ねこまど~猫と人がつなぐ、奇跡のカフェ~

naomikoryo

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08)猫語スキル、試される

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1
 ――昭人は、猫の言葉がわかるのかもしれない。

 昨日、橘真緒(たちばな まお)に指摘されるまでは、そんなこと考えたこともなかった。

 でも、もなか(三毛猫♀)の言っていることを 二回連続で的中させた。

 偶然なのか、本当にわかるのか――。

「……いや、考えすぎだろ」

 バイト4日目。

 開店準備をしながら、昭人は頭を振った。

 昨日の出来事は単なる勘違い。そう思いたい。

「おはよ~」

 カウンターの奥から、真緒と水野琴葉(みずの ことは)が顔を出した。

「おはようございます」

「お、今日も猫たちに囲まれてるね~」

「……いや、囲まれてるっていうか」

 昭人の 足元にはミルク(白猫♀)、肩にはボス(茶トラ♂)、膝の上にはもなかが座っている。

 ここ数日で、すっかり猫まみれが「デフォルト」になってしまった。

「うーん、新人くん、やっぱり“猫マスター”の素質あるよね」

「猫マスターじゃねぇよ……」

 昭人がぼやいたそのとき――。

「にゃっ!!(事件です!)」

 突然、クロ(黒猫♂)が飛び込んできた。

「うおっ!? ど、どうした!?」

「にゃあ!(来て!)」

 クロは昭人の足元をウロウロしながら、尻尾をピンと立てている。

 そして――「にゃぁ!(早く!)」 と鳴きながら、店の奥へ走っていった。

「えっ……?」

「新人くん、クロが呼んでるよ?」

「……行ってみたほうがいいかもね」

 峰子(ネコ店長)が冷静に言う。

 昭人はクロのあとを追いかけた。

2
 クロが向かったのは、猫たちの休憩スペース。

 そこには――

「にゃぁ……(痛いよぉ)」

 たま(サバトラ♂)が、丸まって震えていた。

「たま……!?」

 他の猫たちが心配そうに見つめている。

 明らかに様子がおかしい。

「たま、どうした?」

「にゃ……(お腹……痛い……)」

「お腹?」

 昭人がゆっくりとたまに近づくと、たまはお腹を軽く舐める仕草をした。

 「お腹が痛い」 と言っている――気がする。

「店長!」

 昭人は急いで峰子を呼んだ。

「たまが、お腹痛がってるみたいです!」

「えっ……!? ちょっと見せて!」

 峰子がたまをそっと抱き上げ、優しくお腹を撫でる。

「……確かに、お腹が少し張ってるかも」

「なにか悪いもの食べちゃったんでしょうか?」

「ううん、たまは偏食だから、基本的に出したフード以外は食べないはず……」

 峰子が考え込んでいると、昭人の横で クロが「にゃっ!(違う!)」と強く鳴いた。

「え? 違う……?」

「にゃあ!(それじゃない!)」

「じゃあ、何が原因なんだ……?」

 昭人はクロの顔をじっと見つめる。

(クロ、何か知ってるのか?)

 クロは小さく鳴いてから、トコトコと キャットタワーの下へ歩いていった。

 そして――

 「にゃあ!(これ!)」

 クロが前足で、小さなヒモを押し出した。

「……え?」

 昭人はそれを拾い上げた。

 細くて白い……何かの紐?

「店長! これ……!」

「えっ!? これ、もしかして……!」

3
「たま、これ食べたの!?」

 昭人がたまに向かって言うと、たまは 「にゃあ……(食べた……)」 と申し訳なさそうに鳴いた。

「やっぱり……!」

 峰子が顔をしかめる。

「猫ってね、ヒモや糸を誤飲することがあるの。胃や腸に詰まると大変なことになるのよ」

「じゃ、じゃあ病院に……!」

「ええ、すぐに連れて行く!」

 峰子はすぐに動いた。

 たまをキャリーバッグに入れ、急いで動物病院に電話をかける。

 昭人と真緒、琴葉は祈るような気持ちで見送った。

4(1時間後)
 ――1時間後。

「たま、大丈夫だったよ!」

 峰子が戻ってきた。

「幸い、ヒモはまだ胃の中にあって、腸には詰まってなかったみたい」

「よかったぁ……」

 昭人は心の底からホッとした。

 クロも「にゃあ!(よかった!)」と安心したように鳴く。

「ヒモはすぐに吐かせてもらって、今は様子見だけど、ひとまず大丈夫ね」

 峰子がたまをキャリーバッグから出すと、たまは申し訳なさそうに「にゃ……(ごめんね)」と小さく鳴いた。

「もう、あんまり変なもの食べちゃダメだぞ」

「にゃ~(わかった……)」

「……」

 そのやりとりを見ていた真緒が、突然 「やっぱり新人くん、猫と話せてるじゃん!!」 と叫んだ。

「いや、これは……」

「だって、新人くんが 『たまに聞いたら、お腹が痛いって言った』 んでしょ?」

「それは……まぁ、そうだけど……」

「しかも、クロの言いたいこともちゃんと理解してたじゃん!!」

「……う」

「これはもう確定だね♪」

 真緒と琴葉がニヤニヤしながら昭人を見つめる。

「『猫語がわかるバイト』として、宣伝したらすごく人気出るんじゃない!?」

「やめろおおおお!!!」

 こうして、昭人は 「猫語スキルを持つ店員」 という疑惑を完全に深めてしまったのだった。
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