ねこまど~猫と人がつなぐ、奇跡のカフェ~

naomikoryo

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18)店長と猫の気持ち

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1
 ――翌日。

「おはようございます」

 猫カフェ「ねこまど」の扉を開けると、カウンターの奥にいる峰子(ふじい みねこ・店長)が振り向いた。

「あら、新人くん。今日もちゃんと来たのね」

「いや、バイトですから」

 峰子の様子を見て、昭人(あきと)は 少しホッとした。

 昨日は、峰子が明らかに体調不良だったため、強制的に休ませた。

 そのせいか、今日は動きが軽くなっている。

(……まぁ、元気になったならよかったけど)

 そう思いつつ、昭人は なぜかまだ少し気になっている自分 に気づいていた。

(……いや、なんで俺、こんなに店長のこと気にしてんだ?)

 猫たちのことならともかく、人間の体調まで気にするのは、自分にしては珍しい。

 しかし、その疑問に答えが出る前に――

「にゃあ♪(おはよう!)」

「おっと」

 ミルク(白猫♀)が昭人の足元に飛びついてきた。

 そして、後ろから ボス(茶トラ♂) も近づいてくる。

(あれ? なんか、ボスまで寄ってくるの珍しいな)

 ボスは基本的にクールで、あまり人間には甘えないタイプなのに、なぜか昭人のそばに来ていた。

「……お前らも、店長のこと気にしてたのか?」

「にゃっ(まぁな)」

「にゃん(大丈夫そうだね)」

 猫たちの行動を見て、昭人は なんとなく昨日のことを思い出す。

(昨日も、こいつら店長にやたら寄ってたよな)

 店長の体調が悪いのを察して、猫たちが甘えていた。

 ――つまり、自分もそれと同じように 「店長が気になる」 と思っていたってことか?

(いやいや、それはないだろ)

 昭人は、無意識に そんな考えを打ち消した。

2
「新人くん、何ぼーっとしてるの?」

「え?」

 ふと気づくと、峰子がカウンターから昭人をじっと見ていた。

「あんた、今日やけに静かじゃない?」

「いや、そんなことないっすけど」

「ふーん?」

 峰子は、コーヒーを口にしながら昭人をじっと見つめた。

 いつものように、どこか気だるげな、それでいてどこか鋭い視線。

 ――なのに、今日はちょっと違って見えた。

 昨日はあんなにふらついていたのに、今日はすっかり元気そうだ。

 昭人は なぜか、ほっとすると同時に、少しムズムズするような気持ち になった。

(なんだろ、この感じ……)

 考えてもよくわからず、昭人は頭を振る。

「ま、今日もよろしくお願いします」

「はいはい」

 峰子は軽く返事をして、いつものように仕事を再開した。

 ――その後ろ姿を、昭人は なぜか無意識に目で追ってしまった。

3
「ねぇねぇ、新人くん」

 休憩時間、橘真緒(たちばな まお)が昭人の隣に座りながら、ニヤニヤと話しかけてきた。

「……なんすか」

「もしかしてさ、店長のこと、気になってる?」

「は?」

「だって、さっきからめっちゃ店長のこと見てたよね?」

「……いや、別に」

「ほほ~? そうなんだ?」

 明らかに楽しそうな真緒の横で、琴葉(ことは)も「ふふっ」と笑う。

「でも、新人くんって、店長のことよく気にするよね」

「いやいや、昨日は体調悪そうだったから、ちょっと気になっただけで――」

「あ、でもさ」

 琴葉が、ふと思い出したように言った。

「前も、新人くんが**『店長、なんか機嫌悪くない?』** って言ってたことあったよね」

「そうそう!」

 真緒がすかさず同意する。

「私たちが『別に普通じゃない?』って言ったのに、新人くんだけ気づいてたやつ!」

「……あれは、なんとなくそんな気がしただけで……」

「へぇ~?」

 2人のニヤニヤが止まらない。

「ちょ、なんなんすか、その顔!」

「いやいや、なんかさ~」

「新人くん、猫のことみたいに、店長の気持ちも分かるんだね~」

「は!?」

「もしかして、新人くんって、店長の専属“猫語翻訳機”だったりして?」

「いや、意味わかんねぇよ!!!」

 昭人は 全力でツッコんだ。

4
「でも、新人くんって、店長のことよく見てるよね」

「……」

「だから、猫みたいに“なんとなく”わかっちゃうんじゃない?」

「……」

 真緒と琴葉の言葉を聞いて、昭人は 少し考え込んだ。

 ――たしかに、自分は猫の気持ちが「なんとなく」わかる。

 そして、最近は 店長の気分の変化も、なんとなく察することが増えた。

(……いやいや、でもそれは、ただの偶然で)

 そう思って、峰子のほうをちらりと見る。

 すると、ちょうど峰子もこちらを見ていて、目が合った。

「……」

「……?」

 峰子は、一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐにそっぽを向いて、コーヒーを飲んだ。

 昭人は、なぜかドキッとした。

(……あれ?)

 この 「なんか変な感じ」 は、いったい何なんだろう?

 ――その答えは、まだわからなかった。
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