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第10話:演技か真実か?探偵、最終面接に挑む
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~演じる者と、見抜く者~
薄暗い演劇部の部室。
簡易ステージの上にスポットライトが一灯だけ灯されている。
マコト、早紀、美穂、蓮、そして詩織と佐伯も見学として同席していた。
綾小路 結(あやのこうじ ゆい)は、演劇部の部長としてステージに立つ。
「さて、これから私は三つの物語を話す」
舞台に立つその姿は、性別も年齢も曖昧で、ただ“演者”としての存在感に満ちていた。
「ひとつは“真実”」
「ひとつは“嘘”」
「ひとつは“演技”」
「君が見抜いたら、私は生徒会補佐として正式に加わる。
だが、外したら……私が“名探偵”の座を奪わせてもらう」
「おいそれ副会長もびっくりのハードル設定じゃない!?」
「つまり勝負ね」と早紀が腕を組んで見守る。
「よーし……“舞台での勝負”も、面白いじゃないか!」
「またノってるよこの人……」
■第一話:白い猫の話
綾小路は、表情をゆっくり変化させながら話し始めた。
「私は小学生の頃、白い猫を飼っていた。
雨の日に拾った子で、名前は“シロ”。
とても臆病な猫だったけど、ある日、私が熱を出して寝込んだ夜、
シロが布団の中に入ってきて、ずっとそばにいてくれた。
あのときの温もりは、今でも覚えてる」
語り終えた綾小路は、わずかに目を伏せる。
表情には感情の揺れがあるようにも見える。
マコトは腕を組み、唸った。
「……ふむ、“記憶の再現”か……でも、“演技”で泣けるタイプの人間かもしれない……!」
■第二話:万引きの話
舞台のライトが少し赤みを帯びる。
「私は中学のとき、一度だけ万引きをしたことがある。
小さな駄菓子屋。飴玉ひとつ。
店主に見つかって、問い詰められて――
……泣いたふりをした。
でも、反省はしなかった。
あれが私の“初めての嘘”だった」
静かな沈黙が落ちる。
「おおぅ……ダーク寄りのやつきたぞ……」
「これは……“演技の演技”か?それとも……事実か?」と蓮も考え込む。
■第三話:最初の舞台の話
ライトが白く戻る。綾小路が、柔らかく微笑む。
「中一の文化祭。私は初めて舞台に立った。
台詞はたったひとこと。“おかえりなさい”
たったそれだけだったのに、声が裏返った。
客席が笑って、私は泣きそうだった。
でも、幕が下りたとき、母が笑って言った。
“すごく、あんたらしかった”って。
……私は、そこから演劇が好きになった」
言葉を終え、綾小路は一礼した。
部室は静まり返り、全員が固唾を呑んでマコトの判断を待つ。
■名探偵の推理
マコトはゆっくりと立ち上がった。
手には、いつもの推理ノート(実際は100円ノート)。
「……ふむ。話の構成、視線の動き、声の震え……どれも上手い。が、俺にはわかったぞ!」
「来た、名探偵スイッチ」と美穂がニヤリ。
「**真実は――第一話“白い猫”**だ!」
「根拠は?」と早紀が腕を組む。
「第二話は、語りの途中に“間”が多かった。これは“嘘を考えながら話す”時に出やすい癖!
