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番外編③「おしゃれは戦いだ・後編」
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ショッピングモールのガラスドアが開いた瞬間、柚葉はつい反射的に、隣の彼氏の袖をぎゅっとつかんだ。
「ちょっと、しっかりしてくださいよ。
“服に興味ない男子”が放たれたら、危険地帯なんですから。」
「“放たれた”って……動物みたいに……。」
「動物の方が危機管理能力ありますよ。
先輩は“色が青ければ全部合わせてOK”みたいなタイプじゃないですか。」
「え、違いますよ。
“青系だったらまあ、なんとかなるかも”っていう消極的な期待です。」
「同じです。」
二人がまず向かったのは、メンズファッションのセレクトショップ。
清潔感のあるカジュアル服が並ぶ、大学生にぴったりの定番店。
……のはずだった。
「お、これかわいくないですか?」
晴翔が手に取ったのは――
白地に巨大なパンダの顔がドーンと印刷されたパーカーだった。
「パンダ……。」
「可愛いですよね?目がつぶらで……」
「顔面のドアップなのが問題なんですよ。
これ着て電車乗ったら、車内でパンダの圧迫感ヤバいですからね。」
「……じゃあ、カバの方がよかったですか?」
「そもそも動物シリーズから離れてください。」
晴翔はがっかりしたようにパーカーを戻した。
その隣で柚葉は、もはや店員よりも真剣にラックを漁っていた。
(ここはもう私が選ぶしかない……。
次の春服は、“彼女監修春モデル”にする……!)
結局、落ち着いた色味のニットシャツと薄手のスウェットパンツを選び、試着させて、
「お、なんかいつもよりカッコいいですね」と本人も満足。
「……ねぇ、それって私のコーデ力への信頼ってことでいいんですか?」
「はい!僕は、柚葉さんのセンスに全幅の信頼を置いています!」
「じゃあ、その服買いましょう。」
「即決!」
満足げにレジを済ませる彼の横顔を見て、柚葉はふと微笑む。
ほんと、素直すぎるくらい素直。
手がかかるけど、それも含めて好きだなと思えるのが、ちょっと悔しい。
*
買い物のあとは、お決まりのカフェタイム。
モール内のナチュラルテイストなカフェに腰を下ろし、2人でスイーツとアイスカフェラテを注文した。
店内にはカップルが多く、ゆるやかな音楽とコーヒーの香りに包まれて、心地よい空間だった。
「なんか、“大学生っぽい”ですね、こういうの。」
「わかります。
この“やたらオシャレな木の机”とか“メイソンジャーの水”とか。」
「そうそう。あと、“よくわからない雑誌が壁に刺さってる”とか。」
二人で笑いながら、写真を撮ったり、ショッピングの戦利品を見直したり。
何気ない時間が、とても特別に感じられる。
そんな中、晴翔がふと、スマホを取り出した。
「……柚葉さん、今日の写真撮ってもいいですか?」
「え?もちろんいいですけど……
って、私だけ?」
「はい。今日のコーデも完璧だったので、記録として。」
「はぁ……どこに保管するつもりですか?」
「“柚葉かわいいフォルダ”に追加します。」
「……えっ。
ちょ、なにそれそんなのあるんですか!?」
「はい。
“マネージャー時代”と“大学編”で、時系列で分けてあります。」
「やだもう!消してください恥ずかしいっ!!」
「消せません。」
「え、なんでですか!?」
「大事な思い出なんで。」
恥ずかしさで真っ赤になってストローをかみ砕きそうになった柚葉を見て、晴翔はくすっと笑う。
「じゃあ、今日のデート記録に“スイーツ美味しい”と“柚葉さんかわいかった”を追記しておきます。」
「……それ、どこで共有されてるんですか?」
「脳内です。」
「物理的に出力しないでくださいよ!」
本当に。
まっすぐで、バカで、優しくて、言うことがいちいち照れる。
でも、こんな時間をもっとたくさん過ごしていきたいと思ってしまうのは、
きっと本気で好きだからだ。
*
カフェを出たふたりが駅へ向かうとき。
ふとすれ違った一人の女性がいた。
買い物帰りらしいエコバッグに、ベージュの帽子。
「あら、柚葉ちゃん。今日も頑張ってるわねぇ。」
「え……松下さん!?なんでここに……!」
寮母の松下さんは、相変わらず鋭い目とゆるい笑顔で、ふたりを見つめていた。
「まさかとは思ったけどね、見覚えのある高身長男子がパンダTシャツを手にしてて、もしやと思ったら。」
「な、なんでそこ見てたんですか……!!」
「ふふ、いやぁ……今日も彼女の手腕が光ってたわよ。
柚葉ちゃんのプロデュース力、やっぱり寮の誇りね。」
「もう……やめてくださいってば……。」
隣で晴翔は、なぜか満面の笑み。
「じゃあ、また来週のお掃除、よろしくお願いしますねー!」
「それ私と彼の関係、全国に広めるつもりですか!?」
駅の入り口で、松下さんが手を振る。
ふたりは手を振り返してから、顔を見合わせて笑った。
「ねえ、晴翔先輩。」
「ん?」
「やっぱり、私たちってちょっと変わってますよね。」
「うーん……でも、これが“うちのデートスタイル”ってことで。」
「そうですね。
じゃあ、来週の掃除も楽しみにしててください。」
「はい、愛のメンテナンスお願いします。」
「それ言い方やばい。」
笑いながら、肩を並べて歩くふたり。
変わらない天然と、変わらないツッコミ。
だけど確かに、前よりも少しずつ、大人になっていく二人の距離だった。
「ちょっと、しっかりしてくださいよ。
“服に興味ない男子”が放たれたら、危険地帯なんですから。」
「“放たれた”って……動物みたいに……。」
「動物の方が危機管理能力ありますよ。
先輩は“色が青ければ全部合わせてOK”みたいなタイプじゃないですか。」
「え、違いますよ。
“青系だったらまあ、なんとかなるかも”っていう消極的な期待です。」
「同じです。」
二人がまず向かったのは、メンズファッションのセレクトショップ。
清潔感のあるカジュアル服が並ぶ、大学生にぴったりの定番店。
……のはずだった。
「お、これかわいくないですか?」
晴翔が手に取ったのは――
白地に巨大なパンダの顔がドーンと印刷されたパーカーだった。
「パンダ……。」
「可愛いですよね?目がつぶらで……」
「顔面のドアップなのが問題なんですよ。
これ着て電車乗ったら、車内でパンダの圧迫感ヤバいですからね。」
「……じゃあ、カバの方がよかったですか?」
「そもそも動物シリーズから離れてください。」
晴翔はがっかりしたようにパーカーを戻した。
その隣で柚葉は、もはや店員よりも真剣にラックを漁っていた。
(ここはもう私が選ぶしかない……。
次の春服は、“彼女監修春モデル”にする……!)
