先輩、それ絶対わざとじゃないですよね!?

naomikoryo

文字の大きさ
25 / 39

番外編⑮社会人編・第12話「風間晴翔、育児教室に参戦!赤ちゃん人形と“勝手にPK戦”」

しおりを挟む
「では皆さん、今日は“赤ちゃんとの接し方入門”として、
 人形を使った抱っこ・おむつ交換・沐浴の練習をしていきましょうね~」

 

日曜の午前、地域の保健センター。
プレパパ・プレママが10組ほど集まった、育児教室がスタートした。

 

もちろん、私・柚葉も参加。
そして――隣には、全力ジャージで気合いを入れてきた男がいた。

 

風間晴翔、26歳。
プロサッカー選手。夫。天然。

 

晴翔「……ねぇ柚葉さん、あの赤ちゃん人形……
 “マジで魂入ってる感じしない?”」

 

柚葉「いきなり怖いからやめて。」

 

晴翔「でも見て、めっちゃリアル。
 これ、将来の“うちのちっちゃいやつ”の練習だよね?
 俺、もう名前つけた方がいい?」

 

柚葉「やめろ。混乱するから。」

 

講師「では、まず“抱っこの仕方”をやってみましょう~。
 首をしっかり支えるのがポイントです」

 

隣のご夫婦が丁寧に人形を抱いているのを見て、
晴翔も慎重に手を伸ばした。

 

晴翔「よし、いくぞ。うちの……うちのベビーよ……!」

 

(その語りかけ方、シュート前のやつ。)

 

晴翔「だぁぁああっこぉぉぉお!!!」

 

柚葉「ちょっと落ち着いて!?そのテンションで抱くもんじゃない!!」

 

講師「はい、ちょっと力が入りすぎですね~。
   赤ちゃんはふわっと……ふわっと、包み込むように……」

 

晴翔「ふわっとですね……
  (よし、次からは“ふわっとパス”のイメージで……!)」

 

***

 

講師「次は、おむつ交換にチャレンジです。
   このモデル人形は、“擬似おしっこ”機能がついてますので~」

 

晴翔「えっ!?リアル!?この人形、未来来てる!?」

 

柚葉「未来じゃない。現代の科学力。」

 

慣れない手つきで、晴翔が人形のおむつを脱がせる。
だが――その瞬間。

 

ピューーー!!!

 

人形の擬似おしっこが、勢いよく晴翔の胸に命中。

 

晴翔「うおぉおおお!!
   来たぁぁあああ!!!噴水型シュートォォ!!」

 

柚葉「違う、実況しなくていい!!!てかシャツびしょびしょだよ!?」

 

講師「……これ、かなりよくあるハプニングなんですよ~(笑)」

 

***

 

講師「最後は“沐浴”体験です。
   ベビーバスを使って、お湯の温度は40度前後。
   そっと支えて入れてみましょう~」

 

柚葉「よし、晴翔。ここは慎重にね?」

 

晴翔「まかせて。風間家の風呂番長の名にかけて!」

 

(知らない称号きた……)

 

彼は真剣な顔で、ベビーバスに人形をそっと入れた。
そのとき――彼の目が光った。

 

晴翔「……ちょっと待って。
   これ、浮かべると……人形が“サッカーボール”みたいに浮くよね?」

 

柚葉「は?」

 

晴翔「シュート……できるかな?」

 

柚葉「できないよ!!!やめろ!!この人形高いやつ!!」

 

だが彼は、すでに想像の中で人形相手にPK戦を始めていた。

 

晴翔「よーし、風間ベビー!いくぞ!構えた!ボールを止めるか、止められるか!!」

 

講師「すみません!そろそろ現実に戻ってくださーい!」

 

***

 

教室終了後。

周りの参加者から、
「風間選手、まさか育児教室でもエンタメ全開とは……」
「私たち、途中で笑いすぎて学べなかったです(笑)」
など、感想が殺到。

 

スタッフも記念写真を撮りまくり、
晴翔は満面の笑みでVサイン。

 

そして帰り道。

 

柚葉「……あんた、もうちょっと真面目にやってよね。」

 

