先輩、それ絶対わざとじゃないですよね!?

naomikoryo

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奏翔編・第6話 「心愛、図工の課題に参戦」

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「それでは、今日の図工は――“将来の夢”をテーマに絵を描きましょう!」

 

木下先生の声が教室に響くと、
「サッカー選手!」「ケーキ屋さん!」「アイドル!」と、
生き生きとした声が飛び交った。

 

奏翔は、筆箱を開けたまま、少しだけ固まっていた。

 

(将来の夢、か……)

 

隣の席のりくとくんは、「ゲーム作る人!」と即決し、
さっそくスライムらしきキャラを描きはじめている。
(※前回ふざけて先生に怒られた分、今回はちゃんと真面目)

他の子たちもどんどん描き進めていくなか――
奏翔の画用紙は、真っ白なままだった。

 

(夢って、“なりたい職業”じゃないといけないのかな……)
(まだよく分かんないし……)

 

「風間くん、迷ってる?」

 

木下先生がそっと話しかけてきた。
彼は少し照れながら答えた。

 

「……夢って、“何かにならなきゃいけない”んでしょうか。
 まだ、分からないです」

 

「ううん。それでいいんだよ。
 “まだ分からない”も立派な気持ち。
 その気持ちを、そのまま絵にしてもいいのよ」

 

「……“分からない”を、絵に?」

 

「うん。風間くんなら、きっと描けると思うな」

 

(“描ける”って言ってくれた……)

 

その言葉が、少しだけ心に残ったまま、
放課後を迎えた。

 

***

 

夕方。
風間家、リビング。

 

「う~ん……“まだ夢が決まってない”って、どう描けばいいんだろう……」

 

奏翔は、スケッチブックを広げて、ため息をついた。
そんな彼の後ろから、玄関の扉をバン!と開けて現れたのが――

 

「ただいまー!甥っ子の美術展に乱入しに来たぞー!」

 

「……心愛叔母上、なんのテンション?」

 

「図工で夢を描くって聞いたの!それ、服でも表現できるじゃん!?って思って!」

 

「なんの話!?」

 

柚葉「ごめん。連絡したの、私」

 

晴翔「心愛に相談すれば、なんでもファッショナブルに解決すると思って!」

 

「お父さんは“ファッショナブル”って言いたいだけだよね」

 

心愛は、すでに大きなトートバッグから謎の布と裁縫セットを取り出し、
「まずは“夢未満”ってテーマで衣装を作ろう!」と謎の提案を始めていた。

 

(なにこの展開……)

 

でも――

ちょっとだけ、楽しかった。

 

「じゃあさ、奏翔は、
 “まだ何者でもないけど、何にでもなれる”って気持ちで描いてみたら?」

 

心愛が言ったその言葉に、奏翔の指先がぴたりと止まった。

 

(なににでも、なれる……)

 

彼の目に、一気に色が戻った。

 

「そうか。
 “夢”って、“これから”の形を描くことなのかも……!」

 

そこからの彼の集中力はすごかった。
手が止まらない。線が、色が、どんどん生まれていく。

 

翌日の教室。
奏翔の提出した絵は、ひときわ異彩を放っていた。

 

空いっぱいに広がる「白いキャンバス」。
でも、そこにはいろんな色の道が交差していて、
その真ん中に、ちょこんと“まだ顔が描かれていない”男の子が立っている。

 

タイトルは――
『これからのぼく』

 

木下先生は、それを見てぽつりと呟いた。

 

「……この子、きっと、何にでもなれるわね」

 

そして、隣のクラスの先生に見せに行ったその絵は、
なぜか校長先生の目に止まり、職員室前の廊下に掲示されることになった。

 

(……ちょっと、はずかしい)

 

でも――

その日、心愛から送られてきたLINEにはこう書いてあった。

 

「奏翔、かっこよすぎて困るから将来は“世界一優しいデザイナー”になって!」
「服作るからモデルになってよね!」

 

奏翔はそれを読みながら、クスッと笑った。

 

(なにになるかは、まだ分からないけど……
 “誰かのために”って気持ちは、ずっと持ってたいな)

 

彼の“これから”は、まだ白いキャンバスの途中。
でも、その足取りは、すでに自分の意志で一歩ずつ踏み出していた。
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