ねこまど~猫と人がつなぐ、奇跡のカフェ~

naomikoryo

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06)猫たちのごはんタイムは戦場だった

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1
「――じゃあ、新人くん。次は猫たちのごはんタイムを担当してもらうね♪」

 バイト3日目の午後。

 カウンターの奥でくつろいでいた橘真緒(たちばな まお)が、ニヤリと笑いながら昭人を見た。

「え、ごはん……?」

「そう! 猫たちにごはんをあげるの。結構大事な仕事なんだよ?」

「まぁ、そりゃそうですよね」

 猫カフェなんだから、猫の食事管理は重要な業務のはずだ。

 ――だが、昭人はまだ知らなかった。

 猫たちのごはんタイムが、戦場であるということを。

2
「まずは、ここのストックからキャットフードを取るの。で、個別にお皿に盛りつけてね」

 峰子(ネコ店長)が、厨房の奥にあるキャットフードの棚を指差した。

「お皿は全部で10枚。猫たちそれぞれ好みが違うから、ちゃんと決まったフードを入れてあげるのよ」

「なるほど……」

「ボスはチキン系が好きで、ミルクはウェットフード派。もなかはカリカリ派ね」

「覚えられるかな……?」

「大丈夫大丈夫! すぐに実戦で学べるよ♪」

「実戦?」

 昭人は不吉な言葉に引っかかりながらも、お皿にキャットフードを準備し始めた。

 カリカリを適量ずつ入れ、ウェットフードをスプーンですくって盛り付ける。

(お、意外と簡単じゃん)

 ――そう思ったのが、間違いだった。

「にゃあ♡(ごはん!?)」

「にゃー!(早くくれ!)」

 次の瞬間、背後から 無数の猫たちの殺気 を感じた。

(え……なんか、すごい圧を感じるんですけど……?)

 振り向くと、総勢10匹の猫たちが、昭人をガン見していた。

 全員の目が 「早く出せ」 と語っている。

「うわっ、圧がすごい……!!」

「新人くん、ここからが本番だよ~♪」

 真緒が楽しそうに見守る中、昭人は 猫たちの熱い視線 に追い詰められながら、配膳を開始した。

3
「はい、ボスはこっち……って、待て待て!」

 お皿を置こうとした瞬間、ボス(茶トラ・♂)がフライングして突撃してきた。

「おい!! まだ置いてない!!」

「にゃあ!(知るか!)」

「マナーとかないのかお前らは!!」

 ボスは、昭人が地面にお皿を置く前に、フードを強奪しようとする。

 慌ててお皿を持ち上げる昭人。

「ちょっ……落ち着け! 順番!!」

「にゃー!(待てない!!)」

「待て!!」

 ボスと昭人の 壮絶な駆け引き が繰り広げられる中、別の問題が発生する。

「にゃあ!(こっちも欲しい!!)」

「おい、ミルク!!」

 今度は、ミルク(白猫・♀) が昭人の足にしがみついてきた。

 全身をすり寄せながら、じっと上目遣いで見上げてくる。

「……なに?」

「にゃ~ん♡(早くちょうだい♡)」

「その甘えた声に負けると思うなよ!?!」

「にゃあ!(ほら、負けろ!)」

「負けるか!!!」

 ミルクの可愛さに理性が揺らぎそうになる昭人だったが、なんとか踏みとどまる。

 ――しかし、その隙を見逃さない猫がいた。

「にゃっ!(強奪!)」

「うわっ!? もなかぁぁぁ!!」

 もなか(三毛猫・♀)が、スキをついて皿ごとひったくる。

「お前ら全員、食い意地張りすぎだろ!!」

 猫たちの攻撃をかわしながら、昭人は 必死に配膳 する。

4
 数分後――

 昭人は 完全に疲れ果てていた。

「……終わった……」

 猫たちはそれぞれの皿の前に座り、おいしそうにフードを食べている。

 ボスは満足げにカリカリを噛み、ミルクはウェットフードをちょこちょこ食べ、もなかはカリカリをくわえて運んでいた。

「ふぅ……なんとかなったか……」

 ようやく一息ついた瞬間。

「……にゃ?」

「え?」

 昭人は 背筋が凍った。

「……これ、追加ないの?」

「まさか……」

 猫たちが 次の要求をするような目で見つめてきた。

「おいおい、もう食べたろ!?!」

「にゃ~ん(おかわり!)」

「ない!! もうないから!!」

「にゃあ!(うそだ!!)」

「うそじゃねぇ!!」

 猫たちの 「おかわりを求める圧力」 に、昭人は頭を抱えた。

5
「ふふっ……お疲れ、新人くん」

 峰子が、カウンターの奥でコーヒーを飲みながら微笑む。

「どうだった? 猫たちのごはんタイムは」

「戦場でした……」

「うん、そうね。毎日こんな感じよ」

「え、毎日!?」

「猫たちの食欲はすごいからね~。新人くん、これからずっと担当ね!」

「いや、拒否権は!?!?!?」

「ないよ♪」

「ですよねぇぇぇ!!!」

 こうして、昭人の 「猫たちのごはんタイム担当」 が決定したのだった。
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