ねこまど~猫と人がつなぐ、奇跡のカフェ~

naomikoryo

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26)猫の気持ち、人の気持ち

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1
 昼下がりの猫カフェ「ねこまど」。

 ピークタイムが過ぎ、店内が少し落ち着いた頃――

「ことは~! 久しぶり~!」

 明るい声が響き、昭人(あきと)が入口を見ると、女子3人組 が店に入ってきた。

(……誰だ?)

 3人は、髪を巻いたりアクセサリーをつけたりして、どことなく「派手め」な雰囲気 をまとっていた。

「……あ、うん、久しぶり」

 対応する琴葉(ことは)の声が、どこか ぎこちない。

(あれ? なんか微妙な空気じゃね?)

 琴葉の表情は、営業スマイルではあるものの 本当に嬉しそうには見えなかった。

(この3人、仲のいい友達って感じじゃないな……)

 昭人は、なんとなく違和感を覚えた。

2
「ことは、こんなとこでバイトしてたんだ?」

「猫カフェとかウケる~」

「てか、制服かわいいじゃん! 写真撮っていい?」

「え? あ、うん……」

 琴葉は困ったような顔をしながら、無理に笑顔を作っている。

(あー、これ、あんま良くないやつだ)

 昭人は、3人の会話を聞きながら なんとなく察した。

 おそらく、彼女たちは 琴葉と「そこまで親しくない」友達 なのだろう。

 ◆ 久しぶりなのに、琴葉のバイトをバカにするような言い方。
 ◆ 相手の気持ちを考えず、勝手に写真を撮ろうとする。
 ◆ 琴葉のリアクションを気にせず、自分たちのペースで喋る。

(……なんか、苦手なタイプだな)

 昭人は、カウンターの奥から琴葉の様子を伺っていたが――

「きゃっ、ちょっと!」

「うわ、こいつ、爪立ててきたんだけど!」

 ――猫の鳴き声と、軽い悲鳴が聞こえた。

3
「何してんの?」

 昭人は、思わず声をかけながら、3人組のほうへ歩いていった。

 そこには、もなか(三毛猫♀)が 警戒したようにしっぽを膨らませている 姿があった。

(……嫌がってるな)

 そして、その目の前には 不満げな顔をした女子のひとり。

「なにこの猫~? めっちゃ怒ってるんだけど」

「さっきから抱っこしようとしても逃げるし」

「てか、猫カフェなのに全然懐かないじゃん」

(……あー、やっぱそういう感じか)

 昭人は、軽くため息をつく。

 彼女たちは、猫が好きで来たわけではなく 「猫カフェって珍しいから来てみた」 くらいの感覚なのだろう。

 そして、「猫=可愛がれば喜ぶ」と思っている。

(でも、猫ってそういうもんじゃねぇんだよな)

 昭人は、しゃがんで もなかの目線 に合わせた。

「……お前、大丈夫か?」

「にゃ……(あいつら、しつこい)」

「そっか」

 昭人は、小さく笑いながらもなかを軽く撫でる。

 すると、もなかは 安心したように目を細めた。

4
「猫ってさ、人間と同じなんだよ」

「え?」

 昭人は、女子3人を見ながら 静かに言った。

「いきなり知らない人にベタベタ触られたら、普通は嫌だろ?」

「……まぁ、たしかに」

「猫もそれと一緒。最初は様子を見て、安心できる相手かどうか判断するんだ」

「……」

「人間と同じで、猫にも“嫌”とか“不安”って気持ちがあるんだから、それを無視しちゃダメでしょ」

 3人は バツが悪そうな顔 をする。

「……ごめん」

 1人が小さく謝ると、他の2人も続いた。

「まぁ、猫カフェって初めてなら、最初はわからないもんですよ」

 昭人は、あえて軽い口調で言う。

「でも、猫も人も同じように“気持ち”があるってことは、覚えておいたほうがいいっすよ」

「……うん」

 3人は、それ以上何も言わずに、猫たちとの距離を少し取った。

5
 3人が帰ったあと。

「……ありがとう」

 ふいに、琴葉が昭人を見上げた。

「ん?」

「なんか、助けてくれたみたいで」

「いや、別に」

 昭人は肩をすくめる。

「でも、お前も無理して付き合わなくていいんじゃねぇの?」

「……うん、わかってるんだけどね」

 琴葉は、少し困ったように笑う。

「高校のとき、同じクラスだったんだけど、なんかこう……関係を切るタイミングがなくて」

「……なるほどな」

 その気持ちは、なんとなくわかる。

 嫌いではないけど、特別仲がいいわけでもない。

 だから、なんとなく関係が続いてしまう――そういうこともある。

「……でも、今日はちょっとスッキリしたかも」

「そうか?」

「うん。昭人くんが、ちゃんと猫たちのことも私のことも気にしてくれてるのが、なんか嬉しかった」

「……」

 琴葉は、本当に嬉しそうな笑顔 を浮かべる。

 昭人は、少しだけ照れくさくなって 視線をそらした。

「ま、俺はバイトだから」

「ふふ、そういうことにしとく」

 その言葉に、昭人は なんとなくむず痒い気持ち になった。
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