変えて、鋭い棘となって彼女に刺さりはじめていた。
◆
その日の夜、天音はスマホを握ったまま、ため息をついていた。
(見ちゃダメだってわかってるのに……)
通知を切っても、コメントは増え続ける。
天音個人のSNSは非公開のまま。
でも、《R+T》公式アカウントの投稿には必ず数件の“悪意”が混じっている。
「……私、足を引っ張ってるのかな……」
机の上には、歌の練習用ノート。
どんなに音程が良くなっても、どんなに褒められても、
たった一言の中傷で、自信は簡単に崩れてしまう。
「天音、いる?」
ノックもせずに部屋に入ってきたのは――
もちろん、凛音。
「……あ、うん」
「やっぱり。顔に書いてある。“落ちてます”ってな」
「うう……ばれてる……」
凛音は天音の隣に腰を下ろし、スマホを指差した。
「見たのか、SNS」
「……うん」
「見んなって言ったのに」
「でも……気になるよ、どうしても。
私は“凛音の隣”にいるだけで、何もしないくせに。
それで、嫌われて、悪く言われて……それって、当然じゃないかなって……」
天音が声を震わせる。
その瞬間――
「黙れ」
凛音の低く、鋭い声が落ちた。
「お前が“何もしてない”とか言うな。
お前が隣にいてくれるから、俺は歌える。
誰かが叩いたからって、それを“正しい”って思うな」
「……りんね……」
「俺にとって、お前は“特等席”にいる存在だ。
誰が何と言おうと、そこは俺が選んだ場所だ。
だから、気にすんな。俺が全部潰してやる」
その言葉は、強くて、優しくて。
なにより、信じる力に満ちていた。
天音の目から、ぽろっと涙がこぼれた。
「ずるい……そんな風に言われたら……
また、がんばりたくなっちゃう……」
「それでいい。お前の声を聞いて、そう思ったヤツがいれば、それでいい」
凛音は、彼女の手を握った。
その手のぬくもりが、世界のすべての傷から守ってくれるようだった。
◆
翌日、校内に張り出されたのは――
《R+T》オーディション番組初出演記念
放課後トークイベント開催決定!
校長の許可が下りて、学内でもファンイベントが開けることになったのだ。
悠真と夏菜が中心となって企画し、
クラスメイト全員が運営を手伝ってくれるという形に。
「もう私たちの手を離れたね、悠真」
「でも、嬉しいな。あいつら、ほんとに走り出したんだ」
放課後。準備中の教室で、凛音と天音はお揃いのブレザー姿で立っていた。
カメラ、ステージ、マイク。
そして、見守るみんなの眼差し。
凛音がそっと囁いた。
「俺だけを見てろ。俺も、お前しか見てねぇから」
天音は、にっこりと笑ってうなずいた。
「うん。約束する」
そして、ステージのライトが灯る。
2人の物語は、これからますます加速していく。
【つづく】
「テレビ出るって、マジ!?録画しなきゃ!」
「2人って、まだ付き合ってるの?結婚とかしちゃうの!?」
朝の教室は、騒然としていた。
それもそのはず、昨晩――
凛音と天音が仮所属ユニット《R+T》としてオーディション番組に出演決定、という情報が
《Lily+》公式SNSから発表されたのだ。
しかも、第一回放送は来週金曜日のゴールデンタイム。
SNSではすでに“新星美声カップル”などとタグが付き、
2人の合唱コンクール時の映像が再バズ中。
凛音は相変わらず席に座って無表情だが、
その机の上には祝福のメモやお菓子、応援グッズがずらりと並んでいた。
「これ、配信者かアイドルの控え室かよ……」
悠真が苦笑いしながら隣でつぶやいた。
「まあ、でも……俺は嬉しいけどな。
凛音が“何かを目指してる”のって、初めて見た気がするから」
その隣では、天音が真っ赤な顔をして小さくなっていた。
「う、うぅ……人の視線が突き刺さるぅ……」
「いつもの天然天音どこいった」
凛音がボソッとつぶやくと、天音はちらりと彼を見上げた。
「……だって、凛音は“見られること”慣れてるでしょ。私なんて、こんなに注目されるの初めてで……」
「慣れとか関係ねぇよ」
「え?」
「俺が見てるのは、お前だけだ。それ以外、ノイズだ」
「っ……///」
それだけで、天音の頬は真っ赤に染まる。
けれど――そのやりとりを、別の角度から見ている視線があった。
スマホの画面越しに、怒りの絵文字が並ぶ。
「あの女、また凛音くんにベタベタ……」
「天音って誰?一般人でしょ?顔普通じゃん」
「消えてほしい……彼の邪魔」
──天音に向けられる、歪んだ“ファン心理”。
凛音の知名度が上がるほどに、
それは形を変えて、鋭い棘となって彼女に刺さりはじめていた。
◆
その日の夜、天音はスマホを握ったまま、ため息をついていた。
(見ちゃダメだってわかってるのに……)
通知を切っても、コメントは増え続ける。
天音個人のSNSは非公開のまま。
でも、《R+T》公式アカウントの投稿には必ず数件の“悪意”が混じっている。
「……私、足を引っ張ってるのかな……」
机の上には、歌の練習用ノート。
どんなに音程が良くなっても、どんなに褒められても、
たった一言の中傷で、自信は簡単に崩れてしまう。
「天音、いる?」
ノックもせずに部屋に入ってきたのは――
もちろん、凛音。
「……あ、うん」
「やっぱり。顔に書いてある。“落ちてます”ってな」
「うう……ばれてる……」
凛音は天音の隣に腰を下ろし、スマホを指差した。
「見たのか、SNS」
「……うん」
「見んなって言ったのに」
「でも……気になるよ、どうしても。
私は“凛音の隣”にいるだけで、何もしないくせに。
それで、嫌われて、悪く言われて……それって、当然じゃないかなって……」
天音が声を震わせる。
その瞬間――
「黙れ」
凛音の低く、鋭い声が落ちた。
「お前が“何もしてない”とか言うな。
お前が隣にいてくれるから、俺は歌える。
誰かが叩いたからって、それを“正しい”って思うな」
「……りんね……」
「俺にとって、お前は“特等席”にいる存在だ。
誰が何と言おうと、そこは俺が選んだ場所だ。
だから、気にすんな。俺が全部潰してやる」
その言葉は、強くて、優しくて。
なにより、信じる力に満ちていた。
天音の目から、ぽろっと涙がこぼれた。
「ずるい……そんな風に言われたら……
また、がんばりたくなっちゃう……」
「それでいい。お前の声を聞いて、そう思ったヤツがいれば、それでいい」
凛音は、彼女の手を握った。
その手のぬくもりが、世界のすべての傷から守ってくれるようだった。
◆
翌日、校内に張り出されたのは――
《R+T》オーディション番組初出演記念
放課後トークイベント開催決定!
校長の許可が下りて、学内でもファンイベントが開けることになったのだ。
悠真と夏菜が中心となって企画し、
クラスメイト全員が運営を手伝ってくれるという形に。
「もう私たちの手を離れたね、悠真」
「でも、嬉しいな。あいつら、ほんとに走り出したんだ」
放課後。準備中の教室で、凛音と天音はお揃いのブレザー姿で立っていた。
カメラ、ステージ、マイク。
そして、見守るみんなの眼差し。
凛音がそっと囁いた。
「俺だけを見てろ。俺も、お前しか見てねぇから」
天音は、にっこりと笑ってうなずいた。
「うん。約束する」
そして、ステージのライトが灯る。
2人の物語は、これからますます加速していく。
【つづく】
0
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる