ねこまど~猫と人がつなぐ、奇跡のカフェ~

naomikoryo

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04)バイトは思ったよりも大変だった

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1
「――で、新人くんは今日から本格的に仕事してもらうわよ」

 猫カフェ「ねこまど」の開店前。

 カウンターに立つ峰子(ネコ店長)が、バイト初日を終えたばかりの飯塚昭人(いいづか あきと)にそう告げた。

「いや、昨日も仕事しましたけど?」

「昨日は猫たちとの相性チェックだったでしょ?」

「……チェックっていうか、俺、猫の生贄みたいになってませんでした?」

「でも結果的に、猫たちには気に入られたわね」

 峰子がそう言うと、カウンターの横にいた真緒と琴葉――女子高生バイト2人がくすくすと笑った。

「うんうん、ボスがあんなに懐くのは珍しいし」

「新人くん、猫たちの椅子にされてたもんね~」

「いや、俺はバイトしに来たんであって、猫のソファになりに来たわけじゃないんですけど……」

 昭人は昨日の出来事を思い出して、肩をすくめた。

 バイト初日。

 彼は猫たちに異常なほど懐かれ、膝の上に乗られ、肩に乗られ、果てにはキャットタワー代わりにされた。

 おかげで、何をするにも猫がついて回り、まともに仕事ができなかった。

「で、今日からは ちゃんとした仕事 をやらせてもらえるんですか?」

「もちろんよ」

 峰子はニヤリと笑いながら言った。

「今日は、猫のトイレ掃除 をお願いするわ」

「……え?」

2
「いや、ちょっと待ってくださいよ店長。俺、トイレ掃除って聞いてないんですけど?」

「猫カフェなんだから、猫の世話がメインでしょ?」

「いや、それはそうかもしれませんけど……!」

「それとも? 時給“能力により都度アップ” って書いてたけど、トイレ掃除もできない人は時給アップしないわよ?」

「くっ……!」

 完全に罠だった。

 昭人は深いため息をつきながら、峰子から渡されたゴム手袋をはめる。

「……で、トイレはどこに?」

「こっちよ」

 峰子に案内され、店の奥の一角へ。

 そこには 猫用トイレが5つ 並んでいた。

「これを、全部?」

「そうよ」

「……あの、ちなみに言いますけど、俺、昨日猫にめっちゃ懐かれたじゃないですか」

「そうね」

「つまり、掃除しようとしたら猫たちが邪魔してくる可能性が高いと思うんですけど」

「まぁ、頑張ってね♪」

「ちょっ!? 他人事すぎません!?」

 そんな峰子の冷たい(というか面白がっている)態度に呆れながら、昭人は猫トイレの前にしゃがみこんだ。

「さて……やるか」

3
 ――5分後。

「おい! どけ!!」

「にゃ~ん♪(ここで寝る)」

「いや、ここトイレだから!!」

 さっそく 邪魔が入った。

 トイレ掃除をしようとした瞬間、ミルク(白猫・♀) がトイレの中に入って寝転がったのだ。

「いや、なんで!? 今掃除しようとしてたの見てたよね!?」

 昭人がそう叫ぶと、カウンターの向こうで真緒と琴葉がクスクス笑った。

「ミルクは綺麗好きだから、掃除したばっかりのトイレが好きなんだよ~」

「だから、新しい猫砂を入れると、すぐにそこでゴロンするの」

「それ、掃除の邪魔でしかないんですけど!?」

 仕方なく、ミルクを抱き上げてどかそうとする。

 ――が、その瞬間。

「にゃっ!(ガシッ)」

「イテッ!?」

 ミルクは 昭人の腕にしがみつき、離れようとしなかった。

「なんで!? なんでそんなにこのトイレがいいの!?」

「にゃ~(ここがいい)」

「お前のこだわりが分からん!!」

4
 ミルクと格闘しながらも、なんとか一つ目のトイレを掃除し終えた。

「はぁ……はぁ……」

 疲れた。

「さて、次……」

 昭人が次のトイレに手を伸ばした瞬間。

「にゃあ♪(邪魔しに来たよ)」

「え?」

 ――ドスッ!!

「おわっ!?!?」

 次の瞬間、昭人の 背中に重みがかかる。

「なんだ!? なんか乗った!?」

「ボスだね」

 琴葉が呑気に言う。

「え、ボスって、あの肩に乗ってきたやつ!?」

「うん、でも今日は背中に乗りたいみたいだね」

「いや、重い!!!」

 ボス(茶トラ・♂)は、ドッシリと昭人の背中に乗り、そこから降りる気配がない。

「おい、ボス、今俺仕事してるんだけど!」

「にゃあ(知らん)」

「知らんじゃねぇ!!」

5
 ――30分後。

「……終わった……」

 昭人は 猫まみれになりながら も、なんとかトイレ掃除を完了させた。

 背中にはボス。

 足元にはミルク。

 膝の上にはもなか(三毛猫・♀)。

「……お前ら、どんだけ俺に懐いてんの?」

「すごいね、新人くん。普通、猫ってこんなに一人の人間に群がらないよ?」

「……俺が異常ってこと?」

「うん、異常」

「そこ即答しなくてよくない!?」

 昭人は このバイトが想像以上に大変 だということを、ようやく理解した。

「……まぁ、推し活のためだし、頑張るしかないか……」

 こうして、昭人の 「猫カフェ奮闘記」 は続くのだった。
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