そして第三話は、語り口が“あまりに整いすぎている”!舞台用の話って感じがした!」
「ふむふむ、では“白い猫”が真実と?」
綾小路は一拍置き、静かに言った。
「……残念、外れ」
「えっ!?」
「正解は第三話“最初の舞台”。それだけが、私の本当の話。
“白い猫”は舞台で使った脚本のワンシーン。
“万引きの話”は、友人の体験談をアレンジした」
「そ、そんな……!俺の洞察力が……!」
「でもね」
綾小路は、やわらかく微笑んだ。
「“猫の話が一番印象に残った”って顔をしてた。
それだけでも、君が“人の感情”をちゃんと見てるって、わかったよ」
「……ん?」
「つまり――採用です」
「いいのかよ!!?」
「芝居はね、“嘘を通して真実を見せる”もの。
君が見た“感情”が本物なら、それで充分」
■探偵団、ついに完成
翌日、朝の生徒会室。
机にはようやく、7人分のイスが並び、書類もそろった。
会長:真人(マコト)
副会長:早紀
会計:美穂
書記:蓮
補佐①:詩織
補佐②:佐伯
補佐③:綾小路
樋口先生がにやりと笑う。
「ようやく全員そろったな。これで、生徒会として正式に“活動認可”出すぞ」
「やったー!」
「てか、ここからがスタートだからね?わかってる?」
「もちろん!ここから、事件依頼をバンバン受けていくぞー!!」
そのとき、またしても生徒会室のドアがノックされた。
「し、失礼します!先日、お話しした新入生のことで、相談が――!」
1年生の女子生徒が、スケッチブックを抱えて駆け込んでくる。
「来たな……俺たちの、初仕事!」
◆つづく◆
薄暗い演劇部の部室。
簡易ステージの上にスポットライトが一灯だけ灯されている。
マコト、早紀、美穂、蓮、そして詩織と佐伯も見学として同席していた。
綾小路 結(あやのこうじ ゆい)は、演劇部の部長としてステージに立つ。
「さて、これから私は三つの物語を話す」
舞台に立つその姿は、性別も年齢も曖昧で、ただ“演者”としての存在感に満ちていた。
「ひとつは“真実”」
「ひとつは“嘘”」
「ひとつは“演技”」
「君が見抜いたら、私は生徒会補佐として正式に加わる。
だが、外したら……私が“名探偵”の座を奪わせてもらう」
「おいそれ副会長もびっくりのハードル設定じゃない!?」
「つまり勝負ね」と早紀が腕を組んで見守る。
「よーし……“舞台での勝負”も、面白いじゃないか!」
「またノってるよこの人……」
■第一話:白い猫の話
綾小路は、表情をゆっくり変化させながら話し始めた。
「私は小学生の頃、白い猫を飼っていた。
雨の日に拾った子で、名前は“シロ”。
とても臆病な猫だったけど、ある日、私が熱を出して寝込んだ夜、
シロが布団の中に入ってきて、ずっとそばにいてくれた。
あのときの温もりは、今でも覚えてる」
語り終えた綾小路は、わずかに目を伏せる。
表情には感情の揺れがあるようにも見える。
マコトは腕を組み、唸った。
「……ふむ、“記憶の再現”か……でも、“演技”で泣けるタイプの人間かもしれない……!」
■第二話:万引きの話
舞台のライトが少し赤みを帯びる。
「私は中学のとき、一度だけ万引きをしたことがある。
小さな駄菓子屋。飴玉ひとつ。
店主に見つかって、問い詰められて――
……泣いたふりをした。
でも、反省はしなかった。
あれが私の“初めての嘘”だった」
静かな沈黙が落ちる。
「おおぅ……ダーク寄りのやつきたぞ……」
「これは……“演技の演技”か?それとも……事実か?」と蓮も考え込む。
■第三話:最初の舞台の話
ライトが白く戻る。綾小路が、柔らかく微笑む。
「中一の文化祭。私は初めて舞台に立った。
台詞はたったひとこと。“おかえりなさい”
たったそれだけだったのに、声が裏返った。
客席が笑って、私は泣きそうだった。
でも、幕が下りたとき、母が笑って言った。
“すごく、あんたらしかった”って。
……私は、そこから演劇が好きになった」
言葉を終え、綾小路は一礼した。
部室は静まり返り、全員が固唾を呑んでマコトの判断を待つ。
■名探偵の推理
マコトはゆっくりと立ち上がった。
手には、いつもの推理ノート(実際は100円ノート)。
「……ふむ。話の構成、視線の動き、声の震え……どれも上手い。が、俺にはわかったぞ!」
「来た、名探偵スイッチ」と美穂がニヤリ。
「**真実は――第一話“白い猫”**だ!」
「根拠は?」と早紀が腕を組む。
「第二話は、語りの途中に“間”が多かった。これは“嘘を考えながら話す”時に出やすい癖!
そして第三話は、語り口が“あまりに整いすぎている”!舞台用の話って感じがした!」
「ふむふむ、では“白い猫”が真実と?」
綾小路は一拍置き、静かに言った。
「……残念、外れ」
「えっ!?」
「正解は第三話“最初の舞台”。それだけが、私の本当の話。
“白い猫”は舞台で使った脚本のワンシーン。
“万引きの話”は、友人の体験談をアレンジした」
「そ、そんな……!俺の洞察力が……!」
「でもね」
綾小路は、やわらかく微笑んだ。
「“猫の話が一番印象に残った”って顔をしてた。
それだけでも、君が“人の感情”をちゃんと見てるって、わかったよ」
「……ん?」
「つまり――採用です」
「いいのかよ!!?」
「芝居はね、“嘘を通して真実を見せる”もの。
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「てか、ここからがスタートだからね?わかってる?」
「もちろん!ここから、事件依頼をバンバン受けていくぞー!!」
そのとき、またしても生徒会室のドアがノックされた。
「し、失礼します!先日、お話しした新入生のことで、相談が――!」
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「来たな……俺たちの、初仕事!」
◆つづく◆
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