瑞樹と桜子:新婚隣人の恋バナ対決

naomikoryo

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第9章:夫への愚痴大会

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 「さて、うちの翔太は最高の夫って話をしたわけだけど!」

 瑞希は胸を張って、自信満々に言った。

 桜子も微笑みながら頷く。

 「うんうん、圭介も完璧に近い夫って話をしたよね」

 「そうそう! 
 つまり、私たちは最高の旦那を持ってるわけよ!」

 「……ただし!」

 二人は顔を見合わせたあと、同時に大きなため息をついた。

 「「それでも、やっぱりムカつくことはある!!」」

 カップをテーブルに置き、お互い少し前のめりになりながら声を揃える。

 「じゃあ、まずは瑞希から」

 「えぇっ!? 
 ちょっと、桜子からでしょ!」

 「いやいや、自慢合戦の時は瑞希からだったし、今度は私が後にする」

 「くぅ~っ……
 まぁ、いいわ。
 じゃあ、言わせてもらいます!」

 瑞希は腕を組みながら、大きく息を吸い込んだ。

 「まずね、翔太は基本的に優しいし、家事も手伝うの。
 でも! でもね!!」

 瑞希はテーブルをバンッと叩いた。

 「家事を“手伝う”って意識な時点でムカつくのよ!!」

 「……あぁ、それわかる」

 「でしょ!? 
 こっちは共働きなわけじゃん? 
 家事って二人でやるのが普通でしょ? 
 なのに、“俺も手伝うよ”って! 
 いやいや、手伝うんじゃなくて“やる”のが普通でしょ!? 
 なんで“やってあげる”みたいな顔してんのよ!!」

 「うわぁ、それうちの圭介も言う」

 「でしょ!? 
 しかも、私がお願いすると“いいよ、後でやる”って言うんだけど、やらない!!」

 「うん、それもあるある」

 「結局、私が何回も言って、最終的に“言ってくれればやるのに”って言われるの!! 
 言ってるだろが!!!」

 「うちもそれだわ……」

 二人は顔を見合わせ、またしても大きなため息をついた。

 「で、桜子の圭介は?」

 「うーん……
 うちの場合は、“そもそも気づかない”が一番の問題かな」

 「気づかない?」

 「そう。
 例えば、洗濯物が溜まってても気づかない。
 ゴミ箱がパンパンになってても気づかない。
 私が片付けしてても、“あ、掃除するんだ”で終わる」

 「うわぁ、それもムカつくね」

 「でしょ? 
 しかも、指摘すると“え? そんなに溜まってた?”って言うのよ」

 「わかるわかる! 
 なんであいつら、視界に入ってるはずのものが見えないの!?」

 「ほんとそれ! 
 で、私がブチギレると、“そんなに気になるなら、言ってくれればよかったのに”って……
 いや、気づいてくれよ!!」

 「いやもう、それ全国の奥様たちが叫んでるやつよ」

 二人はまたしてもため息をつき、お互いのカップを手に取った。

 「……でもさ」

 桜子がカップを置きながら、少し真剣な顔になった。

 「なんだかんだ言って、結局は旦那たちも悪気があるわけじゃないんだよね」

 「……まぁね」

 「ちゃんと話せば理解してくれるし、言えばやるし……
 ただ、私たちの“言わなくてもやってくれる”って期待が高すぎるのかも」

 「……ぐぬぬ」

 瑞希は腕を組みながら、渋い顔をする。

 「まぁ、確かにそれはそうなんだけどさぁ……!」

 「うん、わかる。
 わかるけど、まぁ、完全に100点の夫なんていないよね」

 「……それも、まぁ、そうだよね」

 二人は苦笑しながら、カップを掲げて軽くぶつけた。

 「結局、お互いの旦那に対する不満って、似たようなものだったね」

 「うん……
 まったく同じってことじゃないけど、基本的に“察してくれない問題”が大きいよね」

 「ほんとそれ」

 「……でも、なんだかんだ言っても、結婚してよかったって思ってるんでしょ?」

 瑞希がそう言うと、桜子は少しだけ驚いた顔をしたあと、ふっと微笑んだ。

 「……まぁね」

 「私も」

 二人はまたしても顔を見合わせて、くすくすと笑った。

 新婚生活は決して完璧ではない。
だけど、笑い合える隣人がいるだけで、少しだけ気が楽になる。

 それは、まるで“戦友”のような感覚だった。
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