俺様王子は女嫌い?!本当は一途すぎて幼馴染のキミしか見てない

naomikoryo

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第30話「プロローグの、その先へ」

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週明け、朝の電車は少しだけ混んでいた。

しかし、凛音と天音の心の中は、
それ以上にいろんな感情が混みあっていた。

 
「……本当に、始まっちゃったね」
 

隣に座る天音が、不安げに笑う。

電車の窓には、ぎこちない二人の表情が映っていた。
 

「今日って、仮所属の契約説明だろ。
なんでそんなに緊張してんだよ。やめるなら今のうちだぞ」
 

「や、やめないよ! でも、なんか……
凛音の隣に立つって、思ったよりすごく大きなことなんだなって……」
 

「……だったら、ついてこい。お前が迷わないように、俺が先に立って引っ張ってやる」

 
その一言で、天音の背筋が少し伸びた。
 

(凛音がいるなら、私は……)
 

天音の手のひらには、彼から渡された小さなメモがあった。

《いつか世界の真ん中で、お前の歌声が響く日が来る。
でも俺は、今の“素直に笑うお前”の声の方が好きだ》

彼なりの、激励だった。

 

 

午後3時、表参道。
凛音と天音は、美沙の事務所《Lily+》のオフィスにいた。

受付横のサロンは、すでに撮影機材や録音ブースが設置されており、
準備万端というより、もはやスタンバイ状態だった。
 

「りんおん~♡ 天音ちゃん~♡ こっち~~!」

 
手を振って出迎えるのは、当然ながら美咲。

その横では、由依が契約書を数枚束ね、
紗奈が「デビュー衣装の仮案できた♡」とスケッチブックを振っていた。
 

(桐嶋家、恐るべし……)

天音がひそかにそう思ったのは言うまでもない。
 


 

まずは、面談。

「ユニット名は、“R+T”で仮称ね。シンプルだけど強いでしょ?」
「ジャンルはJ-popで、少しエレクトロとアコースティックを混ぜる感じ」
「方向性としては、物語性のあるラブソング中心になると思うわ」

プロデューサーたちの説明に、凛音は腕を組みながら頷き、
天音はこっそりノートにメモを取りながら、目を丸くしていた。
 

「最初のレコーディングは、来週末。
今日は、仮歌とスタジオ慣れのためのプレセッションってことで」
 

スタッフの一人が案内する。

録音ブースは、思ったよりも静かで、広かった。
 

天音はその中に立つと、急に喉が詰まった気がした。

(さっきまでは平気だったのに、マイクの前に立つと、身体が動かなくなる……)

そのとき、凛音がマイクを通さず、彼女に目だけで合図を送った。

口パクで「大丈夫だ」と。

それだけで、天音の呼吸が整い始めた。

 
2人での初の仮レコーディング。

選ばれたのは、彼らの運命を変えたあの楽曲――

「君と重なる旋律」

 
ピアノのイントロが流れる。
凛音が歌い始め、音に寄り添うように、天音の声が重なる。

練習よりも、合唱の時よりも、もっと深く繋がる音。

録音室の外では、スタッフたちが一様に感嘆の息を漏らしていた。

 
「……あの二人、まじでヤバい。音だけで物語になってる」
「この化学反応は、狙ってできるもんじゃない」
「リリース予定、前倒しできないか?」
 

録音終了後、天音は汗をぬぐいながら、放心状態で立っていた。

そんな彼女の肩を、凛音がぽんと叩いた。
 

「……まあ、上出来だな」

 
「ほ、本当に……?私、ちょっとミスしちゃったかもって……」

 
「本番で完璧にやりゃいい。今日は、“慣れる”ってだけで上等」

 
「……ありがとう、凛音。やっぱり、私、歌うの好きだよ」
 

「知ってる。だから、俺も一緒に歌うんだろ?」
 

「……うんっ!」
 



 
帰りの電車。
凛音は、寝たふりをして隣の天音を見ていた。

彼女の目は、どこか遠くを見ていた。
夢を追う目だった。

その横顔を、凛音はそっと見守った。
 

(この先、きっといろんな壁がある)

(だけど――この手を放すつもりはねぇ)
 

ふと、天音が気づいたように彼を見た。

「……なんか、見てた?」

「寝てた」

「ウソばっかり~!」
 

2人の笑い声が、静かな車内に響いた。

外は少し曇り空。
でもその中で、確かに“光の一歩”が、今、踏み出されていた。
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