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番外編⑫社会人編・第9話「まさかのドラマ出演依頼!? 夫婦で見学に行ったら、夫が代役主演に抜擢されました」
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その日、私――風間柚葉は、
午前中の編集作業を終えて自席に戻ったとたん、部下の田村にこう言われた。
「柚葉さん、ちょっと相談いいですか?」
「うん?」
「……実は、テレビドラマの制作チームから連絡がありまして……」
「……うん。」
「柚葉さんに、ヒロイン役で出演してほしいってオファーが来てます」
「……は???」
なんで!? いや、なんで!?
私、ニュース読みと中継とAD仕事しかしてないんだけど!?
そもそも演技経験ゼロなんですけど!?
ていうか今週末、カレー作ろうって思ってたのに!!(そこ?)
しかも、相手役は今をときめく超人気俳優、
早乙女徹(さおとめとおる)。
あの「眉で演技する男」「右斜め45度からのキラースマイル」と称される、実力派イケメン俳優。
(……え、なんかもういろいろ無理。)
すぐに断った。
「無理です無理無理無理」と過呼吸気味に言った。
ところが。
「とりあえず、現場見学だけでも!」とプロデューサーから押され、
晴翔に話すと――
「え、出ようよ!面白そう!」
まさかのノリノリ。
「いやいや!俳優さんとラブシーンあるかもだよ!?
私、今週、ネギしか切ってないよ!?そんなのムリ!!」
「大丈夫!俺、キッチンでの柚葉の演技見てるし!“ネギ切るヒロイン”超うまいから!」
何が大丈夫なのかは全然分からないが、
結局、夫婦で現場見学へ行くことに――。
***
そして、当日。
スタジオでは、煌びやかな照明と豪華なセット。
俳優陣やスタッフがきびきびと動いていて、
まさに“夢の世界”という雰囲気だった。
早乙女徹は、噂通りの“完璧イケメン”。
高身長、整った顔立ち、低くて落ち着いた声。
しかも、礼儀正しい。
「あなたが風間柚葉さんですね。
想像以上に、カメラ映えしそうだ。」
……さらっと褒められても困る。
こっちは“隣に天然がいる既婚者”なんです。
その天然――晴翔は、当初こそ余裕そうにしていた。
が、早乙女が少しずつ柚葉に距離を詰め、
シナリオの中で“恋人つなぎの手”の説明を始めたあたりから――
「……ん?」
視線がだんだんサッカーの試合モードになってきた。
そして次の瞬間。
早乙女が笑顔で「台本の中でこういう流れがあるんです」と言いながら柚葉の手を軽く取った、その瞬間。
ドンッッ!!!
晴翔、その辺にあったリハ用のゴムボールをフルスイングでキック。
見事に早乙女の背中に直撃。
「ぐあっ!?」
スタッフ悲鳴。
監督白目。
早乙女、病院へ。
全てが、静止した。
***
プロデューサー「…………で、どう責任取ってくれるのかな?」
晴翔「…………代役、やります。」
柚葉「!?!?」
そして急遽始まった、晴翔&柚葉夫婦の即興リハーサル。
監督の一言。
「いいから、2人ともとりあえず“いつもの感じ”でノッてやってみて。”」
晴翔「わかりました。“いつものバカップル”出していいですか?」
柚葉「やめて。」
でも、カメラが回り出すと――
2人はだんだんと、“素”に戻っていった。
柚葉「なに、その服、ダサい。」
晴翔「えー!オシャレでしょ!ドラマ用に考えたのに!」
柚葉「襟が全力で迷子なんですけど。」
晴翔「でも愛がこもってるよ?」
柚葉「愛で肩が迷子になるなら全員オフショルよ。」
スタジオ爆笑。
監督、手を叩いて「いいねいいね!リアルバカップル感!」
ついには、2人の掛け合いが丸々“特別版”として編集され、
ドラマ本編のラストに“リアル夫婦の即興コント風シーン”として放送されてしまった。
***
そしてその翌週――
買い物に行けば、
店員「わー!ドラマの靴下論争、最高でした!!」
ランチに行けば、
近所のおばあちゃん「また出てよ~あのバカップルコーナー」
子どもにすれ違いざまに「靴下の人だー!」と指さされ、
晴翔がそっと足元を見てから照れくさく笑った。
柚葉「……いや、ね。
私はただテレビ局で地味に働いてるだけだったのにね。」
晴翔「でも、こうやって柚葉と出られるなら、
俺、毎週ゲストで出たいです。」
柚葉「やめて。
次は本気でプロに怒られるやつ。」
でも、私も思っていた。
(この人とだったら、人生全部“予測不能”でも、
……まぁ、いいか。)
ちなみに、病院送りにされた早乙女さんは、
後日SNSで「人生で初めて“嫉妬のボール”を食らいました」とコメント。
それがまた全国トレンド1位になったのは、言うまでもない。
――“靴下とボールでできた愛”、それが我が夫婦なのである。
午前中の編集作業を終えて自席に戻ったとたん、部下の田村にこう言われた。
「柚葉さん、ちょっと相談いいですか?」
「うん?」
「……実は、テレビドラマの制作チームから連絡がありまして……」
「……うん。」
「柚葉さんに、ヒロイン役で出演してほしいってオファーが来てます」
「……は???」
なんで!? いや、なんで!?
