ねこまど~猫と人がつなぐ、奇跡のカフェ~

naomikoryo

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34)近づけ!店長と昭人!

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1
「よし! じゃあ次の作戦に移ろう!」

 橘真緒(たちばな まお)は やる気満々の笑顔 で、同じくニヤニヤしている水野琴葉(みずの ことは)を見た。

「うん、さっきの『2人きり作戦』は成功したね」

「そうそう! 店長、めっちゃ昭人くんのこと意識してたし、昭人くんも『最近、目合わせてくれないっすよね?』とか聞いちゃってたし!」

「うん、たぶん昭人くんも、店長の態度の違いに気づいてるね」

「でしょ~!? これはもう どんどん近づけるしかないっしょ!」

「どうやって?」

「それはねぇ……」

 真緒は 口元に手を当てて、ふふんと笑う。

「私たちが"ちょっとしたお膳立て"をするのさ!」

2
「まずは……接触回数を増やす!」

「接触って?」

「たとえば、物を渡すときとかさ、できるだけ手が触れ合うように仕向けるの!」

「なるほど!」

「昭人くんが店長の目を気にしてるなら、もっと意識させるべきでしょ?」

「たしかに」

「あとね、狭い場所に2人を閉じ込めるのもアリ!」

「えぇ、それって偶然を装えるの?」

「まぁ、うまくやればね!」

「……真緒って、こういうの考えるの好きだよね」

「ふふふ、それが私の趣味さ!」

 琴葉は 苦笑しながらも楽しそうに笑う。

「じゃあ、まずはどっちをやる?」

「うーん……」

 そこで、店内を見渡すと――

「……おっ!」

 ちょうど、峰子(みねこ)が レジ横で伝票を整理しているのが目に入った。

 そして、カウンターの奥では、昭人(あきと)が 猫たちの餌の準備をしていた。

(今だ!)

「琴葉! 作戦開始!」

「え、どっちの?」

「両方!!」

「えぇぇ!? いきなり!?」

3
 まず、真緒は 厨房の棚からおしぼりの袋を1つ持ち出し、こっそり温めた。

(これ、店長に渡すときに、できるだけ昭人くんと手を触れさせる作戦!)

 そして、何食わぬ顔で 昭人に近づく。

「ねぇ、新人くん」

「ん?」

「これ、店長に渡してくれない?」

「え? なんで?」

「いやぁ~、私はちょっと手が離せなくてさ~」

「いや、俺も今キャットフード準備して――」

「ほらほら、頼んだ!」

「ちょっ、おい!」

 強引に 温めたおしぼりを昭人に押し付ける。

(ふふふ、これで自然に店長の手に触れるはず!)

 そして、昭人は仕方なく峰子に近づき――

「店長、おしぼりです」

「あ、ありが――」

 その瞬間、2人の手が軽く触れた。

「……!」

 ビクッと反応する峰子。

 そして、何も気にせず普通に手を離す昭人。

(うん、店長、完全に意識してる!)

4
 次の作戦。

 今度は 「狭い場所で2人きり作戦」 を決行する。

「琴葉、倉庫のドアのカギ、ちょっとだけ外れやすくしといて!」

「えぇぇ!? それ大丈夫!?」

「大丈夫大丈夫! ちゃんと外から開けられるし、ほんの数分だけ閉じ込めるだけだから!」

「……まぁ、いいけど」

 琴葉は 若干不安そうにしながらも、倉庫のカギを調整する。

 そして、頃合いを見計らって――

「店長~、倉庫の在庫整理お願いしまーす!」

「え? なんで?」

「新人くんと一緒に!」

「……え?」

 絶妙なタイミングで2人を倉庫へ誘導。

 そして、2人が入った瞬間――

「……よし!」

 カチャン。

 ドアが閉まった。

5
「……あれ?」

 倉庫の中で、昭人がドアノブを回す。

「……開かないっすね」

「えっ?」

「店長、ドア壊れてるんじゃ?」

「いや、そんなはず――」

「ちょっと待っててくださいね、俺、ドア押してみます」

「えっ!? ちょっ――」

 昭人がぐっと押した瞬間、峰子との距離がぐんと縮まる。

「――っ!!」

 顔が近い。

(近い近い近い!!)

 峰子は、なぜか 心臓がドキドキしている のを感じた。

「……あ、すみません」

 昭人が 何事もなかったように下がる。

 でも、峰子は 何事もなくできる精神状態ではなかった。

(いやいや、なんでこんなに意識してるのよ!!)

 顔が熱くなるのを感じながら、峰子は 静かに天を仰いだ。

6
 一方、その様子を外から見守る2人。

「……ねぇ、真緒」

「うん?」

「これさ……店長、もうアウトじゃない?」

「うん、完全に落ちてるね!」

「よし、次はどうしよっか!」

「もっと仕掛けるぞー!」

 こうして、2人の作戦はますますエスカレートしていくのだった――。
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