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第7話「爆発する気持ち」
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文化祭が終わった翌週の月曜日。
校舎には、つい昨日までの熱気が嘘のように静かな空気が流れていた。
片付けを終えた教室には、いつもの日常が戻りつつある。
けれど、柚葉の胸の中には、昨日の出来事がまだ澱のように残っていた。
あの光景。
あの「あーん」の瞬間。
女子部員の笑い声と、それを断りきれずに口に運んだ風間の表情。
「……あれ、私……ほんとに、見たくなかった。」
誰もいない部室で、ひとり呟いた声が妙に大きく響いた。
今日の部活前、道具の点検をしに先に来ていたのだ。
頭ではわかっている。
風間先輩が悪いわけじゃない。
彼は誰にでも優しいし、空気を壊すような人じゃない。
でも――。
(私だったら、どうだったんだろう。
もし、私があの子みたいに、“あーん”したら……。
先輩は、受け取ってくれたのかな。)
そんなことを考えている自分が、どうしようもなく嫌だった。
(だめだ。なに考えてるの、私。
そもそも、私はキャプテンの彼女でもなんでもないのに。)
だけど、心のどこかで、はっきりとした感情がうずいている。
焼きもち。
独占欲。
もっと、近くにいたいという願い。
その全部に名前をつけるとしたら――それは、もう。
「……好き、なんだろうな。」
自分の口から出たその言葉に、驚くより先に、涙がにじんできた。
(好きなんだ。
先輩のことが……きっと。)
だけど、その“好き”は、伝えても届く保証なんてない。
天然で、優しくて、誰にでも平等な人。
今の関係を壊すのが、怖かった。
それでも、心の中で、何かが「限界だ」と訴えていた。
ガラッ、とドアが開いたのは、そんなタイミングだった。
「あれ、柚葉さん、もう来てたんですね。」
「……風間、先輩……。」
いつも通りの笑顔。
いつも通りの、まっすぐな目。
でも、今はその“いつも通り”が、痛いほどに刺さった。
「……あの、昨日のことなんですけど。」
思わず口が動いた。
気持ちが、もう抑えきれなかった。
「昨日の、あの子とのやりとり……見てたんです。」
「……え?」
「“あーん”してもらって、食べてたの、見てました。
別に、責めてるわけじゃないです。
けど、なんか……すっごく、いやだったんです。」
風間が、少しだけ目を見開いた。
その視線をまっすぐ受け止めながら、柚葉は言葉を続けた。
「なんでだろうって、昨日からずっと考えてて。
それで、今日、ようやくわかったんです。
私、先輩のことが――」
声が震える。
心臓の音が耳の奥でうるさいくらいに響いている。
言ったら、全部が変わる。
それでも。
「――好きです。」
その瞬間、部室が静まり返った。
時計の秒針の音すら、遠く感じるほどに。
風間は、何も言わずに、ただ立ち尽くしていた。
(ああ……やっぱり……だめだったかな。)
柚葉は自分の指先を見つめながら、思った。
返事がない時間が長くなるほど、不安が膨らんでいく。
そんなときだった。
「……ごめんなさい。」
ぽつりと、風間が呟いた。
「えっ……?」
「僕……そういう気持ちに、気づいてなかったんです。
柚葉さんのこと、すごく大事に思ってるし、いつも近くにいてくれて嬉しかったけど……
それが“好き”だって、わからなかった。」
静かな言葉だった。
だけど、柚葉の心に突き刺さるには、十分すぎた。
(やっぱり……届かなかったんだ。)
唇を噛んで、うつむく。
でも、次の瞬間。
「――でも、昨日、柚葉さんの顔見たとき、すっごく焦ったんです。
怒ってるっていうより、悲しそうで。
その顔が、離れなくて。」
柚葉は、ゆっくりと顔を上げた。
風間の目は、真剣だった。
「今日、どうしても話したくて。
だから、早めに来たんです。
僕、まだ“好き”って感情に慣れてないけど……
でも、柚葉さんと一緒にいると、嬉しくて、楽しくて。
守りたいって、いつも思ってます。」
「……それって……。」
「うまく言えないけど。
たぶん、僕も――好きなんだと思います。」
その瞬間、涙がこぼれた。
安心とか、嬉しさとか、ずっと張り詰めていた気持ちが、全部いっぺんに崩れて、
抑えきれなかった。
「なんですか、それ……もっとちゃんと言ってください……。」
「ごめんなさい。
でも、これからはちゃんと、自分の気持ちを言葉にできるように頑張ります。」
「……じゃあ、その頑張る過程に、私も一緒にいていいですか?」
「もちろんです。」
風間は、照れたように笑った。
その笑顔を見て、柚葉は思った。
(この人、たぶん一生“天然”なんだろうな。)
(だけど――この人が好きで、本当に良かった。)
二人の間に、ゆっくりとした沈黙が流れた。