私、ニュース読みと中継とAD仕事しかしてないんだけど!?
そもそも演技経験ゼロなんですけど!?
ていうか今週末、カレー作ろうって思ってたのに!!(そこ?)
しかも、相手役は今をときめく超人気俳優、
早乙女徹(さおとめとおる)。
あの「眉で演技する男」「右斜め45度からのキラースマイル」と称される、実力派イケメン俳優。
(……え、なんかもういろいろ無理。)
すぐに断った。
「無理です無理無理無理」と過呼吸気味に言った。
ところが。
「とりあえず、現場見学だけでも!」とプロデューサーから押され、
晴翔に話すと――
「え、出ようよ!面白そう!」
まさかのノリノリ。
「いやいや!俳優さんとラブシーンあるかもだよ!?
私、今週、ネギしか切ってないよ!?そんなのムリ!!」
「大丈夫!俺、キッチンでの柚葉の演技見てるし!“ネギ切るヒロイン”超うまいから!」
何が大丈夫なのかは全然分からないが、
結局、夫婦で現場見学へ行くことに――。
***
そして、当日。
スタジオでは、煌びやかな照明と豪華なセット。
俳優陣やスタッフがきびきびと動いていて、
まさに“夢の世界”という雰囲気だった。
早乙女徹は、噂通りの“完璧イケメン”。
高身長、整った顔立ち、低くて落ち着いた声。
しかも、礼儀正しい。
「あなたが風間柚葉さんですね。
想像以上に、カメラ映えしそうだ。」
……さらっと褒められても困る。
こっちは“隣に天然がいる既婚者”なんです。
その天然――晴翔は、当初こそ余裕そうにしていた。
が、早乙女が少しずつ柚葉に距離を詰め、
シナリオの中で“恋人つなぎの手”の説明を始めたあたりから――
「……ん?」
視線がだんだんサッカーの試合モードになってきた。
そして次の瞬間。
早乙女が笑顔で「台本の中でこういう流れがあるんです」と言いながら柚葉の手を軽く取った、その瞬間。
ドンッッ!!!
晴翔、その辺にあったリハ用のゴムボールをフルスイングでキック。
見事に早乙女の背中に直撃。
「ぐあっ!?」
スタッフ悲鳴。
監督白目。
早乙女、病院へ。
全てが、静止した。
***
プロデューサー「…………で、どう責任取ってくれるのかな?」
晴翔「…………代役、やります。」
柚葉「!?!?」
そして急遽始まった、晴翔&柚葉夫婦の即興リハーサル。
監督の一言。
「いいから、2人ともとりあえず“いつもの感じ”でノッてやってみて。”」
晴翔「わかりました。“いつものバカップル”出していいですか?」
柚葉「やめて。」
でも、カメラが回り出すと――
2人はだんだんと、“素”に戻っていった。
柚葉「なに、その服、ダサい。」
晴翔「えー!オシャレでしょ!ドラマ用に考えたのに!」
柚葉「襟が全力で迷子なんですけど。」
晴翔「でも愛がこもってるよ?」
柚葉「愛で肩が迷子になるなら全員オフショルよ。」
スタジオ爆笑。
監督、手を叩いて「いいねいいね!リアルバカップル感!」
ついには、2人の掛け合いが丸々“特別版”として編集され、
ドラマ本編のラストに“リアル夫婦の即興コント風シーン”として放送されてしまった。
***
そしてその翌週――
買い物に行けば、
店員「わー!ドラマの靴下論争、最高でした!!」
ランチに行けば、
近所のおばあちゃん「また出てよ~あのバカップルコーナー」
子どもにすれ違いざまに「靴下の人だー!」と指さされ、
晴翔がそっと足元を見てから照れくさく笑った。
柚葉「……いや、ね。
私はただテレビ局で地味に働いてるだけだったのにね。」
晴翔「でも、こうやって柚葉と出られるなら、
俺、毎週ゲストで出たいです。」
柚葉「やめて。
次は本気でプロに怒られるやつ。」
でも、私も思っていた。
(この人とだったら、人生全部“予測不能”でも、
……まぁ、いいか。)
ちなみに、病院送りにされた早乙女さんは、
後日SNSで「人生で初めて“嫉妬のボール”を食らいました」とコメント。
それがまた全国トレンド1位になったのは、言うまでもない。
――“靴下とボールでできた愛”、それが我が夫婦なのである。
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