逢魔ヶ刻の迷い子3

naomikoryo

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図書館の謎

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五人は、開いたままの扉の奥へと慎重に進んだ。

 その先には、図書館の地下書庫へ続く階段があった。

「……図書館に地下なんてあったの?」

 由香が不安げに呟く。

「聞いたことない……」

 美咲が息を呑む。

 誰も知らないこの図書館の秘密。
 もしかすると、ここが陽介がいる場所へ繋がっているのかもしれない。

「行くしかない……」

 隼人がそう言うと、五人は慎重に階段を降りていった。

消えた陽介の痕跡
 階段を降りると、そこには地下書庫が広がっていた。

 古びた本棚がいくつも並び、ほこりっぽい空気が漂っている。

「……静かすぎる」

 紗奈が緊張した面持ちで言う。

「ここに……陽介が?」

 大輝が周囲を見渡す。

 すると、奥の書棚の隙間に、ノートが落ちているのが見えた。

「これ……また陽介のノート?」

 隼人が拾い上げる。

 開くと、そこには新たなメッセージが書かれていた。

「ここは、同じ場所なのに違う世界。」
「俺は、違う次元にいる。」
「助けて。」

「……違う次元?」

 美咲が目を見開く。

「どういうこと……?」

 その時——。

 スマホの通知音が鳴った。

 陽介からのメッセージだった。

「今、俺も地下にいる。でも、そっちにはいないんだろ?」

「えっ……?」

 五人は顔を見合わせた。

「もしかして……陽介も、ここにいるのに、私たちには見えていないってこと?」

 由香が不安げに呟く。

「そうかもしれない……つまり、陽介は違う世界にいる。」

 紗奈が答える。

「じゃあ、どうすれば……?」

「……この図書館の謎を解かないと、陽介を助けられないってことかもしれない」

 大輝が冷静に言った。

「陽介がここにいて、私たちには見えない理由があるはず……」

「でも、それを解くには……?」

 五人が思案する中、また靴音が響いた。

コツ……コツ……コツ……

 今度は、明らかに自分たちの後ろから聞こえてきた。

 振り向くと——。

 そこには誰もいない。

 だが——本棚の奥に、一冊の異様に古びた本がぽつんと置かれているのが見えた。

「……あれ?」

 美咲が指を差す。

 何かの導きのように、五人は本へと近づいていった。

図書館の鍵
 本の表紙には、黒いインクでタイトルが刻まれていた。

『並行世界の境界』

「並行世界……?」

 隼人が慎重に表紙をめくる。

 すると、最初のページには、こう書かれていた。

「この図書館は、時間と空間の狭間に存在する。
 特定の条件を満たした者は、この世界と並行するもう一つの世界に引きずり込まれる。」

「……!!」

 五人は息を呑んだ。

「やっぱり……陽介は、違う世界にいるんだ……!」

 紗奈が小さく叫ぶ。

 さらにページをめくると、次のように書かれていた。

「境界を超えた者は、元の世界に戻るために『共鳴』を行わなければならない。
 共鳴とは、境界の鍵を開く行為である。
 それが行われなければ、超えた者は二度と元に戻れない。」

「境界の鍵……?」

 大輝が呟く。

「それがないと、陽介は戻れないってこと?」

「でも、鍵って何……?」

 五人が混乱する中——。

 またスマホの通知音が鳴った。

 陽介からのメッセージだった。

「本を開いたな?」

「えっ!?」

 美咲が驚く。

「陽介、見えてるの!?」

 すぐに返信を打つと——。

 「本の最後のページを読め。」

 陽介のメッセージが届いた。

 五人は息を呑みながら、本の最終ページをめくった。

「鍵は、『夜の影』の中にある。」

「夜の影……?」

 紗奈が小さく呟く。

 その瞬間——。

 地下書庫の照明が、一斉に消えた。

「うわああ!!!」

 五人は悲鳴を上げた。

 そして、闇の中で——。

コツ……コツ……コツ……

 靴音が、再び響き始めた。

 しかし、今度は——。

 それが、五人のすぐそばから聞こえていた。
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