晴翔「いや、俺は本気だったよ。
   あのベビーパス(人形)は、俺にとって“未来からの試練”だった……!」

 

柚葉「“未来からの試練”はおむつ替えで飛んでこないよ。」

 

でも。
私はちょっと安心していた。

“父親になる”って、頭でわかってるのと、実感するのは違う。
だけど今日の彼は、ちゃんとその入り口に立ってた。
ふざけてるようで、でも確かに――一歩ずつ、パパになってる気がした。

 

晴翔「柚葉さん。
   これから、俺もっと成長するからね。
   “世界一笑える育児”してみせるよ。」

 

柚葉「……その意気やよし。」

 

次は、本物の赤ちゃんと向き合う日がやってくる。
けれどその日が、ちょっとだけ楽しみになった。

 

(だってこの人、きっと“泣く赤ちゃん相手にPK戦”とか始めそうだし。)

 

その時は私が全力で止める。
でもその全部が、私たちの家族の形になっていくんだと思う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の身代わりで処刑されかけた侍女、悪人面強面騎士にさらわれる。

雨宮羽那
恋愛
 侍女リーリエは、処刑される予定の主・エリーゼと容姿がそっくりだったせいで、身代わりとして処刑台へ立たされていた。  (私はエリーゼ様じゃないわ!)と心の中で叫んだ瞬間、前世の記憶がよみがえり、ここが読みかけだった悪役令嬢ものの小説の世界だと気づく。  しかも小説ではエリーゼが処刑されるはずなのに、リーリエが処刑されかけているという最悪の展開。  絶体絶命の瞬間、リーリエの前に現れたのは強面で悪人面の騎士ガウェイン。  彼はなぜかリーリエを抱えあげ連れ去ってしまい――? ◇◇◇◇ ※全5話 ※AI不使用です。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

その出会い、運命につき。

あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~

ささゆき細雪
恋愛
五年前、内乱の混乱のなかで姿を消した最愛の妃・白瑤華(はくようか)。 彼女を失った皇帝・景玄耀(けいげんよう)は、その後ただ一人を想い続けながら執務に追われていた。そんなある日、書類に彼女の名前を発見し、居ても立っても居られなくなる。 ――死んだはずの彼女が、生きている? 同姓同名かもしれないが確かめずにいられなくなった彼は地方巡察を決行。そこで、彼によく似た幼子とともに彼女と再会、地方官吏として働く瑤華と、珠児(しゅじ)を見て、皇帝は決意する――もう二度と、逃がさないと。 「今さら、逃げ道があると思うなよ」 瑤華を玄耀は責めずに、待ちの姿勢で包み込み、囲い込んでいく。 秘された皇子と、選び直した愛。 三人で食卓を囲む幸福が、国をも動かすことになるなんて――?    * * * 後宮から逃げ出して身を引いたのに、皇帝の溺愛は止まらない――これはそんな、中華風異世界ロマンス。

宮廷画家令嬢は契約結婚より肖像画にご執心です!~次期伯爵公の溺愛戦略~

白妙スイ@1/9新刊発売
恋愛
男爵令嬢、アマリア・エヴァーレは絵を描くのが趣味の16歳。 あるとき次期伯爵公、フレイディ・レノスブルの飼い犬、レオンに大事なアトリエを荒らされてしまった。 平謝りしたフレイディにより、お詫びにレノスブル家に招かれたアマリアはそこで、フレイディが肖像画を求めていると知る。 フレイディはアマリアに肖像画を描いてくれないかと打診してきて、アマリアはそれを請けることに。 だが絵を描く利便性から、肖像画のために契約結婚をしようとフレイディが提案してきて……。 ●アマリア・エヴァーレ 男爵令嬢、16歳 絵画が趣味の、少々ドライな性格 ●フレイディ・レノスブル 次期伯爵公、25歳 穏やかで丁寧な性格……だが、時々大胆な思考を垣間見せることがある 年頃なのに、なぜか浮いた噂もないようで……? ●レオン フレイディの飼い犬 白い毛並みの大型犬

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

処理中です...