結局、落ち着いた色味のニットシャツと薄手のスウェットパンツを選び、試着させて、
「お、なんかいつもよりカッコいいですね」と本人も満足。
「……ねぇ、それって私のコーデ力への信頼ってことでいいんですか?」
「はい!僕は、柚葉さんのセンスに全幅の信頼を置いています!」
「じゃあ、その服買いましょう。」
「即決!」
満足げにレジを済ませる彼の横顔を見て、柚葉はふと微笑む。
ほんと、素直すぎるくらい素直。
手がかかるけど、それも含めて好きだなと思えるのが、ちょっと悔しい。
*
買い物のあとは、お決まりのカフェタイム。
モール内のナチュラルテイストなカフェに腰を下ろし、2人でスイーツとアイスカフェラテを注文した。
店内にはカップルが多く、ゆるやかな音楽とコーヒーの香りに包まれて、心地よい空間だった。
「なんか、“大学生っぽい”ですね、こういうの。」
「わかります。
この“やたらオシャレな木の机”とか“メイソンジャーの水”とか。」
「そうそう。あと、“よくわからない雑誌が壁に刺さってる”とか。」
二人で笑いながら、写真を撮ったり、ショッピングの戦利品を見直したり。
何気ない時間が、とても特別に感じられる。
そんな中、晴翔がふと、スマホを取り出した。
「……柚葉さん、今日の写真撮ってもいいですか?」
「え?もちろんいいですけど……
って、私だけ?」
「はい。今日のコーデも完璧だったので、記録として。」
「はぁ……どこに保管するつもりですか?」
「“柚葉かわいいフォルダ”に追加します。」
「……えっ。
ちょ、なにそれそんなのあるんですか!?」
「はい。
“マネージャー時代”と“大学編”で、時系列で分けてあります。」
「やだもう!消してください恥ずかしいっ!!」
「消せません。」
「え、なんでですか!?」
「大事な思い出なんで。」
恥ずかしさで真っ赤になってストローをかみ砕きそうになった柚葉を見て、晴翔はくすっと笑う。
「じゃあ、今日のデート記録に“スイーツ美味しい”と“柚葉さんかわいかった”を追記しておきます。」
「……それ、どこで共有されてるんですか?」
「脳内です。」
「物理的に出力しないでくださいよ!」
本当に。
まっすぐで、バカで、優しくて、言うことがいちいち照れる。
でも、こんな時間をもっとたくさん過ごしていきたいと思ってしまうのは、
きっと本気で好きだからだ。
*
カフェを出たふたりが駅へ向かうとき。
ふとすれ違った一人の女性がいた。
買い物帰りらしいエコバッグに、ベージュの帽子。
「あら、柚葉ちゃん。今日も頑張ってるわねぇ。」
「え……松下さん!?なんでここに……!」
寮母の松下さんは、相変わらず鋭い目とゆるい笑顔で、ふたりを見つめていた。
「まさかとは思ったけどね、見覚えのある高身長男子がパンダTシャツを手にしてて、もしやと思ったら。」
「な、なんでそこ見てたんですか……!!」
「ふふ、いやぁ……今日も彼女の手腕が光ってたわよ。
柚葉ちゃんのプロデュース力、やっぱり寮の誇りね。」
「もう……やめてくださいってば……。」
隣で晴翔は、なぜか満面の笑み。
「じゃあ、また来週のお掃除、よろしくお願いしますねー!」
「それ私と彼の関係、全国に広めるつもりですか!?」
駅の入り口で、松下さんが手を振る。
ふたりは手を振り返してから、顔を見合わせて笑った。
「ねえ、晴翔先輩。」
「ん?」
「やっぱり、私たちってちょっと変わってますよね。」
「うーん……でも、これが“うちのデートスタイル”ってことで。」
「そうですね。
じゃあ、来週の掃除も楽しみにしててください。」
「はい、愛のメンテナンスお願いします。」
「それ言い方やばい。」
笑いながら、肩を並べて歩くふたり。
変わらない天然と、変わらないツッコミ。
だけど確かに、前よりも少しずつ、大人になっていく二人の距離だった。
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