ねこまど~猫と人がつなぐ、奇跡のカフェ~

naomikoryo

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07)新人くん、猫と会話できてない?

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1
「――はぁ、俺、なんでこんなに猫に絡まれるんだ……?」

 バイト3日目の夕方。

 飯塚昭人(いいづか あきと)は、ソファの端に座って、遠い目をしていた。

 目の前では、猫たちがのんびり毛づくろいをしている。

 ボス(茶トラ♂) は堂々とした態度でくつろぎ、ミルク(白猫♀) は昭人の膝の上を 「ここ私の場所♡」 と言わんばかりに独占している。

 少し離れたところでは、もなか(三毛猫♀) がキャットタワーの上からじっと昭人を見ていた。

「……なんでお前ら、俺のそばに集まるんだよ」

「にゃあ~(それはね~)」

「いや、そんなドヤ顔されても分かんねぇから」

「にゃん!(わかれ!)」

「わかんねぇって!!!」

 昭人がツッコミを入れた瞬間、カウンターの奥で見ていた 橘真緒(たちばな まお) が、ハッと目を丸くした。

(……え? ええ!?)

 驚いたように昭人をじっと見つめたまま、口を開く。

「ねぇ、新人くんさ……もしかして 猫と会話できてる!?」

2
「え?」

 昭人はぽかんとした顔で真緒を見る。

「いやいや、まさかそんな……」

「でもさ、今、猫たちが鳴いたのに、自然に返事してたよね?」

「いや、単に適当に言ってるだけだし」

「……ほんとに?」

 真緒はじっと昭人を見つめる。

 その視線に、昭人は少し気まずくなった。

(いや、俺はただ適当にツッコんでただけのはず……)

 しかし、改めて考えてみると――

 猫たちが鳴くと、なんとなく 「こう言ってる気がする」 というのがわかる気がする。

 偶然だと思っていたが、もしかして……?

「……いやいや、そんなバカな」

 昭人は頭を振って、その考えを打ち消した。

「気のせいだって」

「ふ~ん、じゃあさ」

 真緒はニヤリと笑うと、キャットタワーの上のもなかを指差した。

「今、もなかが言ったこと、当ててみて?」

「え?」

「もし当たったら、新人くんが猫と会話できてるってことになるよね?」

「いや、無理無理無理!」

「ほらほら~、試しにやってみなよ♪」

「……くっ」

 昭人はしぶしぶ、もなかを見る。

 すると、もなかは 「にゃん!(やってみろ!)」 と言わんばかりの表情でこちらを見ていた。

(……こいつ、絶対なんか言ってる)

 昭人は直感で、もなかの言葉を感じ取るように意識を集中させた。

「……『お前が負けたら、おやつよこせ』」

 ――その瞬間、もなかが 「にゃっ!(正解!!)」 と鳴いた。

「……は?」

 昭人は唖然とした。

 真緒も目を丸くする。

 そして――

「すごっ!! やっぱ新人くん、猫と話せるじゃん!!!」

「え、いや、ちょっと待て」

「すごいすごいすごい!!!」

 真緒が興奮して昭人の腕をガシガシ揺らす。

「いや、偶然だろ!!」

「じゃあ、もう一回やってみて!」

「……おい、もなか、なんか言え」

 昭人がそう言うと、もなかが 「にゃ~ん(負ける気しない)」 と鳴いた。

「えっと……『俺が負けるわけない』?」

「にゃん!(正解!)」

「……」

「やっぱり会話してるううう!!」

「うわぁぁぁぁ!!!」

 昭人は頭を抱えた。

3
「いや、違うって! たまたま合ってただけ!!!」

「たまたま二回も正解しないよ!」

「いやいや、そんなこと……」

「ふふ~ん、これは確実に 『猫語マスター』 だね♪」

「そんな称号いらん!!」

「猫カフェの店員として、めっちゃ才能あるんじゃない?」

「推し活のために来ただけなのに、なんでそんなことになってんの俺!?」

 昭人が困惑していると、カウンターの奥で峰子が腕を組んでいた。

「……なるほどね」

 冷静に状況を見ていた峰子は、小さく頷くと、昭人のほうをじっと見つめる。

「飯塚くん。あなた、本当に 猫の言葉がわかってるんじゃないの?」

「いや、だから違いますって!」

「でも、私たちにはわからないことを、あなたは普通に当ててたわ」

「……」

 確かに、そう言われるとそんな気もする。

 昨日も、トイレ掃除のときにミルクが「ここがいい!」と言ってるように感じたし、ごはんタイムでは「おかわり!」という声が聞こえた気がする。

 ……いや、でもそれって、ただの直感じゃないのか?

「……わかんねぇ……」

 昭人は混乱しながら、ミルクの頭をポンポンと撫でた。

 すると――

「にゃあ♡(撫でるの上手)」

 その言葉が、妙に 「直接伝わってきた」 気がした。

「……マジで?」

 昭人は、ここに来て とんでもない才能 を発揮しつつあることに気づき始めた。
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