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第30話「プロローグの、その先へ」
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週明け、朝の電車は少しだけ混んでいた。
しかし、凛音と天音の心の中は、
それ以上にいろんな感情が混みあっていた。
「……本当に、始まっちゃったね」
隣に座る天音が、不安げに笑う。
電車の窓には、ぎこちない二人の表情が映っていた。
「今日って、仮所属の契約説明だろ。
なんでそんなに緊張してんだよ。やめるなら今のうちだぞ」
「や、やめないよ! でも、なんか……
凛音の隣に立つって、思ったよりすごく大きなことなんだなって……」
「……だったら、ついてこい。お前が迷わないように、俺が先に立って引っ張ってやる」
その一言で、天音の背筋が少し伸びた。
(凛音がいるなら、私は……)
天音の手のひらには、彼から渡された小さなメモがあった。
《いつか世界の真ん中で、お前の歌声が響く日が来る。
でも俺は、今の“素直に笑うお前”の声の方が好きだ》
彼なりの、激励だった。
◆
午後3時、表参道。
凛音と天音は、美沙の事務所《Lily+》のオフィスにいた。
受付横のサロンは、すでに撮影機材や録音ブースが設置されており、
準備万端というより、もはやスタンバイ状態だった。
「りんおん~♡ 天音ちゃん~♡ こっち~~!」
手を振って出迎えるのは、当然ながら美咲。
その横では、由依が契約書を数枚束ね、
紗奈が「デビュー衣装の仮案できた♡」とスケッチブックを振っていた。
(桐嶋家、恐るべし……)
天音がひそかにそう思ったのは言うまでもない。
◆
まずは、面談。
「ユニット名は、“R+T”で仮称ね。シンプルだけど強いでしょ?」
「ジャンルはJ-popで、少しエレクトロとアコースティックを混ぜる感じ」
「方向性としては、物語性のあるラブソング中心になると思うわ」
プロデューサーたちの説明に、凛音は腕を組みながら頷き、
天音はこっそりノートにメモを取りながら、目を丸くしていた。
「最初のレコーディングは、来週末。
今日は、仮歌とスタジオ慣れのためのプレセッションってことで」
スタッフの一人が案内する。
録音ブースは、思ったよりも静かで、広かった。
天音はその中に立つと、急に喉が詰まった気がした。
(さっきまでは平気だったのに、マイクの前に立つと、身体が動かなくなる……)
そのとき、凛音がマイクを通さず、彼女に目だけで合図を送った。
口パクで「大丈夫だ」と。
それだけで、天音の呼吸が整い始めた。
2人での初の仮レコーディング。
選ばれたのは、彼らの運命を変えたあの楽曲――
「君と重なる旋律」
ピアノのイントロが流れる。
凛音が歌い始め、音に寄り添うように、天音の声が重なる。
練習よりも、合唱の時よりも、もっと深く繋がる音。
録音室の外では、スタッフたちが一様に感嘆の息を漏らしていた。
「……あの二人、まじでヤバい。音だけで物語になってる」
「この化学反応は、狙ってできるもんじゃない」
「リリース予定、前倒しできないか?」
録音終了後、天音は汗をぬぐいながら、放心状態で立っていた。
そんな彼女の肩を、凛音がぽんと叩いた。
「……まあ、上出来だな」
「ほ、本当に……?私、ちょっとミスしちゃったかもって……」
「本番で完璧にやりゃいい。今日は、“慣れる”ってだけで上等」
「……ありがとう、凛音。やっぱり、私、歌うの好きだよ」
「知ってる。だから、俺も一緒に歌うんだろ?」
「……うんっ!」
◆
帰りの電車。
凛音は、寝たふりをして隣の天音を見ていた。
彼女の目は、どこか遠くを見ていた。
夢を追う目だった。
その横顔を、凛音はそっと見守った。
(この先、きっといろんな壁がある)
(だけど――この手を放すつもりはねぇ)
ふと、天音が気づいたように彼を見た。
「……なんか、見てた?」
「寝てた」
「ウソばっかり~!」
2人の笑い声が、静かな車内に響いた。