けれど、それはもう怖くない。
そこにあったのは、少し不器用で、でも確かな想いだった。
校舎には、つい昨日までの熱気が嘘のように静かな空気が流れていた。
片付けを終えた教室には、いつもの日常が戻りつつある。
けれど、柚葉の胸の中には、昨日の出来事がまだ澱のように残っていた。
あの光景。
あの「あーん」の瞬間。
女子部員の笑い声と、それを断りきれずに口に運んだ風間の表情。
「……あれ、私……ほんとに、見たくなかった。」
誰もいない部室で、ひとり呟いた声が妙に大きく響いた。
今日の部活前、道具の点検をしに先に来ていたのだ。
頭ではわかっている。
風間先輩が悪いわけじゃない。
彼は誰にでも優しいし、空気を壊すような人じゃない。
でも――。
(私だったら、どうだったんだろう。
もし、私があの子みたいに、“あーん”したら……。
先輩は、受け取ってくれたのかな。)
そんなことを考えている自分が、どうしようもなく嫌だった。
(だめだ。なに考えてるの、私。
そもそも、私はキャプテンの彼女でもなんでもないのに。)
だけど、心のどこかで、はっきりとした感情がうずいている。
焼きもち。
独占欲。
もっと、近くにいたいという願い。
その全部に名前をつけるとしたら――それは、もう。
「……好き、なんだろうな。」
自分の口から出たその言葉に、驚くより先に、涙がにじんできた。
(好きなんだ。
先輩のことが……きっと。)
だけど、その“好き”は、伝えても届く保証なんてない。
天然で、優しくて、誰にでも平等な人。
今の関係を壊すのが、怖かった。
それでも、心の中で、何かが「限界だ」と訴えていた。
ガラッ、とドアが開いたのは、そんなタイミングだった。
「あれ、柚葉さん、もう来てたんですね。」
「……風間、先輩……。」
いつも通りの笑顔。
いつも通りの、まっすぐな目。
でも、今はその“いつも通り”が、痛いほどに刺さった。
「……あの、昨日のことなんですけど。」
思わず口が動いた。
気持ちが、もう抑えきれなかった。
「昨日の、あの子とのやりとり……見てたんです。」
「……え?」
「“あーん”してもらって、食べてたの、見てました。
別に、責めてるわけじゃないです。
けど、なんか……すっごく、いやだったんです。」
風間が、少しだけ目を見開いた。
その視線をまっすぐ受け止めながら、柚葉は言葉を続けた。
「なんでだろうって、昨日からずっと考えてて。
それで、今日、ようやくわかったんです。
私、先輩のことが――」
声が震える。
心臓の音が耳の奥でうるさいくらいに響いている。
言ったら、全部が変わる。
それでも。
「――好きです。」
その瞬間、部室が静まり返った。
時計の秒針の音すら、遠く感じるほどに。
風間は、何も言わずに、ただ立ち尽くしていた。
(ああ……やっぱり……だめだったかな。)
柚葉は自分の指先を見つめながら、思った。
返事がない時間が長くなるほど、不安が膨らんでいく。
そんなときだった。
「……ごめんなさい。」
ぽつりと、風間が呟いた。
「えっ……?」
「僕……そういう気持ちに、気づいてなかったんです。
柚葉さんのこと、すごく大事に思ってるし、いつも近くにいてくれて嬉しかったけど……
それが“好き”だって、わからなかった。」
静かな言葉だった。
だけど、柚葉の心に突き刺さるには、十分すぎた。
(やっぱり……届かなかったんだ。)
唇を噛んで、うつむく。
でも、次の瞬間。
「――でも、昨日、柚葉さんの顔見たとき、すっごく焦ったんです。
怒ってるっていうより、悲しそうで。
その顔が、離れなくて。」
柚葉は、ゆっくりと顔を上げた。
風間の目は、真剣だった。
「今日、どうしても話したくて。
だから、早めに来たんです。
僕、まだ“好き”って感情に慣れてないけど……
でも、柚葉さんと一緒にいると、嬉しくて、楽しくて。
守りたいって、いつも思ってます。」
「……それって……。」
「うまく言えないけど。
たぶん、僕も――好きなんだと思います。」
その瞬間、涙がこぼれた。
安心とか、嬉しさとか、ずっと張り詰めていた気持ちが、全部いっぺんに崩れて、
抑えきれなかった。
「なんですか、それ……もっとちゃんと言ってください……。」
「ごめんなさい。
でも、これからはちゃんと、自分の気持ちを言葉にできるように頑張ります。」
「……じゃあ、その頑張る過程に、私も一緒にいていいですか?」
「もちろんです。」
風間は、照れたように笑った。
その笑顔を見て、柚葉は思った。
(この人、たぶん一生“天然”なんだろうな。)
(だけど――この人が好きで、本当に良かった。)
二人の間に、ゆっくりとした沈黙が流れた。
けれど、それはもう怖くない。
そこにあったのは、少し不器用で、でも確かな想いだった。
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