逢魔ヶ刻の迷い子3

naomikoryo

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陽介からのメッセージ

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 「助けて」

 陽介からのメッセージは、その一言だけだった。

「陽介!? どこにいるんだよ!」

 隼人がすぐに返信を打つ。

 しかし、既読はつかない。

「どういうこと……?」

 美咲がスマホの画面を見つめたまま、息をのむ。

 もし陽介が本当に助けを求めているのなら、返信がないのはおかしい。

 ——それに、もうひとつ気になることがある。

「……ねえ、今の靴音……」

 由香が震えた声で言った。

 確かに、陽介がメッセージを送ったタイミングと、さっき聞こえた靴音のタイミングが、完全に一致していた。

「まさか……この中に、陽介がいる?」

 紗奈が小さく囁く。

「でも、姿が見えないんだぞ……」

 大輝が慎重に周囲を見渡す。

 靴音は確かに近くで響いていた。しかし、どこにも陽介の姿はなかった。

 そして——。

コツ……コツ……

 また、靴音が響いた。

 今度は、2階の閲覧室の方から。

「……上だ!」

 隼人が叫ぶ。

「陽介がいるかもしれない!」

 五人は、一斉に2階へと駆け上がった。

消えた陽介の痕跡
 2階の閲覧室は、1階よりもさらに静まり返っていた。

 本棚が並び、壁際には閲覧机が置かれている。

 しかし——。

 どこにも人の気配はない。

「陽介?」

 美咲が呼ぶ。

 返事はない。

「……誰もいないのか?」

 由香が不安げに呟く。

 隼人は慎重にスマホのライトをかざしながら、部屋の奥へと進んだ。

 そして——。

 閲覧机の上に、一冊のノートが置かれているのを見つけた。

「……これは?」

 隼人がノートを手に取る。

 表紙には、陽介の名前が書かれていた。

「陽介のノート……?」

 大輝がのぞき込む。

 ノートを開くと、そこには鉛筆で乱雑に書き殴られた文字が並んでいた。

「ここから出られない」
「足音がついてくる」
「俺の後ろに誰かいる」

「……なに、これ……?」

 紗奈が青ざめた顔でノートを見つめる。

 その時——。

バンッ!!

 閲覧室の扉が突然、勢いよく閉まった。

「うわっ!!」

 由香が悲鳴を上げる。

 五人は一斉に扉へと駆け寄るが——開かない。

「鍵がかかってる……!?」

 美咲が必死に押すが、扉はビクともしない。

「なんで!? さっきまで開いてたのに!」

「誰かが閉めたのか……?」

「そんなはずないだろ! 俺たちしかいないんだから……!」

 隼人が叫ぶ。

 そして——。

 コツ……コツ……コツ……

 静まり返った部屋の中で、靴音が響いた。

 誰もいないはずの部屋の奥から——。
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