外は少し曇り空。
でもその中で、確かに“光の一歩”が、今、踏み出されていた。
しかし、凛音と天音の心の中は、
それ以上にいろんな感情が混みあっていた。
「……本当に、始まっちゃったね」
隣に座る天音が、不安げに笑う。
電車の窓には、ぎこちない二人の表情が映っていた。
「今日って、仮所属の契約説明だろ。
なんでそんなに緊張してんだよ。やめるなら今のうちだぞ」
「や、やめないよ! でも、なんか……
凛音の隣に立つって、思ったよりすごく大きなことなんだなって……」
「……だったら、ついてこい。お前が迷わないように、俺が先に立って引っ張ってやる」
その一言で、天音の背筋が少し伸びた。
(凛音がいるなら、私は……)
天音の手のひらには、彼から渡された小さなメモがあった。
《いつか世界の真ん中で、お前の歌声が響く日が来る。
でも俺は、今の“素直に笑うお前”の声の方が好きだ》
彼なりの、激励だった。
◆
午後3時、表参道。
凛音と天音は、美沙の事務所《Lily+》のオフィスにいた。
受付横のサロンは、すでに撮影機材や録音ブースが設置されており、
準備万端というより、もはやスタンバイ状態だった。
「りんおん~♡ 天音ちゃん~♡ こっち~~!」
手を振って出迎えるのは、当然ながら美咲。
その横では、由依が契約書を数枚束ね、
紗奈が「デビュー衣装の仮案できた♡」とスケッチブックを振っていた。
(桐嶋家、恐るべし……)
天音がひそかにそう思ったのは言うまでもない。
◆
まずは、面談。
「ユニット名は、“R+T”で仮称ね。シンプルだけど強いでしょ?」
「ジャンルはJ-popで、少しエレクトロとアコースティックを混ぜる感じ」
「方向性としては、物語性のあるラブソング中心になると思うわ」
プロデューサーたちの説明に、凛音は腕を組みながら頷き、
天音はこっそりノートにメモを取りながら、目を丸くしていた。
「最初のレコーディングは、来週末。
今日は、仮歌とスタジオ慣れのためのプレセッションってことで」
スタッフの一人が案内する。
録音ブースは、思ったよりも静かで、広かった。
天音はその中に立つと、急に喉が詰まった気がした。
(さっきまでは平気だったのに、マイクの前に立つと、身体が動かなくなる……)
そのとき、凛音がマイクを通さず、彼女に目だけで合図を送った。
口パクで「大丈夫だ」と。
それだけで、天音の呼吸が整い始めた。
2人での初の仮レコーディング。
選ばれたのは、彼らの運命を変えたあの楽曲――
「君と重なる旋律」
ピアノのイントロが流れる。
凛音が歌い始め、音に寄り添うように、天音の声が重なる。
練習よりも、合唱の時よりも、もっと深く繋がる音。
録音室の外では、スタッフたちが一様に感嘆の息を漏らしていた。
「……あの二人、まじでヤバい。音だけで物語になってる」
「この化学反応は、狙ってできるもんじゃない」
「リリース予定、前倒しできないか?」
録音終了後、天音は汗をぬぐいながら、放心状態で立っていた。
そんな彼女の肩を、凛音がぽんと叩いた。
「……まあ、上出来だな」
「ほ、本当に……?私、ちょっとミスしちゃったかもって……」
「本番で完璧にやりゃいい。今日は、“慣れる”ってだけで上等」
「……ありがとう、凛音。やっぱり、私、歌うの好きだよ」
「知ってる。だから、俺も一緒に歌うんだろ?」
「……うんっ!」
◆
帰りの電車。
凛音は、寝たふりをして隣の天音を見ていた。
彼女の目は、どこか遠くを見ていた。
夢を追う目だった。
その横顔を、凛音はそっと見守った。
(この先、きっといろんな壁がある)
(だけど――この手を放すつもりはねぇ)
ふと、天音が気づいたように彼を見た。
「……なんか、見てた?」
「寝てた」
「ウソばっかり~!」
2人の笑い声が、静かな車内に響いた。
外は少し曇り空。
でもその中で、確かに“光の一歩”が、今、踏み出されていた。
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