ねこまど~猫と人がつなぐ、奇跡のカフェ~

naomikoryo

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42)ちゃんと話したい

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1
「店長、ちょっといいっすか?」

「……」

 閉店後の静かな店内。

 藤井峰子(ふじい みねこ)は、目の前の 飯塚昭人(いいづか あきと) を見上げて、内心、心臓の音がバクバクするのを感じていた。

(え、なに……? なんかいつもと雰囲気違うんだけど!?)

 昭人は 普段の軽いノリではなく、どこか真剣な顔 をしていた。

(や、やばい……こういう顔されると、意識しちゃう……!!!)

「……な、なによ、改まって」

「いや、ちゃんと話したいことがあって」

(ちゃんと話したいこと!?!?!?)

 この瞬間、脳内にいろんな可能性が駆け巡る。

(え、なに!? ついに告白される!? いやいや、そんなわけないでしょ!!!)

(でも、この流れ、どう考えても……!!!)

 そんな峰子の混乱をよそに――

「ちょっと、こっち来てもらっていいっすか?」

 昭人は すっと奥のテーブルを指さした。

 その姿が、妙に 落ち着いていて頼もしく見える。

(え、なに……ちょっとカッコよくない……!?!?!?)

 ますます心臓がバクバクするのを感じながら、峰子はとりあえず言われるがままに席に座った。

2
 昭人も向かいに座る。

 店内は静かで、聞こえるのは時計の秒針の音だけ。

「……」

「……」

(え、なにこの沈黙……めっちゃ緊張するんだけど……!?)

 峰子は、昭人が何を言い出すのか ドキドキしながら 待っていた。

 すると――

「店長」

「は、はいっ!?」

(声が裏返ったぁぁぁぁ!!!!)

「いや、そんなに驚かなくても……」

「ち、違うのよ!! ただ、ちょっとびっくりしただけ!!」

 なんとか誤魔化しながら、ごくりと喉を鳴らす。

 そして――

「俺、最近、店長のことめっちゃ気にしてるんですよ」

「ぶっっっ!!!!!」

 思わず 飲みかけていた水を吹きそうになる。

「なっ、なっ……!?!?!?」

「いや、だから」

「えっ、えっ、えっ、えっ!?」

 もうパニック状態。

(えっ!? 今、なんかすごいこと言われなかった!?!?!?)

(え、昭人くん、私のこと気にしてるって!? え!? え!?!?!?)

「お、お、おお落ち着いて話しなさいよ!!」

「いや、落ち着いて話してるんですけど」

(私が落ち着けないんだよぉぉぉ!!!!)

3
 昭人は 少しだけ困ったように笑う。

「いや、俺、今まで推し活一筋で、リアルの人にはあんまり興味なかったんすよ」

「そ、そうね……」

「でも最近、なんか店長のことばっか考えてて」

「っっ!!!」

(ストレートォォォォ!!!)

「で、まぁ……それってつまり、俺、店長のこと好きなんじゃねぇの? って思ったんすよ」

「~~~~~~~~~~っっ!!!!!」

(ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って!!!!)

 この状況、心臓に悪すぎる!!!

 まさかこんなふうに ど直球で言われるなんて思ってなかった。

(ど、どうすればいいの!?!?!?!?)

 峰子の 思考回路が完全にショートしかけた、その時――

「にゃぁ~~~~ん」

 猫たちが、静かに2人の間に割り込んできた。

◆ ボス(茶トラ♂):「にゃ。(やっとか)」
◆ ミルク(白猫♀):「にゃん!(告白! 告白!)」
◆ もなか(三毛猫♀):「にゃぁ~(いいぞもっとやれ)」

(こ、こいつらぁぁぁ!!! 完全に空気読んでるぅぅぅ!!!)

4
「……」

「……」

 静かに猫たちに見守られながら――

 昭人は まっすぐ峰子を見つめて言った。

「店長は、俺のことどう思ってるんすか?」

「……っっ!!!」

 逃げ道、完全消滅。

(もう、誤魔化せない……!!!)

(誤魔化せないけど……!!!)

 心臓が 爆発しそうな勢いで鳴っている。

(私……どうしたらいいの!?)

 しかし、その瞬間――

「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!!!!」

 唐突に、ドアが勢いよく開いた。

 全員の視線がドアの方に向く。

「……え?」

「誰?」

「にゃ?」

 そして――

「お見合い相手を紹介しにきたわよ!!!!」

 そこに立っていたのは、峰子の母親だった。
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