瑞樹と桜子:新婚隣人の恋バナ対決

naomikoryo

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第3章:初恋の輝き

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 「じゃあ、最初は私から話すね!」

 瑞希は楽しそうにカップを置き、勢いよく身を乗り出した。
まるで試験前に「今回は勝つ!」と意気込んでいたあの頃と変わらない。

 桜子はクッキーを一口齧りながら、余裕の表情を作る。
「はいはい、お手並み拝見ってとこね」

 瑞希はニヤリと笑うと、ゆっくりと語り始めた。

-----------------------------------------------------------------

 私の初恋はね、中学二年生のとき。
相手はサッカー部の先輩だったの。

 名前は「藤川先輩」って言って、学年でもけっこう人気があったんだよね。
サッカーがめちゃくちゃ上手くて、地区大会でも活躍してたし、顔もそこそこ整ってたし……
まぁ、よくある「学校の王子様」タイプってやつ?

 でもね、私が好きになった理由はそこじゃなくて。

 ある日、廊下を歩いてたら、たまたま先輩の姿を見かけたの。
部活終わりで、汗だくになりながら水を飲んでたんだけど、その時にグラウンドを見つめる横顔がすっごく真剣でさ。

 なんていうか……キュンとしたの。

 それまで恋愛に興味がなかったわけじゃないけど、「好きになる」ってこういうことなんだって、その瞬間に初めて実感したんだよね。

 で、それからはもう大変。
毎朝、ちょっと早めに登校してサッカー部の朝練をこっそり眺めたり、友達と一緒に体育館裏を通って部活帰りの先輩をチラ見したり……
完全に「片思いあるある」状態。

 でも、そんな私にも奇跡が起きたの!

 ある日、下駄箱で靴を履き替えてたら、偶然先輩と鉢合わせたの。向こうも帰るところで、なんと私に声をかけてきたんだよ!

 「瑞希って言ったよな? 
 俺、前から思ってたけど、お前、すげー足速いよな」

 ……もう、その時の私の心臓の音、聞こえてたんじゃないかってくらいドキドキしたよ!

 実は、体育の授業でリレーをした時、先輩がたまたま見ていたらしくて。
それ以来、私のことを「運動神経がいい子」として認識してくれてたみたい。

 で、そこからちょっとずつ話すようになって、ついに文化祭の後夜祭で告白されたの!!

 先輩、唐突に言ったんだよ? 
「俺、お前のこと、好きかも」って!

 もう、頭の中が真っ白になって、「えっ、えっ?」って感じだったけど、気がついたら「はい!」って答えてた。

 付き合ったのは三ヶ月くらいだったけど、毎日がキラキラしてたなぁ。
初めてのデートで映画館に行って、緊張しすぎてポップコーンをこぼしたり、手を繋ぐタイミングがわからなくてモジモジしたり……。

 ……まぁ、その後、先輩が高校進学で遠くに行っちゃって、結局は自然消滅しちゃったんだけどね。

 でも、私の中で「初恋」といえば、やっぱり藤川先輩なの。

-----------------------------------------------------------------

 瑞希が話し終えると、桜子は「ふーん」とわざとそっけなく相槌を打った。

「なによ、その反応」

「いや、いかにも『青春の初恋』って感じだなーと思って」

「え、いいでしょ? 
 こういうのが王道なの!」

「確かに王道だけど……
 ちょっと甘すぎない?」

「は?」

「だって、それって結局両想いで終わってるじゃん。
 初恋ってもっとほろ苦いものじゃない?」

「はぁ? 
 何その謎の価値観。
 じゃあ、桜子の初恋はどうだったの?」

「……聞きたい?」

「当然! 
 こっちも勝負してるんだから!」

 瑞希が身を乗り出してくるのを見て、桜子はふっと笑った。
そして、静かにカップを置きながら言った。

「私の初恋はね……
 高校一年の時。
 相手は、瑞希も知ってる人だよ」

「え? 
 誰誰!?」

 瑞希が興味津々で桜子を覗き込む。

 桜子はいたずらっぽく微笑みながら、ゆっくりと口を開いた。

「……次の章で話してあげる」

「うわーっ! 
 やり返された!」

 二人の恋バナ対決は、まだまだ続く——。
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